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002ろばとこおろぎ

こおろぎが、ころころとかわいいこえで、ないていますと、それをきいていたろばは、すっかりかんしんしてしまいました。
そして、
「よし、私もひとつあんないいこえをだすようになって、みんなをおどろかしてやろう。」
と、がらにもない考をだして、こおろぎのところへ、やって来ました。
「ねえ、こおろぎさん、あなたたちは、そんないいこえをだしているが、いったいまいにちどんなものをたべているんです。」
と、ききました。
こおろぎは、
「私たちは、ただくさばにたまるつゆを、すっているだけです。」
と、こたえました。
ろばは、それをきいて、
「さあ、しめた。もうすぐいいこえになって見せるぞ。」
と、おもいながら、それからは、まいにち、まいにち、くさばのつゆばかりすっていましたが、いいこえが、でるどころか、だんだんからだが、やせて来て、とうとう、ほねとかわばかりになって、しんでしまいましたとさ。
『ロバとコオロギ』の全文
あるロバが、コオロギのコロコロという鳴き声を聞いていました。

その声を堪能した後でロバは尋ねました。「どんな物を食べたら、あなたのように甘く響く声が出るのですか?」コオロギは答えました。「空気と露です」

ロバは同じ食事をしたら、コオロギのような声が出せるかもしれないと思ったので、口を固く閉じて空気と露以外は何も体に入れないようにしました。その結果、ロバは飢えて死んでしまいました。

この寓話は、不可能なことを成し遂げるため、不自然なことはしてはならないということを教えてくれます。
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セミが鳴くのを聞いたロバが、
「なんてきれいな声だろう。あんなに上手に歌えるとは、本当にうらやましい」
と、思いました。
 それで、セミに向かって、
「あなたたちは何を食べているから、そんなにうまく歌が歌えるのですか?」
「はい。つゆを食べているのですよ」
 そこでロバは、つゆのおりるのを待って待って、とうとう飢え死にしてしまいました。

 自分には全く出来ない事をやろうとしても、うまくいかないだけでなく、大変不幸な目に会ってしまいます。

おしまい



驢馬と蟋蟀
 毎日毎日重たい荷物を背中に積んで、村から町へと歩くロバがいた。ロバは一日の仕事を終えると、小屋につながれ、夜空の星を眺めながら一人ぼっちで眠った。
 ある夜のこと、ロバがうとうとしていると、耳もとでコロコロと可愛らしい声がした。声のする方を見ると、そこにいたのは小さなこおろぎ。
「なんてきれいな歌声だろう。一日の疲れもとれるようだ」
 ロバの言葉に少し照れながら、コオロギはぺこりとおじぎをした。
「どうか僕に構わず続けておくれ。僕は君の歌声を聞きながらもう眠るよ。明日も早くから仕事だからね」
 その夜ロバは夢を見た。夢の中で、ロバは荷物を背負っていつもの道を歩いていた。ロバの口からは歌がこぼれ、陽気な気分に荷物の重さも感じない。歌声はコオロギのように可愛くってきれい。青い空へと響き渡る澄み切った声。聞きなれただみ声が嘘のようだった。行き交う人々は、誰しもロバを振り返り、その歌声をニコニコしながら聞いていた。ロバはとても楽しかった。とても幸せだった。
 けれども夢は夢。目覚めたロバはもとのだみ声のままだった。ロバはしょんぼりとして、高らかに鳴く鶏の声を聞いていた。
 その夜、ロバはコオロギがやってくるのを待ってたずねた。
「ねぇコオロギ君。どうやったら君のような美しい声を出せるんだろう?」
「僕は生まれながらにこの声なものだから、どうやって出すかなんで考えたこともないよ」
 ロバはしばらく考えて、今度はこうきいた。
「君と同じものを食べたら、もしかして君と同じ声になれるかもしれない。君は何を食べているんだい?」
「僕が食べているのは、露さ」
 それをきいたロバは、早速小屋の側の草についた夜露を舐めた。
「なるほど、ひんやりとして気持ちがいい。のどがきれいになっていくようだ」
 次の日の朝、ロバは昨夜舐めた露の効果を試すため、恐る恐る鳴いてみた。すると、コオロギほどではないけれど、なんだか前より声がきれいになった気がした。
 嬉しくなって歌っていると、主人がやってきてロバを叱り飛ばした。
「こら、こいつ! 鶏でもあんめぇし朝っぱらからやかましいぞ」
「あぁご主人おはようございます。どうですこの声。少しきれいになったでしょ」
 そう言ってロバはまた歌い出したが、ロバの言葉は人間には通じない。主人はムチを取り出し、鳴くのをやめないロバを散々に打ち据えた。
 ロバは思った。きっとまだ少ししか声が変わっていないから、ご主人にはその違いが分からないのだ。もっともっときれいな声になって、ご主人を驚かしてやろう。
 それからロバは食べ物を全く食べなくなった。ただ露ばかりを舐めて生きた。日に日にやせ衰えていったロバは、ついに村から町へ荷物を運ぶことが出来なくなってしまった。ロバの主人は仕方なく新しいロバを買うことにした。そしてその費用の足しになるよう、仕事が出来なくなったロバを殺してその皮をはぎ、それを町に売りに行くことにした。
 その夜、ロバは考えた。美しい声をあきらめて食べ物を食べるようになれば、僕は殺されないで済むかもしれない。でも、そうしたらまたもとの生活に戻ってしまう。僕はやっぱりだみ声で、毎日毎日楽しいこともなく重い荷物を運ぶだけ。
「そんな生活に戻ってどうなるって言うんだ?」
 ロバは小屋を抜け出すことに決めた。残る力を振り絞って、小屋の柵に体当たりした。何度目かの体当たりでやっと柵の留め金は壊れた。よろよろと小屋の外に出たロバは、夜の虫たちの美しい歌声に誘われて、小高い丘の上の花畑へやってきた。そしてそこまで来ると、花の中にばたりと倒れこんだ。立っていることが出来なくなったのだった。
 花畑に身を沈めたロバは、静かに聞き耳を立てた。
「虫たちが歌声を競い合っている。なんて心地よい調べなんだろう」
 ロバは鳴いた。自分もその中に溶け込みたいと思って歌った。弱りきったロバの声は、あまりにもか細くて、虫たちの大合唱の中に埋もれてしまうほどだった。それがロバには、自分も美しい声になって、溶け込んでいるように聞こえた。
「あぁ、ついに僕も美しい声を手に入れることが出来たんだ。これでもう、一人じゃない」
 そのままロバはぐったりと首を垂れ、息をひきとった。



 この物語は、イソップ寓話集の中の『驢馬と蝉』という話をモチーフに書きました。もともとの話はたった数行のお話です。
「驢馬が蝉の鳴くのを聞いて、その響きに酔い、その声が羨ましくなって、何を食べてそんな声を出すのかと尋ねた。
『露さ』
との答に、驢馬は露ばかり食べ続け、飢えて死んでしまった。
 このように、柄にもないことを望む者は、得られぬばかりか、とんでもない不幸に陥るのだ。」(中務哲郎訳 1999 イソップ寓話集 岩波書店)
 しかし、子ども向きのイソップ寓話絵本では、もっと話は具体的且つ日本人向けになっていて、 私が幼き頃に読んだ本では数ページにわたる話になっていた上、セミはコオロギに変わっていました。 しかしながらロバが馬鹿な考えを起こして不幸に見舞われたという点に関しては変わっていませんでした。
 けれど私は幼心になんて悲しいお話なんだろうと思ったのです。 それを十数年経て後、ここに具現化してみました。
 どうでしょう。やはり、ロバは馬鹿なんでしょうか?
Ć
ae_0913.mp3
(931k)
謝東森,
2020年10月16日 下午4:19
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【朗読】イソップ童話「ろば と こおろぎ」.mp3
(1509k)
謝東森,
2020年10月16日 下午4:13
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