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006易水の送別

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易水送別(駱賓王)
易水送別えきすいそうべつ
駱賓王らくひんのう
五言絶句。丹・冠・寒(平声寒韻)。
『全唐詩』巻79所収。ウィキソース「於易水送人」参照。

易水 … 河北省易県えきけんを源とする川。大清河に合流する。

易水送別 … 『全唐詩』等では「於易水送人(易水に於いて人を送る)」に作る。また、『駱賓王文集』(『四部叢刊 初篇集部』所収)、『万首唐人絶句』では「易水送人(易水にて人を送る)」に作る。

この詩は、易水のほとりで人を見送ったときのものである。

その昔、荊けい軻かが燕えんの太子丹たんの命を受けて、秦王政せい(のちの秦の始皇帝)を暗殺しようとした時、太子一行は白装束に身をまとい、易水のほとりで荊軻を見送った。

荊軻は「風蕭々しょうしょうとして易水寒く、壮士一ひとたび去って復また還かえらず」と歌った。

人々はみな目をいからし、髪の毛が逆立って冠をつき上げんばかりであったという。

この故事を思い浮かべながら作った作品。

ウィキペディア【荊軻】参照。
駱賓王 … 640?~684?。初唐の詩人。婺ぶ州しゅう義烏ぎう(浙江省義烏県)の人。

王勃・楊炯・盧照鄰とともに「初唐の四傑」といわれている。

ウィキペディア【駱賓王】参照。
易水送別

此地別燕丹
壯士髮衝冠
昔時人已沒
今日水猶寒

此地 燕丹に別わかる
壮士 髪冠を衝く
昔時 人已に没し
今日 水猶寒し

このち えんたんにわかれる
そうし はつかんむりをつく
せきじ ひとすでにぼっし
こんにち みずなおさむし


此地 … 易水のほとりを指す。
燕丹 … 戦国時代、燕えんの太子丹たん。ウィキペディア【燕太子丹】参照。
別 … 荊軻が太子丹と別れる。


壮士 … 勇士。荊軻を指す。荊軻を見送る人とする説や、荊軻と彼を見送る人とする説もある。平野彦次郎『唐詩選研究』(明徳出版社、昭和49年)では「この詩では荊軻のこととしなければ、精神が貫徹しない」と言っている。

壯士髮 … 『駱賓王文集』(『四部叢刊 初篇集部』所収)等では「壯髮上」に作る。この場合、「壮髪上のぼりて冠を衝く」と読む。『全唐詩』には「一作壯髮上」とある。
髪衝冠 … 悲憤慷慨のあまり、髪の毛が逆立って冠をつくこと。

昔時人 … その時の人々。主に荊軻を指す。
没 … いない。死んでいる。

今日 … 作者が易水のほとりで人を見送った日を指す。
水 … 易水の水。
猶 … 昔と変わることなく、今もなお。
寒 … 寒々と流れている。
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