男の名前は 岩瀬 健 |
結婚式場に現れた 哀れな男である |
これまで 何百という 結婚式を見てきたが |
新婦に対して ここまで 未練を 持った男は 初めてであった |
歴代 見てきた 人間の中でも |
意気地のなさと 往生際の悪さは 群を抜いていた |
幼なじみであるがゆえ |
彼女への思いを ずっと 伝えられなかった男は |
スライド写真を 見ながら |
過去を やり直したいと 強く願った |
見るに見かねた わたしは |
写真の時代に 戻ることを 許可した |
求めよ!\Nさらば 与えられん |
ハレルヤ~ チャンス! |
ぬおおおーっ! |
わたしとは 無論 この教会に住む 妖精である |
男は 必死に 過去のふがいない 自分を変えようと 努力した |
しかし 一度目で できなかったことが |
簡単に やり直せるわけもなく 躊躇 いや 空回りを 繰り返し |
次々と チャンスを逃していった |
「ケンゾーのことが 大好きです」 |
僕… |
吉田 礼さんのことが 好きです |
わたし 多田先生と つきあうことに 決めたの |
そして 男は気づいた |
過去を やり直しても 結局 自分は 自分でしかないんだと |
そして 男は思った |
過去を嘆く 今よりも 今を 変えようとする |
未来への意志が いちばん重要なんだと |
僕は 礼のことが 好きでした |
男は 現在に戻り 15年目にして 初めて |
彼女への思いを 伝えることに 成功した |
それは 状況やタイミング 常識や体裁を 言い訳にし続けてきた 男が |
初めて 自らの殻を破った 瞬間でもあった |
男の願いも むなしく 奇跡の扉が 開くことはないかと 思われた |
が その重い扉は ついに |
女の手によって 開かれたのである |
果たして この二人に 幸せは 訪れるのであろうか |
すいませんね ホントに! |
ガス欠って どんだけ!? |
ケンゾー! |
ケンゾー! |
何してんの? |
そっちこそ 何してんの?\Nえっ? |
何で タクシーなんか 押してんの?\N暇だから |
暇だと タクシー 押すんだ? |
マンガ喫茶 行くか タクシー 押すかで 相当 迷ったけどね |
バカじゃないの |
ウエディングドレス 着て 汗だくな人に 言われたくありません |
そっちは 何してんの?\Nえっ? |
ジョギング |
その格好で? |
目立つから 道路 走ってても ひかれる心配ないし |
走りにくくない?\Nまあ ちょっとだけ |
でも 健康にいいし |
そっか\Nうん |
すいませんね!\Nスタンドまで もう少しなんで! |
今日は ご迷惑かけて ホントに すいませんでした |
いえ |
結婚生活は 急な 車線変更なしで お願いします |
あれ? 何か まずいこと 言っちゃいました? |
いえ ありがとうございます\Nお幸せに |
結婚生活は くれぐれも 愛情 満タンで お願いします |
何で 海なのよ? |
その格好で ほかに 行けるとこないだろ |
そうだけど |
ゲーセン 行くには 派手すぎるし ラーメン屋 行ったら ドレス 汚れるし |
それに まだ 家に 帰るわけにもいかないでしょ |
冷静に考えるとさ その格好で 海にいんの おかしくない? |
映画の撮影みたいだよね |
じゃあ 今 どんなシーンの 撮影してんの? |
えっ?\Nうん… |
用意されているはずの ボートがなくて |
途方に暮れている二人 |
じゃあ 俺ら この後 捕まるんだ? |
いや… 別に 追われてる 設定じゃないから |
じゃあ どんな設定だよ? |
ボートで ハネムーンに 旅立とうとしていた二人 |
ハハハ…\N何で そんなに笑ってんの? |
今どき 「ハネムーン」って 使うか?\N使う人は 使うでしょ |
普通に 「新婚旅行」でいいだろ |
パスタのことを いまだに スパゲティって言うの |
お前ぐらいだよ\Nいちいち うるさい! |
昔から どっか 言うことが 古くさいんだよな |
ケンゾーみたいに 鈍くさいよりは マシだと思うけど |
俺 別に 鈍くさくないし 自分が 鈍くさいってことにも |
気づかないくらい 鈍くさいんでしょ? |
もっと いろんなことに 敏感になったほうがいいと思うよ |
そういう 説教くさいところが 古くさいって 言ってんの |
もう くさい くさい うるさいから! |
どうしたの? |
俺らってさぁ\Nうん? |
こんな日でも 言い合いしてんだなと思って |
結婚式 飛び出して |
砂浜に 二人きりで |
すげえ きれいな夕日が 目の前にあんのにさ |
ごめんな |
ううん\Nこっちこそ ごめんね |
きゃーっ!\Nああ 冷てっ! |
ああー! 冷てえ!\Nああー! |
ない!\Nマジで… |
もう…\Nもう やだ |
もう いいよ!\Nよくないだろ! |
見つからないって!\Nホントに いいから! |
きゃー!\Nやだ もう… |
そんな顔 すんなよ\Nじゃあ どんな顔すればいいのよ? |
自分が なくしたんだろ\N誰が 海に連れてきたの!? |
海じゃなくたって よかったでしょ! |
こっちはな 気 使って 連れてきてんだから |
そんな言い方 すんなよ\Nだってさ… |
こんな ドレス 着て 片足 はだしで… |
何か すごい 惨めだし |
早くしろよ\Nえっ? |
はだしじゃ 歩けないだろ |
いいよ…\Nいいから 早くしろよ |
いくよ |
いくよ |
あーあ ハイヒールに 名前と住所 書いておけばよかった |
まだ 言ってんのかよ? |
あそこで 見つけられないのが ケンゾーだよね |
「あった!」って 格好よく 見つけてくれたら |
すぐにでも お嫁さんになってあげたのに |
いつか 世界中の海 探し回って |
あの ハイヒール 見つければいいんだろ? |
今 言ったからね!\N絶対だかんね! |
やべっ! |
うわっ 財布 忘れた\Nあっ ソーリー |
ああ… よし |
礼! |
早くしろよ 間に合わないって\Nはい 分かってるって |
ちょっと これも持って\Nじゃあ 行くよ! |
マジかよ!? |
タクシー! |
よいしょ\Nほら ケンゾー 早く |
早く! |
大体さ 当日 ギリギリの 便なんかで 来んなよ |
しょうがないでしょ\N平日 休み 取れないんだから |
ちょっと 着替えるから あっち 向いてて |
ここで 着替えんの!?\Nだって 時間ないんでしょ!? |
礼 礼… |
ちょっと 見ないで! |
ちょっと 払っといて\Nえっ? |
財布 忘れた\N海外に来て 女に |
お金 払わせるって どうなの!? ないもんは しょうがないだろ |
両替してないから ドル 持ってないよ |
えっ!? |
諭吉でいいじゃん\N諭吉じゃ 多すぎるでしょ |
じゃあ 1,000円\N2,000円? |
ハハハ…\Nハハハ! |
セーフ\Nアウトだよ |
もう とっくに 始まってる時間だから |
まだ 始まってねえじゃん あいつら 出てこないんだよ |
えっ!? どうして!?\N知らねえ |
わたし ちょっと 見てくる\Nケンゾーも行こう |
何してんの? |
ああ…\Nああ あのう… |
あの 遠いところから どうも ありがとう! |
エリは?\Nうん いや もうちょっと 待って |
もう 時間 とっくに過ぎてるぞ |
うん 知ってるよ\Nエリ 中にいるんでしょ? |
開けてよ\Nうん あのね 今ね |
最後の準備をしてるから あの もう あっち 行って |
手伝うよ\Nいや |
あのね もう それ ホント 大丈夫 手伝うって 言ってんじゃん |
いや もう ホントにね 大丈夫 とりあえず 1回 開けてよ |
いや もうね それだけは 無理だ! |
お前 顔色 悪いぞ\N日焼け止め 塗りすぎちゃった! |
もしかして ウエディングドレス 忘れたとか? |
バカ! 健って バカだなー! ホント\Nそんなわけないじゃん! |
図星!?\Nマジで!? |
違う 違う… 違う もう いいから 開けてよ! |
ああ ちょっと…\Nやめて… 触んないで! |
せーの とんでけー!\Nああー! |
ダメだってー! |
ああー\Nドレス あんじゃん |
だから そんな 忘れるわけないだろ わっ! |
エリ |
エリ |
えーっ!? |
やっべ |
「鶴が わたしのこと 本当に 思ってるのか |
分からなくなっちゃった\Nごめんね エリ」 |
ドレス あんのに 花嫁 いないって どういうことだよ? |
成田離婚は 聞いたことあるけど |
ハワイ離婚は かなり 斬新だな |
もう 何で こんなことになったの? |
そんな 俺が聞きたいよ! |
こんなに エリのこと 思ってんのに |
朝まで 一緒だったんだろ? |
でも 起きたら いなかったから おかしいなとは思った |
おかしいと思ったら どうして 捜さなかったの!? |
だって ドッキリだと 思ったんだもん |
女の子が 結婚式当日に そんな バカみたいなこと すると思う!? |
だよね\Nそれで ソクラテスで どうにか |
ごまかそうと思ったわけだ \Nだって わざわざ 休み取って |
ハワイまで 来てくれた人に 申し訳ないじゃん |
人間 追い込まれると 何でも やるんだな |
ごまかしきれるわけが ないでしょ! |
ごまかすつもりは なかった! |
本物に なりきれなかった\Nわたしの力不足だ! |
坂東 玉三郎だったら この女形 |
完ぺきに 演じきれてたはずなんだ! |
ソクラテス…\N無念の ひと言に尽きる |
わぁーっ!\N何で お前が 落ち込んでんだよ!? |
もう どうしていいか 分かんないよ |
心当たりねえの?\Nあるわけないだろ |
こっち来て エリに ないしょで はめ外してたんじゃねえの? |
そんなことするか\Nじゃあ ただの マリッジブルーだろ |
それか 鶴と 結婚するっていう 現実に |
今さらながら ブルーになってるか |
どっちも 考えられるな\Nうん |
エリの気持ち ちゃんと考えないから |
こういうことに なるんだよ\Nいや 考えたよ! |
今日まで ずっと 俺は エリのことしか見てなかったし |
エリに 幸せに なってもらいたいから |
家のことだって 結婚式のことだって |
やりたいように やらせたし 任せっきりにしてただけでしょ |
それが いちばん困るんだからね もう どうすりゃいいんだよ |
はぁー\Nはぁー |
親御さんは 気の毒だよな |
結婚式で わざわざ ハワイに来て これだもんな |
余計なこと 言ってんじゃねえよ |
別に 礼のこと 責めてるわけじゃないって |
参列者に 謝り続ける エリの両親は |
あの日 置き去りにしてきた 礼の両親を 思い起こさせた |
鶴の 痛々しい横顔は あの日 いちばん つらかったはずの |
多田さんの姿と ダブって見えた |
あれから 1年に なろうとしていたが |
お互いに あの結婚式のことを 口にするのは |
何となく 避けていた |
あの日 式場で 礼の両親が どんな思いをしていたのかも |
今の俺たちのことを どう思っているのかも |
正直 怖くて 聞けないでいた |
今 ホテルで確認したら |
朝いちの 日本行きの便 予約して 飛び出していったらしい |
そっか\N日本 帰っちゃったんだ |
少なくとも 生きてはいるみたいだな |
エリ 生きてるって\Nよかったじゃん |
何とか言えよ |
わたし 1回 ホテル チェックインしてくるね |
すぐ 戻ってくる |
礼\Nどうしたの? |
幹雄が言ったこと 気にすんなよ\Nえっ? |
ああ… 全然 気にしてないよ\Nなら いいけど |
そんなこと言って |
ケンゾーが いちばん 気にしてるんじゃないの? |
俺は 全然 平気だけど |
うまくいかないよね\Nえっ? |
鶴とエリまで こんなことに なっちゃうなんてさ |
あの二人なら きっと 大丈夫だって 思ってたのに |
そうだな |
じゃあ 後でね |
せっかく スライドまで用意したのに もったいねえよなぁ |
日本から 機材 持ち込むの すげえ 大変だったんだぞ |
鶴に あそこまで へこまれると こっちまで へこむわ |
さすがに 両親の あんな姿 見たら しょうがねえって |
あの二人 どうなっちゃうんだろうな… |
あっ! ウエディングケーキ\Nやっべ |
先生 伊藤先生 |
ああ… どうした!?\N予定の時間 すぎてるぞ |
いや 実は…\N何か トラブったか? |
エリが 日本に帰っちゃって\N何しに? |
いや だから 披露宴 中止になったんです |
ああ そっか\Nリアクション 薄いなー |
えっ!? 披露宴 中止!?\N気づくの 遅いなー |
えっ!? 中止ってことは 俺の出番ないのか!? |
残念ながら\Nじゃ 引き出物の 湯飲みも |
無駄か!?\Nあれ 先生 作ったの? |
バカ野郎 俺 陶芸家だぞ ロクロ 失敗 100円ショップだろ |
作ってないじゃん\Nしかも 100円ショップ |
ハワイまで来て 中止ってないよなぁ |
先生 何してんのー?\Nしばらく 落ち込んでくる |
はい\Nああ 吉田 礼です |
オッケー 吉田さま メッセージを お預かりしてます |
「健 ちゃんと 礼を 幸せにしてあげなきゃ |
許さないからね\N次は 健と礼の番だよ |
これからも ずーっと 仲よくしようね」 |
残るは 健と礼だけだと 思ったのにな\Nえっ? |
結婚だよ\N幹雄だって まだじゃん |
俺は もともと 結婚する気 ゼロだから |
でも 優子は 結婚したがってんだろ? |
大体 何で こっちに 連れてきてやんなかったんだよ? |
連れてなんて来たら 結婚願望 強まるだけだから |
面倒くせえって\Nっていうか 何で 結婚しないの? |
わざわざ 結婚する意味が 全く 分かんないし |
意味なんて 結婚してから 考えればいいんだよ |
人のこと 心配する前に お前ら どうなんだよ? |
つきあって もう1年 たつんだろ?\Nええ |
礼は 結婚のこと 何か 言ってんの? |
まだ 話してない\Nえっ? |
そういう話は まだ 何も話してない |
そういえば この前 礼も 同じようなこと 言ってた |
結婚の話とか したことないって |
二人とも 似たもん同士だかんな\N似てねえだろ |
そっくりじゃん\N意地っ張りなくせに |
肝心なとこは 気が弱い |
よっしゃ…\N行こうぜ |
せっかくだから ちょっと これ 見て行こっか? |
おう 見ようぜ |
もしもし エリ?\N礼だけど |
もしもし エリ?\N礼だけど |
礼… |
平気? 今 どこ?\N家にいるの? |
わたし 大変なことしちゃった… |
どうしたの?\N何があったの? |
ごめんね わざわざ ハワイにまで 来てくれたのに |
ちゃんと話して エリ |
1か月前ぐらいから 急に 帰りが遅くなったり |
部屋にこもって メールとか 電話してる回数が 増えたから |
変だなとは 思ってたの\Nうん |
それで 昨日の夜 鶴が 別行動したいって 言うから |
おかしいなと思って 悪いとは 思ったんだけど |
後 つけちゃったの後 つけちゃったの |
そしたら 知らない女の人と 会ってて… |
見間違えたんじゃないの?\Nだって あの 鶴だよ |
でもね 夜には ちゃんと 早く帰ってきたし |
何でもなかったんだって 思ったの |
わたし 大丈夫だと 思ってたのね |
ちょっとぐらいのことなら |
我慢して 乗り切れるって 思ってた |
でも 何か 急に |
このまま 結婚していいのかなって 思っちゃって |
ホントの問題は 鶴じゃなくて わたしなのかもしれない |
わたしが 鶴のこと信じられなくて 後 つけたりして |
何か 結婚する 資格なんか ないように 思えてきてさ |
1回 ちゃんと 話したほうがいいよ |
よくよく考えるとさぁ |
俺たち 五人が いまだに 友達な 確率って |
結構 すごくない?\N偶然 同じクラスになって |
同じ野球部に 入ってたってだけだもんな |
ちょっと 学力が違えば 違う高校 行ってたし |
俺なんて 小さいとき バースのホームラン 見てなかったら |
野球部 入ってないかんな 俺だって 小学校んときに |
サッカー部があったら 野球部なんか やってなかった |
何なんだろうなぁ?\Nこういう巡り合わせって |
不思議としか 言いようがない\Nなあ |
最初に会ったとき 俺たち ここまで続くって 思ってた? |
全然\N鶴なんて マジ うざかったし |
幹雄なんて いちばん苦手な タイプだったし |
お前 それ マジで言ってんの? 大体 そんなもんじゃない? |
最初に いいなって思った 友達なんて |
結局 一人も残ってないし\N礼は どうなんだよ? |
えっ?\N第一印象なんて 最悪だよ |
最初に言われた言葉が 「ケンゾー」だもん だって |
名前 間違ってるし |
転校してきた 吉田 礼です\Nよろしく お願いします |
ありがと ケンゾー君 |
僕が 責任を取ります! 礼を 一生 面倒 見ますから |
よろしく お願いします |
何回 見ても 懐かしいなぁ\Nああ |
ああ これ\N健のせいで 負けた日 |
だから 俺のせいじゃないっつーの |
どっちみち 負けてたの\Nまだ 言ってんのかよ? |
いいかげん 認めろよ\Nいいかげん 信じろよ |
今日まで 本当に ご苦労さまでした |
エリと鶴が 積み重ねてきた 思い出の 隣には |
礼との 忘れられない 日々があった |
いつも いちばん 近くにいたはずの礼が |
日に日に 遠ざかっていき |
手の届かない場所に 行ってしまう あの切なさが |
記憶とともに よみがえってきた |
礼が 結婚を あきらめてくれればいいと |
思ったことがあります |
礼を 連れ去ってしまいたいと 思ったこともあります |
僕は… |
礼のことが 好きでした |
あれほどの思いをして 取り戻したはずの |
二人の時間は 結局のところ 止まったままで |
次の一歩を なかなか 踏み出せないでいた |
出発直前に みんなで 飯 食ったろ? |
お好み焼き?\Nうん 今 思うと エリ |
無理に 明るく振る舞ってたような 気がするんだよな |
あっ これこれ |
こんなにも 幸せそうに 笑っている 鶴が |
1週間後の 今日 こんなにも つらい日を 迎えているなんて |
考えもしなかった\N何で よりによって |
鶴が こんな思いしなきゃ なんねえんだろ? |
あんなに エリのために 一生懸命に生きてきた 鶴が |
どうして 幸せになれねえんだよ? |
おかしいよ\N絶対 おかしいって |
どうにかしてやりてえよなぁ\Nできることなら… |
できることなら この日に戻って 教えてやりてえけど… |
『ハレルヤ・コーラス』 |
熱射病だ… |
久しぶりだな |
妖精? 何で? |
ったく お前ってヤツは ホントに 情緒がないな\Nいや… |
せっかくの 感動の再会が 台なしだよ |
いや…\N何で ここに いるんすか? |
引っ越したんだよ\N引っ越し? |
日本で 働くのをやめて こっちの 教会に 住むことにしたんだ |
もしかして 優雅に セミリタイア 気取っちゃったりして? |
バカ 違うよ |
日本での仕事が めっきり減ってな |
最近の日本は お前みたいな 往生際の悪い人間が |
なかなか 現れなくて 暇になったんだよ |
相変わらず 言うこと きついっすね |
それより お前らの 仲間うちでは |
結婚式を 台なしにするのが はやってんのか? |
こう 次から次へと ドラマじゃあるまいし |
気にしてるんですから 言わないでくださいよ |
気にしてんのか? |
まさか お前 スピーチしたこと |
後悔してるんじゃ ないんだろうな? |
今日の 鶴 見て 改めて 思ったんですけど |
あんなに たくさんの人に 迷惑をかけた 俺が |
結婚する資格 あるのかなって\Nたぁー |
ったく ホントに お前ってヤツは 成長しない 男だな |
何のために あんなに 何度も |
過去に戻してやったと 思ってんだ? |
世界で いちばん好きな人を |
幸せにするためじゃ なかったのか? |
彼女のことを 幸せにできるのは 自分だけだって |
大口 たたいてたよな?\Nいや… |
その気持ちは 今でも 変わってないですけど |
変わってないけど 何なんだ? |
「周りの人間を 不幸にしてまで 結婚したくありません」って |
言い訳でも 言うか? |
それとも 結婚は 勢いと タイミングだっていう 常とう句を |
ここでも持ち出すか? |
はっ! あの日の お前は 少なくとも 覚悟があったはずだ |
どんなに険しい道でも 彼女を守って |
ともに歩く 覚悟があったはずだ |
お前を信じて 式場を飛び出した 彼女の気持ちを 少しは考えろ! |
彼女は あの日 勇気を振り絞って お前を 選んだんだぞ |
残念ながら 男の趣味がいいとは 思えないがな |
フッ…\Nそれ 俺に 失礼 |
フッ\Nで? 今度は |
友達のために 戻りたいのか?\Nえっ? |
友達を どうにかしてやりたいんだろ? |
マジで 戻れんすか?\N俺を 誰だと思ってんだよ? |
妖精 |
前から言おうと 思ってたんだけどな |
呼び捨てって どうなの?\Nそうですよね |
今度から ちゃんと さん付けにします |
妖精さん お願いします |
俺 鶴の こんな姿 見てるの つらいっす |
せめて こうなることだけでも 教えてやりたくて |
俺にしてみたら お前の 煮えきらない 姿のほうが |
よっぽど 見てらんないけどな いや とりあえず 今 鶴のこと |
何とか しないとなっていうのは あります |
そんなに行きたいなら 行け |
ありがとうございます!\Nよし |
久々だから 何か ワクワクしちゃいますね |
例のこと 覚えてんのか?\N当たり前じゃないですか |
よっしゃ\Nよし! |
いっちゃいます |
求めよ さらば 与えられん |
ハレルヤ~ チャンス!\Nぬおおおーっ! |
おおおーっ!\Nえっ? あれ? |
すまん\N日本人と 話してたら |
ついつい 日本語で 話しちまったよ |
ここは アメリカだった\Nそういうの 関係あるんすか? |
郷に入っては 郷に従え\N前から 思ってたんすけど |
ことわざとか 格言とか めちゃめちゃ 詳しいですよね |
電子辞書は 実に便利だ\Nそういうの 持ち歩いてるんだ? |
嘘に 決まってんだろ\Nいいかげんにして! |
オー!\Nオーケー! |
ハレルヤ~ チャンス!\Nぬおおおーっ! |
『ハレルヤ・コーラス』 |
ええっ!? |
うわっ…\Nたたた 多田さん!? |
たたた… |
たたた…\N岩瀬君 |
あっ はい!\N殴ってもいいですか? |
えっ!?\Nエヘッ 冗談です |
もう! 全然 冗談に 聞こえませんから! |
あの 土下座なんて やめてください |
謝られても 困ります |
そうだった あの日以来 初めて 多田さんの前に 現れた俺は |
何も 言葉を発することなく 土下座して |
逃げるように 去ってしまったのだった |
心の奥に 固く押し込んでいた 多田さんの存在は |
月日が たつごとに 頭から 離れなくなっていた |
このまま 避け続けて 礼と つきあっていていいのだろうか |
どこかで 罪の意識を 感じている 自分がいた |
建築の世界では 偶然っていう 概念は ありえないんです |
一つ一つのことを 積み上げていくことでしか |
結果は 生まれない\Nすべてが 必然なんです |
僕は 岩瀬君に謝ってほしいなんて 思ったことは |
一度も ありません |
あの日のことは 結局は 僕が 決めたことなんですから |
あの日 吉田さんが流した涙は ハッとするぐらい |
きれいでした\Nでも 残念ながら あの涙は |
僕たちの結婚に 向けられたものではなかった |
だから 最後の最後の瞬間 |
吉田さんの手を 離してしまったのかもしれません |
強がりに 聞こえるかもしれませんけど |
僕は 自分が出した結論を 後悔してないんです |
岩瀬君も 迷ったり 振り返ったりしないでほしい |
いや これって やっぱり 強がりですよね |
あっ 行きましょうか |
テツ\Nああ |
あっ ごめんなさい\N僕 もう 帰りますから |
あれ?\Nもしかして スピーチしてた人? |
ああ うん\Nホントに? |
あ…\N彼女も 式に来てたんです |
柴田 幸子です こんにちは\Nこんにちは |
健 遅ぇなぁ!\Nちょっと 遅れるって言ってた |
ほーい お待たせ\N頼んでないよ |
えっ? サービス サービス 食え 食え トローピカルな新作 フフフ |
完全に 罰ゲームだから\N幹雄 食べてね |
礼 食べなよ\Nなあ? お前たち |
そんなこと 言ってさ この店 結構 好きだろ? |
日曜日なのに こんな ガラガラに あいてる店って |
ここぐらいしか ないから 今 打ち合わせ中なんだから |
邪魔しないで\N相変わらず きついね |
お前たちは\Nこれ 食べて 元気 出しなよ |
これも食べなよ\N元気 消えうせる味だけど |
お前たち 最低だな ホントに!\Nアハハハ ハハハハ |
驚いた 1年前の ライバルが 一緒にいるところに |
遭遇するなんて 思いもしなかった |
そんなに うれしそうに 話すことじゃないでしょ? |
だって また この ツーショットが見れるなんて |
考えもしなかったもん\Nあっ ほら |
「48時間」が パート2 やったとき エディ・マーフィと ニック・ノルティのコンビが |
また 見れるって 興奮したときの あの感覚? |
あっ まあ 1のほうが 圧倒的に 面白かったんだけどね |
ああ 彼女 僕の 幼なじみなんです |
まあ 唯一の腐れ縁っていうか\N昔から この人 |
わたしが いないと 何にも できないんですよ |
今の言葉 もう 20年以上 ずっと 言い続けてるんです |
テツが 全く成長しないから 使い続けるしか ないんです! |
ずっと この調子で |
あっ ここのシュークリーム おいしいから 食べて |
じゃあ ごゆっくり |
ふうー |
あっ 覚えてますか? |
確か 教育実習のときに 話しましたよね? |
人生で 僕のことを あだ名で呼んだ |
唯一の人がいるって\Nああ |
今までの人生で あだ名で 呼ばれたことって |
1回しか ないんです |
ずーっと 「多田君」か 「多田さん」の どっちかで |
その1回は 誰からなんですか? |
ああ 幼なじみです\Nほかの友達は |
誰も使わなかったので 全然 浸透しませんでしたけど |
でも 何か 妙に うれしかったんですよね |
僕が 吉田さんと ああいうことになって |
一人だけ 笑ってくれたのが 彼女でした |
人の顔 指さして 「だっさい」って |
ちょっと 救われたんですよね あの後から 仕事の合間に |
ちょくちょく ここに 顔を 出すようになって |
もう 大して 話すこともないのに 居酒屋に 引っ張り出されて |
無理やり カラオケで 歌わされたりして |
もう 大丈夫だからって 言ってるのに |
今日みたいに 差し入れ 持って 時々 来るんです |
まあ 暇なだけだと思いますけど |
吉田さんにも よろしく お伝えください |
あっ いや\Nやっぱり 伝えなくていいです |
何か 格好つけて そういうこと 言ってると |
また 彼女から 「だっさい」って 笑われそうなんで |
それじゃあ 失礼します |
あっ よかったら これ |
いや 大丈夫です\Nそうですか じゃあ |
多田さんの言葉は ズシンと 胸にしみた |
本当は どこかで 気づいていたのに |
本質から 目を そらそうとしていた 自分がいた |
前へ進めないのは 誰のせいでもない |
俺自身の 問題なんだ |
お前らも 一緒に 結婚式 すりゃいいじゃん |
はぁ!? 何 言ってんの? |
だって いずれは するんだろ? |
そんなの 分かんないよ |
へえー 分かんないとか 言っちゃうんだ |
そんなの 分かんないじゃん |
1年も つきあってれば そういう話 するだろ? |
しないよ するわけないでしょ |
でもさ 幼なじみだったら 実家に 遊びに来たりするんだろ? |
どうして?\N何か 気にしてるみたい |
えっ?\Nだから うちの両親に |
合わせる顔がないって 思ってるみたい |
へえー そうなんだ\Nだって わたしが選んだんだし |
ケンゾーが どうこう思う必要 ないのに |
気にしてるのって 健だけなの? |
えっ?\N礼は 健が 両親と会うのって |
全然 平気なんだ? |
シュークリーム 食べなかった?\Nはい |
どうして 食べなかったの? あそこの すっごい おいしいのに |
もしかして 意地悪された?\Nいや |
そんなわけ ないじゃないですか\Nそうだよね |
あの人 いい人だもんねえ |
彼女と まだ 結婚してないの?\Nはい |
テツのこと 気にしてる? |
そういうわけじゃないんですけど\Nふーん |
わたしが こういうこと言うのも 変だけど |
もう 気にしなくて いいと思うよ |
ほら 今さら 気にしてます 躊躇してますって 言われても |
どうしようも ないじゃない?\Nうん |
彼女はさ テツと別れたくて 式場 飛び出したんじゃないよ |
君と 一緒になるため |
まっ わたしが こんな おせっかい 焼く必要も ないんだけどね |
ああー それにしても 来ないなぁ バス |
あの 一つ 聞いてもいいですか?\Nうん |
多田さんのこと 好きなんですか?\Nえっ!? |
いや 何となく\Nあっ もうね わたしたち |
好きとか 嫌いとか そういう状況 とっくに すぎてるから |
僕も 礼と そうだと 思ってたんですよ |
けど 無理に そう思おうと してただけだったんです |
略奪愛に 成功した男は 言うことが違うわ |
参考にしとく |
やっべ |
失礼します |
アンニョンハセヨ!\Nヨ! |
健 遅ぇよ\N悪ぃ 悪ぃ |
披露宴まで 1週間しか ないんだからね! |
大丈夫だって\Nそんな 焦んなって |
やっぱり ケンゾーじゃ 披露宴の司会 無理だって |
じゃあ 礼も 一緒にやれよ\Nえっ? |
だったら わたし 一人でやるよ\Nバーカ |
俺 意外と 司会とか うまいから\Nどこが うまいの? |
むしろ 苦手でしょ?\N何を根拠に 言ってんの? |
中学校んときの 学級会の司会 やったときだって |
見たことないぐらい グダグダだったし あれは 生徒に 問題があったの |
今回の新郎 新婦にも 相当 問題あるぞ |
そうだよ 問題あるんだよ そんな 立ってまで言うこと? |
よいしょー!\Nおう 鶴 久しぶり |
おう 保!\Nあっ そうそう そうそう |
あのね 来週 俺と エリ ハワイで 結婚式やんの |
あー さっき 聞いたよ 俺 まだ 呼ばれてねえぜ |
うん 本当に 祝ってもらいたい人しか |
呼んでないの ごめんね\Nお前 もう |
二度と 来んじゃねえよ お前\Nこの野郎 |
よいしょ よいしょ\Nほい 頼むな! |
もっと 厳選してから 持ってこいよ |
えっ? 被写体が よすぎてさ 選べねえんだよ |
おい 保! 牛乳 くれ!\Nおう |
小さすぎて 肉眼じゃ 確認できないんだろ |
はい そこの独身の君 黙る\Nお前 そんなふうに |
調子 乗ってっから 痛い目 遭うんだぞ |
はい そこの独身も 黙~る マジで 話 聞けって お前 |
はい そこの独身 黙~る\N黙~る 黙~る |
あっ 幹雄はさ スライドショーと 写真撮影以外 仕事ないの? |
それで 十分だろ |
お前 花嫁の監視しとけよ\Nはっ? 何? それ |
式当日に 逃げられたら 困るってこと? |
バカだな 礼じゃあるまいし |
エリが そんなこと するわけねえだろ! |
何 微妙な 空気にしてんだよ お前 |
いや だって お前が 余計なこと 言うからだよ |
まあ でも 鶴と エリなら ありえる話だな |
だろ?\Nいや ねえな |
どっちだよ |
おう うちの ワイフからだ\N気持ち悪いから |
その言い方 やめなよ\Nもしもし? |
ああ 急に 仕事 入っちゃってさ うん 外せないんだわ |
あっ だから ちょっとね 今日 夜遅くなると思う |
あっ そう あんね\Nうちのダディーと パピーには |
キャンセルの電話 しといたから\Nうん 分かったってよ |
うん そういうこと\Nじゃあね |
ダディーも パピーも どっちも おやじだよ! |
分かってるし!\N分かってなかったろ? 今! |
知ってるし!\Nはあー もう 嫌だな 独身は |
お前 マジで 痛い目 遭うからな\N何だよ!? 独身! |
マジで 痛い目 遭うから 分かったよ 独身 おい |
マジで 痛い目 遭うからな\Nうん? |
はあー |
お前 ホントに 仕事なのかよ? いや 今 忙しいんだよ |
牛乳屋が 休日に忙しいなんて 聞いたことねえぞ? |
うん? だから 新商品開発だろ あと まあ 大人の事情とか |
いろ… もろもろ あんだよ! 社員 二人しか いないのに |
何の事情が あんのよ?\Nんだよ もう |
人の仕事に いちいち 口 挟んでくんな お前! |
よし! おう そうだ\N次に会うの ハワイか |
だな\Nああ じゃあ ちょっと |
もろもろ 頼むな うん\N頼んだぞ 健! |
おう 保! ツケとけぃ!\Nお前 ホント 払う気あんのか? |
よくよく 考えると 相当 怪しいなぁ |
なあ? 鶴 怪しくねえ?\N何が? |
あいつが 休みの日に 仕事なんて 見たことないだろ? |
別に どっちでもいいよ\N行っちゃいましょう! |
もう そうやって すぐ サボろうとする! |
そうじゃないだろ あの二人には 幸せに なってもらいたいだろ? |
エリの不安 取り除いちゃいましょう |
不安って?\N不安だよ! |
そういえば 結婚式の準備とか 全然 やってくれないとは言ってた |
披露宴で使う曲も 席順も 全部 エリに任せっきりだって |
そうなんだ |
そう! これを どうにかしなきゃ 戻ってきた意味が ありません! |
傷口が広がる前に 止めちゃいましょう |
そうだね!\Nレッツ ゴー! |
行こう 幹雄!\N手 つなぐな! |
あっ また 来るね!\Nタモっちゃん ツケといて |
おう って おい! 何にも お前 頼んでねえぞ! |
手 つなぐなって! |
いらっしゃいませ えっと あっ あの 牛乳 ください |
いちばん 大きいやつで\Nはい |
はい あと…\Nあー 何がいいのかなぁ |
あー 何か ドキドキするよね |
どうするよ?\N見知らぬ女が 現れたら |
変なこと 言わないでよ\N来たぞ |
えっ?\N見知らぬ女 |
ホントに 来ちゃったよ |
誰? あれ\N見知らぬ女 |
職場の人?\N職場には |
男と 乳牛しか いないっつってたよな |
そうだとしても あんな デレデレした顔は しないだろ |
じゃあ 誰なの?\N多分 見知らぬ女? |
もしかして まさかの…\N浮気!? |
アハハハハ!\Nありえない ありえない |
ノー ノー ノー |
うわああー! エリからだ\Nどうしよう? |
とりあえず 出ろって |
もしもし?\Nもしもし? 礼? |
今 何やってる?\Nえっ!? い… 今? |
あの よかったらさ 今晩 みんなで ウチに ご飯 食べに来ない? |
ご飯? ああー! ご飯 いいね ちょうど おなか すいてたし |
行く 行く!\Nアハッ よかった |
まだ 三人で 「将軍」にいるの? ケンゾーと 幹雄も ぺこぺこだって |
後で 三人で行くよ |
あっ! ねえ\Nちょっと 待ってて |
そっか 思い出した\N「将軍」から |
エリの家に行って 飯 食ったんだよな |
来るときに 小麦粉 買ってきてくれない? |
久々に みんなで お好み焼き やろうと思って |
うん 分かった\Nうん じゃあ 待ってるね |
あっ エリ?\Nうん? 何? |
鶴って 今 何やってんの?\Nえっ? 会わなかったの? |
ううん 会ったけど その後 どうしてるのかなぁと思って |
仕事って言ってたけど\Nふーん そうなんだ |
うん フフッ\Nホントに 仕事なの? |
えっ? どうして?\Nあっ ううん いや 何となく |
ああっ! ご飯? 仕事で 遅くなるって 言ってたから |
先に食べちゃって 大丈夫だよ\Nうん そうだね |
うん じゃあ 後でね\Nうん じゃあ 後でね はい |
はあー 行くね\Nどこ 行くの? |
エリが心配だから 先に行く エリに 余計なこと言うなよ |
余計なことって 何? |
だから 鶴のこと まだ 何も言わなくていいから |
だって エリは 仕事だと思ってんだよ!? |
言葉が 足りなかっただけかも しんねえし |
それなら エリが 鶴に 確認するべきだと思うけど? |
確認する必要 ないって\Nどうして? |
つきあいたての カップルじゃ ないんだから 誰と どこで |
何してるかなんて いちいち 報告しないっつーの! |
夫婦になったって 言うこと 言わなきゃ 伝わらないと思うけど |
何も言わなくても 分かり合える 二人だから 結婚するんです |
絶対 そんなことない!\N男の人は 黙ってるのが |
格好いいと 思ってんのかもしれないけど |
女の子は 言葉にしてくれなきゃ 分かんないの! |
別に 格好いいとかじゃなくて 何となく 分かんでしょ? |
何となくって 何よ!?\N全然 分かってないんだから! |
はいはい はいはい!\N続きは また 今度 |
鶴 動いたぞ |
もう! 何で 鶴のために 頑張ってんのに |
礼と ケンカしなきゃ いけねえんだよ |
どうする?\Nとりあえず 電話してみる |
おう |
あっ! あいつ 切りやがった |
あっ あっ どうも\Nどうも お待たせしました |
ああ いえ とんでもない |
また 別の女かよ!? これって やっぱり 浮気? |
結婚前の男は 最後に はめ 外したくなるって 言うからな |
かなり 必死だなぁ\Nどんだけ どんよくなんだよ |
あいつ 大リーグばりに ストライクゾーン 広すぎじゃね? |
ハードル 下げすぎ~ |
いらっしゃい\Nお邪魔しまーす はい |
ああ ありがとう\N早かったね 健と 幹雄は? |
もう少ししたら 来る\Nうん |
あっ! どうしたの? この料理\N結婚したら |
いい お嫁さんになるってとこ みんなに 見せたくて ハハハ |
嘘 ホントはね 鶴のご両親が 今日 泊まりに来る 予定だったの |
そうだったんだ\N張り切って |
昨日から 準備してたのに 鶴が いきなり キャンセルしようって |
ご両親も さっき 聞いたみたいで |
心配になって 電話くれたり したんだけどさ |
はあー 最近 残業っつって 帰ってくんのも 遅いし |
休みも しょっちゅう 一人で 出かけちゃうんだよね |
結婚式もさ 「エリの好きなように やっていいから」とか 言って |
全然 手伝ってくんないし\Nうん |
鶴 わたしのこと どう思ってんだろ? |
えっ? |
言えば 何でも 言うこと 聞いてくれるし |
わたしのこと すごく 大切に思ってくれてるって |
ずっと 思ってたんだけど\N実は わたし |
鶴のこと よく 知らないんじゃないかと思って |
そう思うなら いろいろ 聞けばいいじゃん |
うやむやなまま 結婚するのは よくないと思うよ |
礼はさ 健に 聞けないことってないの? |
えっ?\N健に 何でも 聞いたりできる? |
秘密とか ないの?\Nお互いのこと 全部 知ってる? |
うん |
あっ 火 消えちゃう |
あっ ううっ! うえっ!\N大丈夫? |
星の数ほど 女はいるんだから! \N酒にも 飲まれました |
あれ 絶対 高校生だと思われてるよ |
いや 中学生\Nホント 必死だな |
自分の才能じゃ 口説けないってことに 気づいて |
最後の手段に出たな |
大して 金もないくせに! |
あんなに がむしゃらに なれるもんかね? |
まあ 結婚する身に なってみねえと分かんねえけどさ |
っていうか 結婚すんのに 何で こんなことすんだよ? |
意味 分かんねえよ\N健も 躊躇してないで |
さっさと 結婚すりゃいいじゃん\Nまた その話? |
はっ?\Nまたって いつ 話 したよ? |
気のせいかな 気のせいだ |
やっべー\N健! |
この話 したの ハワイだった\Nお前 もしかしてさ… |
お前 もしかして…\N戻ってきてること ばれた? |
結婚する気 ないの?\N何だよ びびらせんなよ |
あるよ あるけど… |
自分たちの前に 鶴たちのことを どうにかしないとって? |
そう |
それで また 懲りずに 過去に 戻ってきたんだ |
ええーっ! 気づいてたの?\Nやっぱり そうなんだ |
大体さ 健が 鶴のために どうにかしてやろうって |
思ってる時点で 不自然すぎるって\Nそうか? |
大学で 花火やったときも そうだろ? |
あんなに必死に 鶴の背中 押したのも |
鶴が 後悔するって知らなきゃ 絶対 しないって |
俺って そんな 薄情か?\Nで 鶴たち どうなんの? |
結婚式で 大ゲンカするとか?\Nエリが 式の前に |
日本に 帰ってきちゃうの\Nはっ? 何? それ! |
わざわざ ハワイに行っても 式は 中止 |
お前が作った スライドも 無駄ってわけ |
ああ じゃあ 俺 準備しなくていいんだ |
そうじゃねえだろ 二人が 無事に 結婚式 挙げること 考えろよ |
じゃあ そろそろ 止めたほうが よくねえ? |
浮気未遂じゃ 済まなくなるぞ\Nそうだよ 行こうよ |
いらっしゃいませ えー お客さま 2名さまで |
よろしかったでしょうか?\Nお客さま? お客さま? |
えー 本日の ご指名のほうは?\Nはい ご指名 |
あっ フリーで\Nありがとうございます |
えー 2名さま ご来店です!\Nありがとうございまーす! |
スタッフ! 3番テーブル すぐ グラス 下げちゃって! |
はい ありがとうございます! どうぞ どうぞ こちらへ |
どうぞ こちらへ\N乾杯! |
おいしい\Nお客さま シットダウン |
オーケー ナイス…\Nえー 当店を ご利用いただき |
ありがとうございます\Nすてきな夜を 過ごしたければ |
当店を利用すれば 効果てきめん 僕 イケメン オーケー ヤッフー! |
えー すぐですね レディーのほうを ご用意しますんで リトル ウエート |
少々 お待ちを あー スタッフ 3番テーブル すぐ グラス |
はーい お待たせしました! |
ゆかりさんですね?\Nありがとうございます |
レディース アンド 全部 イケメン! ゆかりさん ご指名でーす! |
初めまして ゆかりです\Nあっ 初めまして |
あいつ 指名なんかしてるぞ\N調子 乗りすぎだ |
こんばんは!\Nこんばんは |
この店 初めて?\Nはい 初めてなんで |
ちょっと 緊張してます\Nお前 そんなこと |
言ってる場合じゃねえだろ\Nかわいい! |
でも 俺ら 友達 見張り 来てるんで 適当に |
時間 つぶしといてください \Nえー! つまんない! |
じゃあ 俺と 映画の未来について 話し合おうか? |
えっ?\N映画 好きなんですか? |
俺 映画監督 やってるんだ \Nええー! すごーい! |
お前 どっちかって言うと 映画監督に やられてるほうだろ |
いいから 鶴のこと 見張っとけよ\Nそれで? |
時代の最先端は リュックだ\Nリュック!? |
知ってる?\Nいい目してるよ |
君たちも ハリウッドに 行っちまいな! |
幹雄 幹雄 |
ちょっと\Nちょっと ごめんね ごめんね |
ヘイ! ウエート ウエート… リトル ウエート お客さま 困ります! |
しーっ!\Nワオ! |
しまーす |
おい 鶴! |
ほい |
ごめんね\N手伝わせちゃって |
ううん 鶴が やらないなら わたしが やるしかないでしょ |
ありがとう\Nフフフ あっ これは? |
何か 定番すぎない?\Nいや |
入場は 無難なほうがいいでしょ?\Nえー でも わたし |
これも 気になんだよな\Nこっちも いいんだけどさ |
アハハハ\N何? |
昔のエリは もっと 潔かった気が するけどなぁ |
そうかなぁ?\Nまっ エリも |
大人になったってことか\Nそうですよ\Nアハハ |
結婚って 何なのかね?\Nうん? |
昔はさ 結婚って きれいな ウエディングドレス 着て |
みんなに 祝福されて いいなぁって 思うぐらいだったでしょ? |
ああ わたしも 小さいころは 結婚って エプロン つけて |
料理して だんなさんが 帰ってくるのを |
待つことだと 思ってた\N分かる それ! あっ 後さ |
結婚したら どんな名前に なるかって 考えなかった? |
すっごい 考えた!\Nでしょ? わたしは |
岡さんと結婚したら 「おかえり」に なっちゃうから |
絶対 やめようって思ってた\Nアハハ かわいいのに |
やだよ!\Nあっ お茶 いれてたんだ |
ちょっと待って\Nうん |
結婚式だけ やるってわけには いかないのかねえ? |
結婚生活も 週に 3日とかね\N鶴が聞いたら 悲しむよ |
だって ドレス 着るまでが こんなに 大変だと思わなかった |
これから もっと 大変なこと いっぱい あるのに |
そんな 今から 暗い顔してて どうすんの? |
礼は どうすんの?\Nえっ? |
結婚したいって思う? |
まっ エリの見てたら ちょっとは 考えちゃうよねぇ |
健と 結婚とかの話には なんないの? |
えー! ならないよ\Nえっ? |
ならない ならない\Nおっ 卒業アルバムじゃん |
はあー 分かんない\Nもしかしたら |
そういう話になんのを ずっと 避けてるのかもしれない |
エリと 一緒かもね |
何か 怖くてさ 自分から そういうこと 聞けないし |
前に ああいうこと あったし 親のことも あるし |
自分から そういう話をする 勇気が ないのかも |
あっ! 鶴は 将来の夢 かなえちゃうんだね |
うん?\Nだって 書いてあるよ |
「俺の将来の夢は エリと結婚して 世界一 幸せな |
お嫁さんにする」って フフフ\Nホントだ |
うわー! ハハハ うわぁ やだ これ 懐かしい |
こんな色 |
あー! 若い |
わたし 会社に 電話してみる\Nえっ? |
ちゃんと 確認してみる |
もしもし 鶴見 尚 お願いしたいんですけど |
ああ 鶴見君?\Nはい |
今日は 休みですけど\Nえっ? |
仕事って 言ってたんですけど |
鶴見君が 日曜日に 仕事するわけ ないでしょ? |
今まで 一度だって 残業したこと ないのに |
えっ?\N失礼ですが |
どちらさまですか?\Nもしもし? |
あいつは 限度ってもんを 知らねえよな |
まだ 帰るわけには いかないって 言われてもなぁ |
エリ!\Nねえ? エリ! |
何だ? あいつら\Nやっべ |
えっ?\N鶴の嘘 ばれたのかも |
マジで? |
行ってくるわ\Nおい 健! |
1年前も 全力で 走っていた |
過去に戻るたび 礼のために |
何度も 何度も 全力で走ってきた |
礼の泣き顔を どうしても 笑顔に変えたくて |
全力で走った |
礼に たまらなく 会いたくなって 全力で走った |
礼に 第2ボタンを 渡したくて 全力で走った |
礼に どうしても 後悔してほしくなかったから |
全力で走った |
礼の 二十歳の誕生日を 真っ先に 祝ってやりたくて |
全力で走った |
礼に 「好き」の ひと言を 伝えたくて 全力で走った |
礼が どうしても 忘れられなくて 全力で投げた |
礼に プロポーズがしたくて 全力で走った |
礼を 失うのが怖くて 全力で走った |
1年前 俺は 礼のために 全力で走り続けた |
礼と離れるのが 嫌で |
どうしても 好きの ひと言が 伝えたくて |
世界で いちばん 幸せに してやりたくて |
全力で走ってきた |
あのころの気持ちが 次々と よみがえってきて |
思わず 泣きそうになった |
まだ やり残していることが あるのに |
この1年間 ずっと 逃げ続けてきた 自分に |
何だか 無性に 腹が立った |
わたし やっぱ ダメみたい |
もう 無理だよ |
エリ 覚えてる? |
多田さんの 授賞式の夜 エリが わたしに 言ってくれたこと |
どんな 決断をしても わたしは それを応援する |
礼の幸せだけを 願ってるからって |
結婚式の日 あの言葉が あったから |
思いきって 走り出せたんだと思う |
ケンゾーだって 何にも 言ってくれないよ |
不安だし もどかしいときも あるけど |
本当は わたしのこと どう思ってくれてるか 分かる |
不器用だし ちょっと 抜けてるところ あるし |
だから お互い 言い合いばっかりだけどさ |
この人と 一緒に 生きていくんだなって |
そう思える |
鶴も きっと そうだよ |
本当は エリも 分かってるんでしょ? |
わたしも エリの幸せだけを 祈ってる |
本当に 好きな人と 一緒に 生きてってほしい |
そこの二人! |
ちょっと 行きたいとこ あんだけど つきあってくんない? |
何だよ お前たちかよ |
ちょっと ケンゾー\N何なの? |
健 ホントのこと 知ってるんでしょ? |
話してよ\Nそれは言えない |
どうして?\N男の約束だから |
そうやって ごまかさないでさ |
タモっちゃん 借りるね\Nおお 使って |
結婚式用の いいテープ 見つけたんだ |
ケンゾー! |
しーっ |
「あっ お忙しいところ |
お時間 つくってもらって すいません」 |
「別に いいんですけど でも わたし |
幼稚園の 年長のときだけですよ エリちゃんと 同じ クラスだったの」 |
「ああ もう いえいえ\Nもう いいんです |
あの どんな言葉でもいいんで もう よろしく お願いします」 |
「エリちゃん\N幼稚園のユリ組で |
一緒だった 文重です\N覚えてるかな? |
結婚 おめでとう でも ホント 優しそうな彼で よかった」 |
「ヘヘヘヘ…」 \N「今度 ウチにも |
遊びに来てね だんなと一緒にさ」 \N「あっ はい ヘヘヘ…」 |
「フフフ… あと 絶対…\N絶対 幸せになってね |
ホントに 結婚 おめでとうございます |
こんな感じでいいのかな?」 \N「ああ もう… |
あっ ありがとうございます フフフ」 \N「フフフ…」 |
「ホントは 今までの人生で エリが かかわった人 |
全員から 祝福のメッセージを もらいたいんですけどね」 |
「そうなんだ…\Nでも 何で |
こんなこと やってんの?」 \N「うん? いや 俺… |
一生 忘れないような 結婚式 してやりたいんです |
エリも すっごい 結婚式 楽しみにしてるんで |
もっと もっと 思い出に 残るものに してやりたいんです」 |
「ああ そっかー」 \N「あっ だから |
当日まで 絶対 ないしょにしたいんです |
あいつ 喜んで 泣いてくれたら 最高なんですけどね」 |
「ああ… じゃあ もう わたしなんかで よければ |
喜んで 協力するから!」 \N「ありがとうございます |
ああ じゃあ こちらのほうに はい 回った よし お願いします」 |
「エ… エリさん\Nあの 高校の購買で |
パン 売ってた 三枝といいます」 |
購買の おばちゃん?\Nあいつ よく見つけたよな |
「あの 今 写真 見せてもらって |
エリさんのこと 思い出したんだけど |
あの ほら 一度 家庭科の授業で焼いた クッキー |
くれたことあったでしょう?\Nおいしかった あれ!」 |
「ああ そうそう!\Nそうなんすよ! |
あいつのね クッキー めちゃくちゃ うまいんすよ! |
あとね クロワッサン\Nあれ すっごい うまい |
あっ そう\N購買に 置いて 購買に」 |
「フフフ…!\N結婚 おめでとう! |
幸せな家庭を 築いてくださいね!」 |
これ 全部 鶴が? |
ハハハ… |
「エリ 元気?\N朝子だよ! |
お店での 源氏名は ゆかりでーす!」 |
「あのう そういうのは ホント 結構なんで」 |
「ああ ええとね…\N何 話せばいいんだろ |
エリが転校しちゃって 15年ぐらい |
会うことも 電話で話すこともなく |
今日まで 来ちゃったね\Nそれが まさか |
いきなり 結婚するなんて 正直 驚いてます」 |
「僕も 正直 驚いてます」 |
「でも ホントに おめでとう |
エリなら もっと いい だんなさん 見つかると 思うんだけどなー」 |
「あの… あの! あの もう そういうの ホント 結構なんで」 |
「フフフ\Nエリのために わざわざ |
こんなところまで 来てくれるなんて |
いい だんなさんだね\Nもっと大事にしなきゃ ダメだよ」 |
お前も よくやるよな |
こんな 結婚式前の 忙しいときにさ |
女の子にとっては 一生に一度の 晴れ舞台だろ |
だから やって やりすぎってことは ないの |
ほかに もっと 式の手伝いとか |
してやったほうが 喜んだんじゃないの? |
うん… かもな\N分かってんじゃん |
でもさ 俺は 俺なりに 祝ってあげたいの |
もう エリには すっげえ 感謝してるからさ |
感謝?\Nそりゃ あんな いい女 |
俺みたいな男と 結婚してくれるだけで |
すっげえ 感謝だろ\Nよっ |
俺さ 結局 エリが 幸せになってくれれば |
何だっていいなって思った |
だから エリが生まれてから これまで かかわった人たち |
俺は その全部の人に 感謝してる |
もし その人たちが いなかったら 俺たちを こうやって |
巡り合わせてくれなかったかも しれないじゃん |
だから まあ お前たちにも 少なからず… 少なからず |
もう ちょっと\Nちょっとは 感謝してる |
何だよ!? 少なからずって \Nわっ びっくりした! |
痛っ! 何だよ!? 何だよ!? 痛っ!\Nやめろ やめろ! |
アメリカン ジョーク…\Nやめろ! やめろ! |
ぶっ飛ばすぞ! お前ら\Nおい ハハハハ… |
ようし じゃあ もう あと一人 コメント もらって 帰るわ |
また 別の女んとこ 行くのかよ? |
ちげえよ 今度は 男\N何だっけな |
エリの 中学校のころの 塾の先生 でもさ エリに ばれないように |
どうやって そんな人 見つけんの? |
あのな 人間 必死になれば 大抵のことは かなうんだよ |
ああ だから ちょっと もろもろのこと 頼むね |
ねっ じゃあ 行ってくるわ\Nじゃあね! |
鶴! |
相変わらずだな\Nうん? |
鶴は どこまで いっても 鶴だな |
鶴の愛情は 昔と変わらず エリに とことん まっすぐで |
少しだけ 不器用だった |
一度でも 本気で 鶴を疑った 自分が |
無性に 恥ずかしくなった |
何 やってんだよ? \N今日 撮る 写真もさ |
スライドショーに 絶対 入れてね |
あっ 入んないし |
また 女子かよ?\N何だよ? 「また」って |
高校の卒業式んときも グラウンドに 書いただろ? |
あんとき 心 つかまれないって 言ってた エリが |
鶴と 結婚しちゃうんだもんなー もう あんときは 必死だったの |
アハハハハ!\Nエリが 女子だって! |
そんなの 分かってるっつーの |
そんなんじゃ 心 つかまれないぞー! |
別れたくない! |
お前は 俺の あこがれなんだよ! |
どんなに 手 伸ばしても |
一生 手の届かない 高根の花なんだよ! |
それは 自分でも ようく分かってる |
だから 頼むから 俺の あこがれなんだから |
都合のいい女に なるんじゃねえよ! |
泣いてばっかの 恋愛なんか すんじゃねえよ! |
もう 見てらんねえんだよ! |
もう あいつんとこ 行かなくていいよ |
もう 行くな |
本当に たまに みんなが びっくりするような |
ホームラン 打つよな\Nあっ? 何だ? それ |
いいんだよ\Nお前は 知らなくて |
あっ あのさ\Nお前 テープのこと |
エリに 絶対 ないしょにしとけよ\N分かった |
でもさー もう 俺 エリに 黙っとくの 超つらいんだよね |
あっ そうだ\N「きだ~」 よし |
うーん |
ああーっ! えっ? 見た?\N見た |
もう 絶対 言わないで これ\N分かった |
いやぁ… あっ そうだ 隠そう 隠せばいいんだ |
よっ! |
エリ |
俺は 鶴のこと 尊敬してる |
体は ちっちゃいけど |
誰より でかい男だと思ってる |
もしかしたらさ あいつ ハワイ 行っても |
この続き やると思うんだよね |
急に 別行動したいとか 言いだすかもしんないし |
でも そんなの 全然 心配ないからな |
俺さ 鶴に このこと 黙っといてくれって |
言われてんだけど |
俺 何も しゃべってねえよな? |
しゃべってない |
フフフ… うん\Nなーんにも しゃべってない |
フフフ… |
後さぁ 式 当日は |
このテープ 初めて聞いたような顔 してやってくんないかな |
こんなの 何回 聞いても 泣いちゃうって |
なら 大丈夫だな |
ありがとうね\N全然 |
いいなぁー\Nエリは 愛されてて |
フフフフ…\Nフフフフ… |
いいなぁー エリは\Nいいなぁ! |
いいなぁー! ハハハハ!\Nいいなぁ! |
こっち こっち\Nこれ |
そこ! パリッとした 麺と キャベツの間に |
肉と 魚介の うまみが 染みこんでて 最高でしょ!? |
おいおい!\N言葉で 洗脳すんの 卑怯だぞ! |
何が?\Nそっちだって こっそり |
グレードの高い肉 使ってただろ\Nそうだよ |
関西風に合う お肉 使っただけです |
そうです 広島風には 上質な お肉は もったいないんです! |
ああっ!?\Nもったいない! |
どこが もったいないんじゃ!?\Nもったいないんだよ! |
頑張れ!\N負けんな ケンゾー! |
決まった |
こっちのほうが おいしい |
イエーイ!\N意味 分かんないんだけど! |
でも こっちの勝ち\Nえっ? |
どうして?\N作るまでの 過程とか |
あと チームワークも 採点に 含まれるから |
イエーイ! やったー! |
やったー!\N何じゃ!? そりゃ! |
勝負は 味だろうが!\N味だろうが! |
でも 勝ったんです\Nそうです イエーイ! |
勝っちゃったんですー!\Nおい 岩瀬! デザート 買ってこい! |
わたし プリン!\N俺 ババロア! |
あん!?\Nねえ ねえねえ ババロア |
分かったよ 買ってくりゃ いいんだろ! 買ってくりゃ! |
男らしいとこ 見せろ ケンゾー!\Nおう! |
おい お前も 負け組だろ! 行ってこいよ! 一緒に 行け |
あっ 待って 健 健\N待って 待って 待って |
あのさ 聞いて ババロア 何度も 言わなくても 分かります |
あっ 分かる? 分かる?\N幹雄は? |
あっ 俺 いらない\Nあっ マジで? |
じゃあ 幹雄 食べないなら 俺 それ 食べるからさ |
あの…\Nああ ごめん 聞いて |
ババロア うわっ! |
バカ!\Nえっ? ババ? |
バカ!\Nバカ? |
牛乳 飲め お前 黙って\Nうるさいな! |
あっ もしもし 優子?\N今 平気? |
お好み焼きってさ 広島風と 関西風以外に 何か あんだっけ? |
チヂミ?\Nそれ 韓国だろ ハハハ… |
何で? 関係あるじゃん \Nちょっと 待って |
洗剤 つけすぎ\Nそんなことないよ |
ねえ 持ってきて 持ってきて\Nやーだ |
まあ チヂミでも いっか\Nえっ? ああ |
今度 一緒に 作って みんなに 食べさせようぜ |
別に どうも しねえけど… |
ちょっと 結婚っていいなぁと思ってさ |
だから 優子とは 結婚しないって |
まあ 今すぐにはな |
ああ ケンゾー どれにする? |
あっ エクレア\Nああっ! |
チーズケーキにしなよー\N自分で 買えー |
だって シュークリームも 食べたいんだもん |
知らねえよ\N両方 買えばいいじゃん |
まだまだ 女心が 分かってないな 少しは 鶴のこと 見習いなさい |
バカ あれだって 俺が 教えてやんなかったら |
今ごろ 離婚だぞ |
そうやって 何でも 自分の手柄にしようとする |
はぁ! |
あっ はい |
ハハハ!\Nうまっ |
鶴って ホント 男らしいとこあるよね\Nたまにな |
たまにって ケンゾーが 言えることじゃないでしょ |
それは 俺が 男らしくないって 言いたいわけ? |
うーん\Nどうでしょうー? |
俺が 結婚するときは あんなもんじゃないから |
へぇー そうなんだ?\Nまあ でも |
ケンゾーも 男らしいときあったよね\Nうん? |
あの スピーチんときだけは 男らしかったよねー |
だけって 何だよ? だけって あんときが ピークだったな |
これから もっと上 あるから\N絶対 ないよ |
全然 あるから\Nその後の 海も 最低だったしねー |
さんざん 人に おんぶさせといて よく言うよ\Nふふーん |
鶴 エリのこと ちゃんと 幸せにしてくれるかなぁ |
大丈夫だよ |
あいつなら 大丈夫 |
うん |
どしたの? エリのウチ こっちじゃないでしょ? |
ちょっと 行きたいとこあるんだよね |
えっ? どこ? |
黙ってちゃ 分かんないでしょ |
言わなくても 分かるでしょ\Nいや 分かんないでしょ |
じゃあ テレパシー 送っとくわ |
バカじゃないの |
ケンゾー |
どうしたの? 急に |
急にじゃないよ\N前から ずっと思ってた |
一度 ちゃんと 会って 挨拶しなきゃなって |
でもさ 男は やっぱ |
多くを 語んないほうが 格好いいかなぁと 思って |
ずっと 胸に 秘めてた |
また そんなこと言って |
はーい! |
ケンゾー君! |
ごぶさたしております |
あの日 お二人に どれだけ ご迷惑を おかけし |
つらい思いを させてしまったのか |
考えれば 考えるほど こちらに 来ることが できませんでした |
どんなに 言葉を尽くしても |
決して 償いきれないと 思ってます |
でも あの日 |
掛けがえのない 存在を 失わないで よかった |
本当に よかった |
その思いは これから先も ずっと 変わりません |
黙って 後をついてきてくれた 礼さんを 幸せにすることが |
僕にとって 精一杯の 償いだと思っています |
ホントに 申し訳ございませんでした |
突然 お邪魔して すいませんでした |
待ちなさい! |
待ちなさい |
礼は わたしたちにとって 大切な娘です |
あのまま 結婚していたら あるいは |
つつがなく 幸せに なっていたかもしれない |
君が やろうとしていることは |
決して 簡単なことでは ないと思う |
君にとっても 礼にとっても |
礼の 周りの人にとっても |
そのことを 君は 一生 |
肝に銘じてください! |
すいません わざわざ 見送りまで してもらって |
いいのよ\N全然 気にしないで |
お父さん あんな言い方 しなくても いいのにね |
あの人 自分が わたしの 父親に 会いに行ったときに |
痛い目に 遭ってるから それで 厳しい顔 したいだけなのよ |
そうかなぁ |
ホントはね 口で言ってるほど 心配してないんだと思う |
また 遊びに いらっしゃい |
今度は ご飯でも 食べに来なさいよ |
はい |
じゃあ もう行くね\Nそんなに 遅くならないでね |
お父さん 礼が帰ってくるまで 起きてるって 言いだすから |
フフッ うん 分かった\Nじゃあ 失礼します |
うん じゃあね\Nじゃあね |
それから エリのマンションまで 二人は 無言だった |
何を話していいのか 分からなかったと 言うよりは |
何も 話さなくてもいいような 空気が そこにはあって |
ラジオを 聞くでもなく 外の景色を 眺めるでもなく |
でも 幸せな時間が そこには 確かに存在した |
よーし ババロア 来い\Nはい ハバネロ |
ひゃあ! 何!? これ!\Nお前 ハバネロ つってたじゃん |
言ってねえよ!\N俺 ババロア つったじゃん! |
ハバネロって 言ってたよな?\Nうん 言ってたよ |
何度も何度も 言ったじゃん! ハバネロってな 全然 似てないだろ! |
早く のんじまいな\Nお前 やっちまうぞ! おら! |
うーっ!\N何で 買ってきた? こんなもん! |
ちょっと!\N何? これ! 誰? |
最初から なってたよ これ \Nああ それ 鶴だ |
うわぁ!\N鶴! |
いやいや あっ 後で…\N後で ちゃんと消すね |
あっ 離婚だ\N離婚だー! |
あっ あの もう それだけは 勘弁してください ホント |
じゃあ 早く消してよ!\N消さないでいいじゃん |
せっかくの 夫からの 愛のメッセージ とっときなよ |
やだよ\Nこんなの 恥ずかしいよ! |
うちのワイフ てれ屋さんだからね |
あっ 並んで 並んで 並ぼう \Nよし 並ぼう |
寄って あっ 鶴\Nこれ 乗れ |
おし 分かった\Nちっちゃいからな |
うるせえよ あっ そうだ! 待って 待って 待って! |
待って 待って 待って\N待って 待って 待って 待って |
エリ 怒ってないで\N後ろ 二人も 寄って |
はい オッケー? はい\Nまた 字 間違ってる |
えっ? ちゃんと 好きだーって 書いてあるよ |
字 覚えろ お前\N覚えてます! |
来るぞ\Nもう |
ぬおおおーっ! |
『ハレルヤ・コーラス』 |
あっ マジックのやつ 怒ってる? \N怒ってるよ ごめんね |
よっしゃーっ! よし! |
ちょっと!\N何 大きな声 出してんのよ!? |
だって エリと 鶴が あそこに 座ってるからさ |
結婚するんだから 当たり前でしょ |
バーカ 俺が いなかったら 今ごろ あいつら あそこに座ってないから |
もう 何 言ってんのよ?\N頭 大丈夫? |
大丈夫とかじゃなくて\N俺が いなかったら あそこに… |
『ハレルヤ・コーラス』 |
そんなに 必死に 説明したって |
分かるわけ ないだろう?\Nそうなんすけど |
一生懸命 頑張ったのに 悔しいじゃないっすか |
誰かに 褒めてもらいたくて 自ら アピールする姿ほど |
醜いもんはない!\Nはあー |
誰か 僕に 優しくしてくれる人 いないっすかね\Nフッ |
次に会うのは スペインだな\Nスペイン!? |
ハワイも そろそろ 飽きたし 今度は スペインに住もうと思ってな |
だから お前たちの挙式は スペインで やってくれ |
いや 俺たちの式に 別に 参加してもらわなくて |
大丈夫です\Nあっ? |
恩人に対して そういうこと 言うようになったか |
人間の薄情さは 恐ろしいな 分かりましたよ 考えておきます |
でも うちの これが 何て言うかね |
フフッ |
ちゃんと 幸せにしてやれよ |
はい |
お前も 幸せになれ\Nはい |
続きまして 新郎から 皆さまに ご挨拶がございます |
えー 本日は お忙しいところ 僕と エリの結婚式に |
ご参加くださって まことに ありがとうございます |
あー エリは 高校のころから もう 学年一の人気者でした |
そんな エリが 僕と つきあってくれるっていうだけで |
もう 本当に うれしくて |
で 今度は 結婚してくれるって 言ってくれて |
もう 何て言うか\Nもう 世界… |
もう 僕は 宇宙一の 幸せ者です |
で こんな僕が エリに してあげられることって |
ホントに 少ないかもしれないけど でも この場を お借りして |
感謝の気持ちを込めて エリへ プレゼントを 贈りたいと思います |
『あの鐘を鳴らすのは あなた』 |
まだ! まだ! |
まだ! |
「あなたに逢えて よかった」 |
「あなたには 希望の 匂いがする」 |
「つまずいて 傷ついて 泣き叫んでも」 |
「さわやかな…」 ちょっと |
はい えっ? えっ? \Nプレゼントって これ? |
いや! 違う違う 違う違う! 絶対 違う! 絶対 違う! |
いや どうしよう\N「町は 今…」 |
止めてよ!\N無理だよ! もう 止まらないよ! |
「あの鐘を 鳴らすのは あなた」 |
おめでとう |
おめでとう |
こんだけ エリと 鶴と 長く いるのにさ |
二人とも 今日が いちばん 幸せそうな顔 してたよね |
うん |
結婚式って すごいんだねぇ\Nそうだな |
ねえ?\Nうん? |
えっ? どうかしたの? |
俺らが 去年 乗り損ねた ボートじゃね? |
はあ?\Nハネムーンに旅立つための ボート |
はあ 古くさいって さんざん バカにされたけどね |
乗っちゃおうぜ\Nえっ? |
ハネムーン 行っちゃおうぜ\N何 言ってんの!? |
ちょっと!\Nちょっと やめなって! |
何してんの? |
えっ?\Nあの日 約束したろ |
なくした ハイヒール 世界中 探して 見つけてやるって |
やっぱ ハワイまで 流れ着いてたんだなぁ |
ちゃんと 突っ込めよ\Nいや だって… |
プッ! ハハハハ! |
ねえ? ブカブカって シンデレラ的には アウトだからね |
普通 彼女の 足のサイズぐらい 把握してると 思うんだけどなぁ |
そういうとこ ホント 抜けてるよね |
ケンゾーが くれるものは いっつも ブカブカだ |
何で いっつも こう ブカブカなんだろうね? |
何で 持ってんの? |
不思議だよね\Nだって 俺… |
わたしも あのとき |
エリから 受け取って びっくりしたんだよね |
ただの 偶然だと思って |
見過ごしちゃえば いいだけの 話なのかも しれないけど |
わたしの手もとに こうして 巡ってきたことにも |
何か 意味が あるような気がして |
礼\Nうん? |
幸せにする |
俺が… |
お前のこと 絶対 幸せにする |
これからも ケンカすると思うし |
文句も たくさん 言うと思うし |
口 きかなくなるときも あると思うけど |
ずっと 俺の そばにいてほしい |
俺が 一生 面倒見るから |
俺と… |
俺と 結婚してください |
よろしく お願いします |
ブカブカ |
ホントに |
『明日 晴れるかな』 |