121-150 話

121-150 話
収録タイトル
121、ミツバチとジュピター。
122、乳搾りの娘と、ミルク桶。
123、海辺を歩いている旅人。
124、鍛冶屋と彼の犬。
125、驢馬の陰。
126、驢馬と飼い主。
127、樫の木と蘆たち。
128、漁夫と小魚。
129、狩人と樵。
130、猪と狐。
131、農場にいるライオン。
132、マーキュリーと彫刻家。
133、白鳥と鵞鳥。
134、腹の膨れた狐。
135、狐と樵。
136、鳥刺しと、鷓鴣と鶏。
137、猿と漁夫。
138、蚤と格闘家。
139、二匹の蛙。
140、猫と鼠たち。
141、ライオンと熊と狐。
142、牝ジカとライオン。
143、農夫と狐。
144、鴎とトンビ。
145、賢者と蟻たちと、マーキュリー。
146、鼠と牡牛。
147、ライオンと兎。
148、農夫と鷲。
149、マーキュリーのごシンゾウと大工。
150、牡牛と山羊。
タウンゼント版イソップ寓話集
hanama(ハナマタカシ) 訳



略記号:
Pe=ペリー版 Cha=シャンブリ版 H=ハルム版 Ph=パエドルス版 Ba=バブリオス版
Cax=キャクストン版 イソポ=天草版「イソポのハブラス」 伊曽保=仮名草子「伊曽保物語」
Hou(Joseph Jacobs?)=ヒューストン編  Charles=チャールス版 Laf=ラ・フォンテーヌ寓話
Kur=クルイロフ寓話 Panca=パンチャタントラ
J.index=日本昔話通観28昔話タイプ・インデックス TMI=トムスン・モチーフインデックス
<>=cf ( )=系統 Aesop=ペリー 1~273に属する寓話



121、ミツバチとジュピター。

 ある女王バチが、ジュピターに、ハチミツをプレゼントしようと、オリンポスへと昇って行った。
 ジュピターは、ハチミツを痛く気に入り、彼女の望むものなら何でも与えると約束した。
 そこで、彼女は、次のようなお願いをした。
「偉大なるジュピター様。私は、ミツを盗みにくる、人間を殺すために、針が欲しいのです。」
 ジュピターは、人間を愛していたので、その願いを大変不快に思ったが、約束は約束なので、彼女の望みを断ることができなかった。そこで、ジュピターは、彼女にこんなふうに応えた。
「おまえの望みは叶えてやる。だが、もし、おまえが、その針を使うならば、おまえ自身の命も危ういものになるだろう。おまえの刺した針は、傷口から抜けることはない。そして、その針を失うとき、おまえは死ぬ。」

教訓。人を呪わば穴二つ。

ペリー163 、シャンブリ234 、キャクストン6.12 、チャーリス108 、トムスンモチーフインデックスA2232.2 、この話の系統は、イソップの原典。


122、乳搾りの娘と、ミルク桶。

 ある農家の娘が、楽し気なことを空想しながら、ミルク桶を頭に乗せて運んでいた。
「このミルクを売ったお金で、少なくとも300個の卵が買えるわね。・・・そして、どんなに悪くても卵から200の雛が孵るわ。・・・そして、50羽は、親どりに成長するわよ。・・・ちょうどその頃は、とり肉が一番高値で取引される時期だわ。・・・すると、年の瀬までには、新しいドレスが買えるわよ。・・・そのドレスを着てクリスマスパーティーに出かけるのよ。・・・若い殿方は、みな私にプロポーズしてくるわ。・・・でもあたしは、つれなく頭をつんともたげて、皆の申し出を断るのよ。」
 と、彼女は夢中になって頭を揺らした瞬間、ミルク桶が地面に落ちてしまった。そして、彼女の壮大な計画は、一瞬にして費えてしまった。

捕らぬ狸の皮算用。

ジェイコブス76 、チャーリス106 、ラ・フォンテーヌ7.9、パンチャタントラ5.9、グリムKHM164、この話の系統は、パンチャタントラ。


123、海辺を歩いている旅人。

 海辺を歩いていた旅人たちが、高い岸壁に登り、海を見渡した。すると、彼方に大きな船が見えた。旅人たちは、船が入港するのを、ヒトメ見ようと、待つことにした。しかし、船が風に流され、岸に近づくに従い、それは、単なる小舟であることが分かった。それどころか、小舟が浜に漂着した時には、木の束となっていた。

教訓。希望的観測は、裏切られるものと、相場が決まっている。

ペリー177 、シャンブリ258、ラ・フォンテーヌ4.10 、トムスンモチーフインデックスK1886.4、この話の系統は、イソップの原典。


124、鍛冶屋と彼の犬。

 ある鍛冶屋が小犬を飼っていた。彼はその小犬を大変可愛がり、いつもそばにおいていた。小犬は、主人が仕事をしている間は寝ているが、主人が、食事を始めると目を覚まし、お相伴に預かろうと尻尾を振る。
 ある日の事、鍛冶屋は怒ったふりをして、小犬にステッキを振り上げながらこう言った。
「こら、怠け者のチビスケめ。 おまえときたら、わしが、カナトコに、ハンマーを、振り下ろしている間は、寝ておるくせに、わしが、食事を始めると、目を覚まし、餌をくれよとせがみよる。よいか、働かずには、何も得られぬのじゃぞ。働かざる者食うべからずという諺を知らぬのか。」

ペリー415 、シャンブリ345、トムスンモチーフインデックスW111.5.4 、この話の系統は、シュテンパス。


125、驢馬の陰。

 ある人が、遠くの町へ行くために、驢馬と馬方を雇った。その日は、太陽の日差しが強烈で、とても暑かった。旅人は、一休みしようと驢馬を止め、日差しから逃れるために、驢馬の影にもぐりこもうとした。しかしあいにく、陰は一人分のスペースしかなかった。
 すると馬方が言った。
「あんたに貸したのは、驢馬だけで、驢馬の陰は貸していない。」
 すると旅人が答えた。
「そんなことはない。驢馬と一緒に、驢馬の陰も借りたのだ。」
 口論はいつしか殴り合いの喧嘩へと発展した。と、その隙に、驢馬はどこかへ駆けていってしまった。

教訓。陰のことで争っているうちに、実体を失うことは、よくあることだ。

ペリー460、チャーリス113 、トムスンモチーフインデックスJ1169.7, K477.2、この話の系統は、プルタルコス「十大弁論家伝」848a。

注意。ペリー460、ペリー63、を参照のこと。


126、驢馬と飼い主。

 薬売りに飼われていた驢馬は、ほんの少しの食料で、大変こき使われていたので、今の仕事から解放され、別な主人に仕えたいと、ジュピターにお願いした。ジュピターは、「あとで悔やむなよ。」と警告して、驢馬が煉瓦職人のところへ売られて行くように、取り計らってやった。
 するとすぐに、驢馬は、そこでの仕事が以前よりも、重労働であることを、思い知らされた。そこで驢馬は、もう一度、ジュピターに、主人を変えてくれるようにとお願いした。ジュピターは、これが最後だと言って、驢馬が、革なめ職人の所へ、売られて行くようにしてやった。
 驢馬は、主人の職業を知ってこんなふうに嘆いた。
「前の主人に仕えて、ひもじい思いや、重労働をしていた方が、まだましだった。今度のご主人は、おいらが死んだ後にも、皮をはいで、こき使うつもりなんだから。」

ペリー179 、シャンブリ273 、ラ・フォンテーヌ6.11 、トムスンモチーフインデックスN255.2、この話の系統は、イソップの原典。


127、樫の木と蘆たち。

 とても大きな樫の木が、風になぎ倒され、川に投じられると、蘆の生えているところへと流されて行った。
 樫は、蘆にこんなことを言った。
「お前たちは、そんなに細くて弱いくせに、どうして、あんなに強い風を受けても、平気でいられるのだ?」
 すると、蘆たちがこんなふうに応えた。
「あなたは、風と戦おうとしたのですから、身を滅ぼすのも当然です。私たちは、ほんのそよ風にも頭を垂れます。だから、無事でいられるのです。」

教訓。負けるが勝ちよ。

ペリー70 、シャンブリ143、バブリオス36、アウィアヌス・16 、キャクストン4.20 、エソポ2.3 、ジェイコブス37 、チャーリス58 、ラ・フォンテーヌ1.22、クルイロフ1.2 、パンチャタントラ1.122, 3.19, 3.20, この話の系統は、バブリオス。


128、漁夫と小魚。

 ある漁夫が、海で網を投じていたのだが、一日かかって捕まえたのは、小魚一匹だけだった。
 小魚は、体をぴちぴち震わせながら、悲鳴を上げてこう言った。
「漁師さん。私はまだほんの小魚です。どうか海に帰して下さい。あなたの食材として見合うだけの大きさになったら、その時、改めて捕まえて下さい。」
 すると、漁夫はこう答えた。
「あやふやな希望をアテニシテ、手の中にある確実な利益を、放り出すとするならば、私は、とんでもない間抜けだろうよ。」

ペリー18 、シャンブリ26 、バブリオス6、アウィアヌス・20 、キャクストン7.16 、ジェイコブス53 、チャーリス52 、ラ・フォンテーヌ5.3 、トムスンモチーフインデックスJ321.2 、この話の系統は、イソップの原典。


129、狩人と樵。

 ある狩人が、ライオンの跡を追い掛けていた。彼は、森で樵に出合うと、「ライオンの足跡を、ミカケナカッタカ?」と訊ねた。
 すると樵はこう答えた。
「よし、今から、ライオンのところへ、連れていってやろう。」
 すると猟師は、真っ青になって、歯をがたがた震わせてこう答えた。
「いや、いいんだ。私の探しているのは、ライオンの足跡で、ライオンではない。」

教訓。口先だけでは勇者にはなれない。

ペリー326 、シャンブリ93、バブリオス92 、ラ・フォンテーヌ6.2 、トムスンモチーフインデックスW121.1、この話の系統は、バブリオス。


130、猪と狐。

 ある猪が、木の幹で牙を磨いていた。そこへ狐が通りかかり、「猟師や猟犬がいるわけでもないのに、なぜ、牙を磨いたりしているのか?」と、訊ねた。
 すると、猪はこんなふうに答えた。
「用心のためだよ。だって、いざ、この武器を、使う段になってから、研ごうとしても、手遅れだからね。」

ペリー224 、シャンブリ327、チャーリス119 、トムスンモチーフインデックスJ674.1 、この話の系統は、イソップの原典。


131、農場にいるライオン。

 ライオンが農場に入り込んだので、農夫は、そいつを捕まえようと門を閉ざした。ライオンは、逃げられないと分かると、羊たちに跳びかかり、そして、牡牛たちにも襲いかかった。
 農夫はこのままでは、自分もやられてしまうと思い、扉を開いた。ライオンが出て行くと、農夫は、羊や牡牛の無惨な死体を見て、嘆き悲しんだ。
 すると、一部始終を見ていた妻がこう言った。
「こうなったのも当然よ。だって、うなりごえを聞いただけで、震え出すあなたが、ヨリニヨッテ、自分の農場に、ライオンを閉じこめようなんて、よくそんなこと思いついたものね。呆れて物が言えないわ!」

ペリー144 、シャンブリ197、トムスンモチーフインデックスJ2172.2 、この話の系統は、イソップの原典。


132、マーキュリーと彫刻家。

 ある時、マーキュリーは、人間がどれくらい、自分を敬っているか、確かめてみようと思った。そこで、人間の姿に身をやつし、沢山の彫像が陳列してある彫刻家の工房を訪れた。
 まず彼は、ジュピターとジュノーのシンゾウの値段を尋ねてみた。そして次に、自分のシンゾウを指してこんなことを言った。
「こっちのシンゾウは、もっと高いんだろうね。 なんたって、こっちは神々の伝令であり、それに、富を司る神様なんだからね。」
 すると、彫刻家はこう答えた。
「分かりました。もし、あなたが、ジュピターとジュノーの両方を、お買い上げ下さるのなら、マーキュリーは、おまけします。」

ペリー88 、シャンブリ108 、トムスンモチーフインデックスL417 、この話の系統は、イソップの原典。


133、白鳥と鵞鳥。

 大変金持ちの男が、市場で鵞鳥と白鳥を買い、一匹は、食卓に供するために、もう一匹は、歌声を聞くために、餌を与えて飼っていた。そして、とうとう鵞鳥が殺される日が来た。
 夜、料理人が鵞鳥を捕まえに行った。しかし、暗かったので、鵞鳥と白鳥を見間違えて、取り違えてしまった。
 死の、恐怖が迫った時、白鳥は突然歌い出し、自分が何者であるかを知らせた。こうして白鳥は、自分の歌声で命拾いをした。

教訓。芸は身を助ける。

ペリー399 、シャンブリ173 、ラ・フォンテーヌ3.12 、トムスンモチーフインデックスN651、この話の系統は、アプトニウス。


134、腹の膨れた狐。

 腹をすかせた狐が、羊飼いが、樫の木の洞に忘れていった、パンと肉を見つけると、その穴に入って、たらふく食べた。しかし、すっかり食べてしまうと、腹がぱんぱんに膨れて、そこから抜け出せなくなっていた。
 狐がこの不運を嘆き悲しんでいると、その声を聞きつけて、仲間の狐がやってきた。そして、事の次第を知ってこう言った。
「まあ、そう嘆くなよ。入った時と同じ姿になれば、簡単に出られるさ。」

ペリー24 、シャンブリ30 、バブリオス86 、エソポ2.24 、ラ・フォンテーヌ3.17 、トムスンモチーフインデックスK1022.1 、この話の系統は、イソップの原典。


135、狐と樵。

 狐が猟犬に追われて、樵のところへやってきた。狐は樵に、身を隠す場所を乞うた。樵は、自分の小屋に隠れるようにと勧めた。そこで狐は、小屋の隅に身を潜めた。
 すぐに、猟師が猟犬と共にやって来た。そして樵に、狐をミカケナカッタカ? と尋ねた。樵は、見なかったと答えたが、応えている間ずうっと、狐の隠れている小屋をゆびさしていた。しかし、猟師は、その合図に気付かずに、樵の言葉だけを信じて、先を急いだ。
 猟師たちが遠くへ行ってしまうと、すぐに狐は出てきた。そして、樵に一瞥もくれずにそこから去って行こうとした。樵は、狐を呼び止めると、咎めだててこう言った。
「まったく、命を救ってもらったくせに、お礼の一つも言わずに出て行くとは、なんて恩知らずな奴なんだ。」
 すると狐がこう応えた。
「あなたの振る舞いが、あなたの言葉と同じだったら、いくらでもお礼を言うのですがね。」

ペリー22 、シャンブリ34、パエドルス6.28 、バブリオス50 、キャクストン4.3 、エソポ1.22 、イソホ2.38 、トムスンモチーフインデックスK2315、この話の系統は、イソップの原典。


136、鳥刺しと、鷓鴣と鶏。

 鳥刺しが、ハーブ料理を食べようとしていると、不意に友人がやって来た。しかし、鳥刺しは、鳥の一羽も捕まえておらず、鳥の罠は空だった。そこで、デコイとして飼い慣らしていた、まだらの鷓鴣を絞めなければならなくなった。
 鷓鴣は、どうにか命ばかりは助けてもらおうと、こんなふうに懇願した。
「次に網をはるときに、私がいなくとも平気なのですか。 結束の堅い鳥の群を呼び寄せているのは誰なのです。 あなたが寝るときに、子守歌を歌っているのは誰なのですか。」
 これを聞くと、鳥刺しは、鷓鴣を絞めるのを、ヤメニシタ。そこで今度は、鶏冠が生えたばかりの、若い元気な雄鶏を絞めることにした。すると、止まり木の雄鶏は、哀れな声でこんなふうに言った。
「私を殺してしまったら、誰が夜明けを知らせるのですか。 日々の仕事に、遅れないように、起こしたり、朝、鳥の罠を見回る時間を知らせているのは誰なのですか。」
 すると鳥刺しはこう応えた。
「おまえの言うことは正しい。 おまえは、時間を教えてくれるから大切な鳥だ。でも、友人と私は、夕食を食べなければならない。」

背に腹はかえられない。

ペリー361、バブリオス124 、トムスンモチーフインデックスU33、この話の系統は、バブリオス。


137、猿と漁夫。

 猿が、高い木の上に座って、漁夫たちが川に網を投じるのをじいっと観察していた。しばらくすると、漁夫たちは、食事のために、土手に網を残して帰って行った。
 ものまねやの猿は、木のてっぺんからおりて行き、漁師たちの真似をしようと、網をとって、川の中へ投じた。しかし網が体に絡みつき、猿は溺れてしまった。
 猿は、死に際に独りごちた。
「こんな目に遭うのも当たり前だ。網など扱ったこともナイモノガ、魚を捕らえようとするなんて、一体どういう了見だったのだろう。」

ペリー203 、シャンブリ304、クルイロフ1.14 、この話の系統は、イソップの原典。


138、蚤と格闘家。

 蚤は、格闘家の足にとりつくと、その足を、がぶりと咬んだ。格闘家は、たまらずに、ヘラクレスに、大声で、助けをもとめた。
 その後、蚤がまた男の足に、トリツイタトキノコト、格闘家は呻きながらこう言った。
「ヘラクレス様。 蚤を相手にさえ、あなたのご加護が得られないというのに、強い格闘家と、闘う時に、あなたのご加護をどうして期待できるでしょうか。」

ペリー231 、シャンブリ356、ラ・フォンテーヌ8.5 、この話の系統は、イソップの原典。


139、二匹の蛙。

 二匹の蛙が小さな池に棲んでいた。しかし、太陽の日差しで池は干上がってしまった。彼らは池を後にして、新天地を探しに出ていった。道を行くと、偶然に深い井戸に出くわした。見ると井戸は、満々と水を湛えている。
 そこで一方の蛙がこう言った。
「この井戸を我々の住処にしよう。ここなら、餌はあるし、身も、隠せそうだ。」
 すると、一方の蛙が、こんなふうに忠告した。
「でも、こんなに深くては、水がなくなったら、二度と、出られなくなるんじゃないのかい。」

教訓。結果を考えずに、事にあたってはならない。

ペリー43 、シャンブリ68 、トムスンモチーフインデックスJ752.1 、この話の系統は、イソップの原典。


140、猫と鼠たち。

 あるところに、鼠で溢れかえっている、家があった。ある猫がそれに気づき、その家に入って行くと、鼠を一匹、また一匹と捕まえては、食べていった。鼠たちは、食べられるのを恐れて、巣穴に閉じこもった。猫は鼠が全く捕れなくなってしまったので、策略を用いて、鼠たちをおびき出さなければならないと思った。そこで、彼女は、釘に跳びつき、そこにぶら下がって、死んだ振りをした。
 一匹の鼠がそおっと出てきて、彼女を見るとこう言った。
「たとえ、あなたが粉袋になったとしても、あなたのそばになど近寄るものですか。」

ペリー79、511 、シャンブリ13 ,パエドルス4.2, バブリオス17 、キャクストン6.8、4.2 、イソホ3.16 、ラ・フォンテーヌ3.18 、トムスンモチーフインデックスK2061.9 、この話の系統は、イソップの原典。

注意、タウンゼントの204は、ペリー511、パエドルス4.2。


141、ライオンと熊と狐。

 ライオンと熊が、同時に同じこ山羊を射止めた。すると両者は、今度は獲物を独占しようと、熾烈な戦いを繰り広げた。戦いの末、両者とも、ひどい傷を負い、ふらふらになり、倒れてしまった。
 この争いを、遠巻きに見ていた狐は、二匹がのびたのを、確認すると、両者の真ん中に、手つかずで横たわっている、こ山羊を奪うと、あらん限りの速さで跳ねて行った。
 ライオンと熊は起きあがることも出来ずに、こう呻いた。
「ああ、忌々しい。我々は、狐に獲物をくれてやるために、闘っていたのか。」

とんびに油揚げさらわれた。

ペリー147 、シャンブリ200 、エソポ2.10 、トムスンモチーフインデックスK348、この話の系統は、イソップの原典。


142、牝ジカとライオン。

 牝ジカが、猟師たちに激しく追い立てられて、ライオンの棲んでいる、洞穴へ逃げ込もうとした。ライオンは、鹿がやって来るのを見ると、身を隠し、彼女が洞穴に飛び込んだところを、襲いかかって、バラバラに引き裂いた。
 鹿は絶叫した。
「ああ、なんてこと。 人間から逃れようと、逃げ込んだ穴が、野獣の口だなんて。」

教訓。一つの悪を避ける時には、別な悪の手に落ちぬように注意せよ。

ペリー76 、シャンブリ104、トムスンモチーフインデックスN255.1 、この話の系統は、イソップの原典。


143、農夫と狐。

 農夫は、狐が鶏を盗むので大変憎んでいた。ある日のこと、農夫はついに狐を捕まえた。そして、徹底的に懲らしめてやろうと、縄を油に浸し、狐の尻尾に縛りつけて、火をつけた。突然の災難に、狐は、そこらじゅうを駆け回った。そして、ある畑へと入って行った。実はそこは、その農夫の畑だった。
 畑はその時期、小麦の収穫の季節であった。たわわに実った小麦は、景気よく燃え上がり、跡には何も残らなかった。
 農夫は悲嘆にくれて、家路についた。

教訓。腹を立てたにしても、無茶なことをしてはならぬ。

ペリー283 、シャンブリ58 、バブリオス11 、トムスンモチーフインデックスK2351.1.1、この話の系統は、バブリオス。


144、鴎とトンビ。

 大きな魚を、呑み込んだ鴎が、喉の奥ふかくを裂いて、浜辺で死んでいた。トンビがそれを見て、こう言った。
「お前が、こんな目に遭ったのも当然だ。そらとぶ鳥が、海で餌を獲ろうなんて、どだい無理なのさ。」

ペリー139 、シャンブリ193、この話の系統は、イソップの原典。


145、賢者と蟻たちと、マーキュリー。

 船が沈没し、乗客乗員全てが溺れ死ぬのを、岸から見ていたある賢者は、一人の罪人が、乗り合わせていたからといって、大勢の罪のない人々にも、死の審判をくだした、神の不条理を罵った。
 賢人は、しばらくこうして、憤りに心を奪われていたのだが、一匹の蟻が、彼の足に、這い上がって噛み付いた。彼は蟻の巣のすぐ近くに立っていたのだ。
 すると、賢者はすぐさま、蟻という蟻を、全て踏みつけて殺してしまった。すると、マーキュリーが現れて、杖で賢者を打ち据えながらこう言った。
「おまえに、神の審判を任せたら、この哀れな蟻どもに、したことと、同じ仕打ちをするのではないのか?」

ペリー306 、シャンブリ48、バブリオス117 、トムスンモチーフインデックスU21.3 、この話の系統は、バブリオス。


146、鼠と牡牛。

 鼠に噛まれた牡牛が、腹を立て、鼠を捕まえようとした。しかし鼠は、うまく自分の穴へ逃げ込んだ。牡牛は、ツノで穴をホリカエソウトシタガ、鼠を引きずり出す前に、疲れてしまい、穴の前に、しゃがみ込んで寝てしまった。
 鼠はそっと穴の外へと出てくると、牡牛に忍び寄り、そして、もう一度カミツイテ、穴の中へ逃げ込んだ。牡牛は跳ね起きたが、どうしてよいやら、わからずに、途方に暮れて、モーモー鳴いた。
 すると鼠がこう言った。
「大きければよいとは限らないのだ。 悪戯にかけちゃ、小さい方が、ずうっと有利なのだ。」

ペリー353、バブリオス112、アウィアヌス・31 、キャクストン7.23 、トムスンモチーフインデックスL315.2、この話の系統は、バブリオス。


147、ライオンと兎。

 ライオンは、偶然にも、ぐっすりと眠っている兎を見つけた。ライオンが、兎を捕まえようとしたその時、一匹の若い立派な牡ジカが駆けていった。ライオンは、兎をそのままにして、鹿の跡を追った。
 ライオンは長いこと、鹿を追いかけたが、結局捕まえることはできなかった。そこでライオンは、兎の許へと引き返した。しかし引き返してみると、すでに兎も居なくなっていた。ライオンは独りごちた。
「こんな目に遭うのも当然だ。もっとよい獲物を捕ろうと、手の内にあった獲物を投げ出してしまったのだからな。」

ペリー148 、シャンブリ204 、トムスンモチーフインデックスJ321.3 、この話の系統は、イソップの原典。


148、農夫と鷲。

 農夫は、罠にかかった鷲を見つけたのだが、鷲がとても立派だったので、逃がしてやることにした。すると、鷲は、恩知らずではないことを、農夫に証明してみせた。
 鷲は、農夫が危険な壁の下に座っているのを見ると、急降下して、彼の頭から、はちまきを奪い取った。農夫が追いかけると、鷲は、その、はちまきを落として返してやった。農夫が、はちまきを拾い上げて、もとの場所に戻ると、彼が寄りかかっていた壁は、崩れ落ちていた。
 農夫は鷲の恩返しに、大変心を打たれた。

ペリー296 、シャンブリ79 、トムスンモチーフインデックスB455.3, B521.2.1 、この話の系統は、バブリオス。


149、マーキュリーのごシンゾウと大工。

 とても貧しい大工が、マーキュリーのごシンゾウを持っていた。男は毎日、シンゾウにお供え物をして、自分を金持ちにしてくれるようにと祈った。しかし、彼の熱心な祈りにも関わらず、彼はどんどん貧しくなって行った。
 ある日のこと、大工はとうとうシンゾウに腹を立て、シンゾウを台座から引きずり下ろすと、壁に叩きつけた。すると、シンゾウの頭が割れ、さらさらと砂金が流れ出た。
 大工はそれを拾い集めながらこう言った。
「全く、あなたは、理不尽でひねくれ者です。私がお祈りしていた時には、御利益を、授けて、下さらなかったくせに、こうして、ひどいことをしたら、富をお与えになったのですからね。」

教訓、悪は拝むよりも殴った方がよい。

ペリー285 、シャンブリ61、バブリオス119 、キャクストン6.6 、イソホ3.15 、ジェイコブス41 、ラ・フォンテーヌ4.8 、トムスンモチーフインデックスJ1853.1.1、この話の系統は、バブリオス。


150、牡牛と山羊。

 ライオンに追われていた牡牛が、洞穴へと逃げ込んだ。するとそこには、牡山羊がいて、ツノを烈しく突き立ててきた。
 牡牛は静かに言った。
「好きなだけ、そうしていればいいさ。私は、お前などなんとも思わない。怖いのはライオンだけなのだ。あの化け物が行ってしまったら、山羊と牛では、どちらがつよいか思い知らせてやる」

教訓、友人の苦境につけ込むなど、もってのほかだ。

ペリー217 、シャンブリ332 、バブリオス91、アウィアヌス・13 、キャクストン7.10 、トムスンモチーフインデックスJ371.1 、この話の系統は、バブリオス。

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底本にしたのは、
Project Gutenberg aesop11.txt
Aesop's Fables Translated by George Fyler Townsend
訳に際して、意味の分かりにくい部分には筆を加えました。

主な参考文献:
イソップ寓話集 中務哲郎訳 岩波文庫
イソップ寓話集 山本光雄訳 岩波文庫
新訳イソップ寓話集 塚崎幹夫訳 中公文庫 
イソップ寓話集 伊藤正義訳 岩波ブックセンター 
叢書アレクサンドリア図書館10 イソップ風寓話集 パエドルス/バブリオス 岩谷智・西村賀子訳 国文社 
吉利支丹文学全集2(イソポのハブラス) 新村出 柊源一 平凡社 
古活字版 伊曽保物語 飯野純英校訂 小堀桂一郎解説 勉誠社 
寓話 ラ・フォンテーヌ 今野一雄訳 岩波文庫
寓話 ラ・フォンテーヌ 市原豊太訳 白水社
クルイロフ寓話集 内海周平訳 岩波文庫
アジアの民話12 パンチャタントラ 田中於莵弥・上村勝彦訳 大日本絵画
カリーラとディムナ 菊池淑子訳 平凡社
日本昔話通観 28 昔話タイプインデックス 稲田浩二 同朋舎
狐ラインケ 藤代幸一訳 法政大学出版局
知恵の教え ペトルス・アルフォンシ 西村正身訳 渓水社


著作権はhanamaにありますが、制限は致しませんので、ご自由にお使い下さい。
(誤字脱字がありましたらお教え下さい) aesopius@yahoo.co.jp
「イソップ」の世界http://aesopus.web.fc2.com/
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