151-180 話

151-180 話
収録タイトル
151、踊る猿。
152、狐と豹。
153、二匹のコザルと、ハハザル。
154、樫の木と、ジュピター。
155、兎と猟犬。
156、旅人と運命の女神。
157、禿の騎士。
158、羊飼いと犬。
159、ランプ。
160、ライオンと狐と驢馬。
161、牡牛と雌のライオンと、猪がりをする猟師。
162、樫の木と樵。
163、雌鶏と黄金の卵。
164、驢馬と蛙たち。
165、コガラスと、ワタリガラス。
166、木々と斧。
167、蟹と狐。
168、女将さんと雌鶏。
169、驢馬と年老いた羊飼い。
170、トンビと白鳥。
171、狼どもと、ボクヨウケンたち。
172、野兎と狐たち。
173、狩人とライオン。
174、駱駝。
175、雀蜂と蛇。
176、犬と兎。
177、牡牛と子牛。
178、鹿と狼と羊。
179、孔雀と鶴。
タウンゼント版イソップ寓話集
hanama(ハナマタカシ) 訳



略記号:
Pe=ペリー版 Cha=シャンブリ版 H=ハルム版 Ph=パエドルス版 Ba=バブリオス版
Cax=キャクストン版 イソポ=天草版「イソポのハブラス」 伊曽保=仮名草子「伊曽保物語」
Hou(Joseph Jacobs?)=ヒューストン編  Charles=チャールス版 Laf=ラ・フォンテーヌ寓話
Kur=クルイロフ寓話 Panca=パンチャタントラ
J.index=日本昔話通観28昔話タイプ・インデックス TMI=トムスン・モチーフインデックス
<>=cf ( )=系統 Aesop=ペリー 1~273に属する寓話



151、踊る猿。

 ある王様が、踊りを踊るように仕込んだ猿を、スウヒキ飼っていた。人のしぐさをとても上手に真似る猿たちは、利発な生徒のように、立派な洋服と、マスクに身を包み整列すると、家臣の誰よりも上手に踊った。そのショーはしばしば、大変な賞賛のもとに、再演された。 あるとき、一人の家臣が悪戯しようと、ポケットからナッツをひと掴み取り出すと、ステージに投げた。ナッツを見た猿たちは、自分たちの踊りを忘れ、芸人であることも忘れて、(本性むき出しの)猿へと戻ってしまった。彼らは、マスクを剥ぎ取り、ローブを引き裂くと、ナッツを巡ってお互いに争った。
 こうして、ダンスショーは、観衆の笑いと嘲笑につつまれて終わった。

ペリー463、トムスンモチーフインデックスJ1908、この話の系統は、ルキアノス。


152、狐と豹。

 狐と豹が、どちらが美しいかということについて、言い争っていた。豹は、自分の身を飾っている斑点が、一つ一つ、色彩豊かであることを、披露した。
 しかし、狐はそれを遮ってこう言った。
「私の方がどんなに美しいことか、私を飾っているのは、身体ではなく、精神なのですからね。」

ペリー12 、シャンブリ37 、アウィアヌス・40 、チャーリス71 、ラ・フォンテーヌ9.3 、トムスンモチーフインデックスJ242.3 、この話の系統は、イソップの原典。


153、二匹のコザルと、ハハザル。

 猿は、二匹の子どもを育てると、言われている。その二匹は、共に、自分がお腹を痛めて生んだ子なのだが、一匹は、最大限の愛情と、細心の注意を払い、胸に抱いて育てる。しかし一方は、憎悪して構おうとはしない。
 ある日のこと、胸に抱かれ、愛情を注がれていたコザルが、母親の過剰な愛情に押しつぶされて、窒息して死んでしまった、一方、蔑ろにされていたコザルは、ほったらかしにされたにも関わらず元気に育った。

教訓。細心の注意を払っても、思わぬ落とし穴が待っているものだ。

ペリー218 、シャンブリ307、バブリオス35、アウィアヌス・35 、キャクストン7.25 、イソホ3.26 、トムスンモチーフインデックスL146.1 、この話の系統は、バブリオス。


154、樫の木と、ジュピター。

 樫の木がジュピターに不満を申し立てた。
「私たちは、生まれてきた甲斐がありません。それは、いつも、斧の脅威に、晒され続けているからです。」
 すると、ジュピターがこう答えた。
「お前たちの災難は、自らが招いたものだ。もし、お前たちが良質な柱や、支柱を生み出さなかったならば、そして、その有用さを、大工たちに知らしめなかったならば、斧が、お前たちの根元に、据えられることもなかっただろう。」

ペリー302 、シャンブリ99、バブリオス142 この話の系統は、バブリオス。

注意、タウンゼント166を参照。


155、兎と猟犬。

 ある猟犬が、兎を巣穴から狩りだした。しかし長いこと追いかけたが、結局、追いつけなかった。それを見ていた山羊たちが、犬をあざ笑って言った。
「あんたより、チビスケの方が速いとはね。」
 すると、犬はこう言い返した。
「私は夕食の為に走っているだけだが、兎の方は、命をかけて走っているのだ。」

ペリー331、バブリオス69 、チャーリス85 、トムスンモチーフインデックスU242、この話の系統は、バブリオス。


156、旅人と運命の女神。

 長旅で疲れ果てていた旅人が、疲労のあまり、深い井戸のすぐそばに横になった。彼が水の中へ落ちようとした、まさにその時、運命の女神が現れ、こう言って彼を起こしたそうだ。
「さあ目覚めなさい。もしお前が井戸に落ちたら、私のせいにするに違いない。すると人々の間で、私の評判が下がってしまい、そうなったら、たとえ、自分たちの愚かさから起こったことであろうとも、その災難を皆、私に転嫁するに決まっているのです。」

教訓。自分の運命は、自分で決定しているものである。

ペリー174 、シャンブリ261 、バブリオス49 、ラ・フォンテーヌ5.11 、トムスンモチーフインデックスN111.4.1 、この話の系統は、イソップの原典。


157、禿の騎士。

 鬘をつけた禿の騎士が、狩りに出かけた。すると、一陣の風が吹き抜け、帽子と鬘を吹き飛ばした。それを見て、仲間がどっと笑った。
 彼は、馬を止めると、爆笑の渦に、こんな冗談で応えた。
「あれは私の髪の毛ではない、本当の持ち主の頭を見捨てた者たちが、私の頭から、飛んで行ったとて、何の不思議もあるまい。」

ペリー375 、シャンブリ343、 アウィアヌス10、この話の系統は、バブリオス。


158、羊飼いと犬。

 夕方、羊飼いは、囲いの中に羊を入れて、狼の害から守ろうとしていた。と、その時、犬が、羊の群に紛れ込もうとしている狼に気付いて、こう言った。
「ご主人様、狼を囲いの中に入れてしまったら、羊たちは皆、食われちまいますよ。」

ペリー365 、シャンブリ317、バブリオス113 、トムスンモチーフインデックスJ2172.2.1 、この話の系統は、バブリオス。


159、ランプ。

 しこたまオイルをくらって、酔っ払ったランプは、めらめらと明るく燃えながら、自分は太陽よりも、明るいと、自慢した。と、その時、一陣の風が巻き起こり、ランプは、パッと消えてしまった。
 するとランプの持ち主がこう言った。
「もう自慢などするんじゃないよ。今後は、黙って、光っておいで。星だって、消えたりしないのだからね。」

ペリー349 、シャンブリ232 、バブリオス114 、チャーリス126 、トムスンモチーフインデックスL475 、この話の系統は、バブリオス。


160、ライオンと狐と驢馬。

 ライオンと狐と驢馬が、互いに協力し合って、狩りをした。大いなる戦利品を、手にすると、ライオンは、驢馬に、協定に基づいて、森の報酬を3人に分配するようにと言った。
 驢馬は獲物を正確に三等分にすると、ほかの二匹が先に選ぶようにと謙虚に言った。ところが、ライオンが突然怒り出し、驢馬に跳びかかり、食ってしまった。そして今度は、狐に、獲物を分配するようにと言った。狐は、自分にほんの一口分だけ残し、そのほかは全てライオンに差し出した。
 するとライオンがこう言った。
「おお、素晴らしき我が友よ。一体誰が、そのような分配の仕方を教えてくれたのだ。 君の分けかたは申し分がない。」
 すると狐はこう応えた。
「このような分けかたを教えてくれたのは、驢馬さんの運命ですよ。」

教訓。他人の不幸からまなぶものは賢い。

ペリー149 、シャンブリ209 、トムスンモチーフインデックスJ811.1 狐ラインケ3.13、この話の系統は、イソップの原典。


161、牡牛と雌のライオンと、猪がりをする猟師。

 牡牛が、眠っているライオンの子を見つけて、つので突いて殺した。戻ってきた母親は、子供の痛ましい亡骸を見て、嘆き悲しんだ。すると、猪がりに来ていた猟師が、それを見て、少し離れた所からこう言った。
「考えてみなさいな。どれほどの人々が、子供を失って悲しんだことか。皆、あなたに殺されたんだよ。」

ペリー414、ラ・フォンテーヌ10.12 、トムスンモチーフインデックスU36 、カリーラとディムナ(ライオンと山犬)、鬼子母神この話の系統は、シュティンパス。


162、樫の木と樵。

 樵は、樫の木を切り倒すと、その枝で楔を作った。そして、幹に楔をあてがって、樫の木を易々と解体した。
 すると樫の木は、ため息混じりにこう言った。
「斧が、根元へ打ち下ろされるのは、我慢できる。しかし、自身の枝から作られた楔で、引き裂かれるのには泣けてくる。」

身から出た不幸は耐え難い。

ペリー303 、シャンブリ100 、バブリオス38 、トムスンモチーフインデックスU162 、この話の系統は、バブリオス。


163、雌鶏と黄金の卵。

 ある農家の夫婦が、黄金の卵を産む鶏を持っていた。二人は、鶏の腹の中には、大きな金塊があるに違いないと思い、腹を裂いてみた。しかし、腹の中には金塊などなかった。
 こうして、いっきょに、金持ちになろうとした夫婦は、毎日、保証されていた利益を、ふいにしてしまった。

ペリー87 、シャンブリ287、バブリオス123 、アウィアヌス・33 、キャクストン7.24 、イソホ3.25 、ジェイコブス57 、ラ・フォンテーヌ5.13、クルイロフ6.4 、トムスンモチーフインデックスD876 、この話の系統は、バブリオス。


164、驢馬と蛙たち。

 木材を運んでいた驢馬が、水たまりを渡っていると、足を取られて転んだ。驢馬は、重荷のせいで、起きあがることが出来ずに、烈しく嘶いた。
 すると、水たまりに集まっていた蛙たちが、驢馬の悲鳴を聞いてこう言った。
「水に倒れたくらいで、そんな大騒ぎをするなんて、もし、あんたが、我々のように、毎日ここに住まなければならなかったら、どんな騒ぎをするんだろうね。」

教訓。人が不幸に堪えられるのは、勇気があるからではない。大きな不幸を省みて、小さな不幸に安堵しているだけなのだ。

ペリー189 、シャンブリ271、チャーリス30 、トムスンモチーフインデックスJ2211.1 、この話の系統は、イソップの原典。


165、コガラスと、ワタリガラス。

 あるコガラスが、ワタリガラスを羨んだ。というのも、ワタリガラスは、ズイチョウと目されており、人々は、ワタリガラスを見て、吉凶を占うからだった。
 コガラスは、数人の旅人が、近づいてくるのを見て、木に飛んで行き、枝にとまると、あらん限りの声で、カァーと鳴いた。旅人たちは、何かの予兆かと、耳をそばだてた。
 その時、仲間の一人がこう言った。
「さあ、旅を続けよう。あれは、コガラスの鳴き声だ。ほら、あそこにいる。君たちも知っているだろう? あれには、予兆などない。」

教訓。自分に備わってもいない物を、あたかもあるように装うのは、滑稽なだけだ。

ペリー125 、シャンブリ170 、トムスンモチーフインデックスJ951.3 、この話の系統は、イソップの原典。

166、木々と斧。

 ある人が、森に入って、木々に、斧のえをくれないかと頼んだ。木々たちは、彼の願いを承知して、若いトネリコ木を与えた。男は新しいえを、斧に取り付けると、即座に、高い立派な木々に、斧を打ち下ろしていった。
 もう後の祭りであったが、古い樫の木は、仲間の木々が切り倒されるのを、嘆き悲しんで、隣のスギにこう言った。
「我々は、最初のボタンの掛け違いで、全てを失ってしまった。もし、トネリコを手放していなかったら、我々は未だ安泰であったろうし、末永く立っていられたろうに。」

ペリー302、シャンブリ99、バブリオス142、キャクストン3.14 、エソポ2.23 、ジェイコブス27 、チャーリス13、73 、ラ・フォンテーヌ12.16 、この話の系統は、パエドルス。
注意。タウンゼント154参照。


167、蟹と狐。

 ある蟹が、浜辺を見捨て、近くの緑の草原を、エサバに選んだ。そこへ、ハラペコの狐がやって来て、蟹を平らげた。蟹は、食われようとするその時に、こう言った。
「ああ、こうなったのも当然だ。一体私は、陸で何をするつもりだったのだ。私の本性は、海だけにしか適していないのに。」

教訓。自分の持っているもので満足できるということは、幸福なことである。

ペリー116 、シャンブリ150、チャーリス26 、トムスンモチーフインデックスJ5512.1 、この話の系統は、イソップの原典。


168、女将さんと雌鶏。

 ある女将さんが、毎日、卵を一つ産む雌鶏を持っていた。彼女は、一度に二つの卵を手に入れるには、どうすればよいかと、あれこれ考えた。そして、雌鶏に二倍の大麦を与えることにした。
 それ以来、雌鶏は太り、羽もつやつやした。しかし、雌鶏は一度に二つの卵を産むことはなかった。

ペリー58 、シャンブリ90 、チャーリス99、 日本昔話つうかん76、257 、トムスンモチーフインデックスJ1901.1 、この話の系統は、イソップの原典。


169、驢馬と年老いた羊飼い。

 羊飼いは、草原で、驢馬の番をしていたのだが、突然の敵の叫び声に、慄然とした。羊飼いは、驢馬に、捕まるといけないので、一緒に逃げようと言った。しかし驢馬は、めんどくさそうに、こう答えた。
「なぜ私が逃げなければならないのです。 敵が私を捕まえたら、倍の荷を担がせるのですか?」
「いや、そんなことはないと思うが。」
「それじゃあ、誰に仕えようが構いませんよ。荷物を運ぶのには、代わりがないのですからね。」

貧しい者は、政府が転覆しても、仕える主人が変わるだけで、ほかは、何も変わらない。

ペリー476 、パエドルス1.15 、ラ・フォンテーヌ6.8 、トムスンモチーフインデックスU151 、この話の系統は、パエドルス。


170、トンビと白鳥。

 昔、トンビたちは、白鳥と同じように、歌の才能に恵まれていた。しかし、馬のいななきを聞いて、すっかりその声に魅了されてしまい、その声を真似ようとした。そして、馬の真似ばかりしていたものだから、自分たちの歌を忘れてしまった。

教訓。何かを望むあまり、今持っている能力をも失うことがある。

ペリー396 、シャンブリ136 、バブリオス73 、トムスンモチーフインデックスJ512.2、この話の系統は、アプトニウス。


171、狼どもと、ボクヨウケンたち。

 狼たちが、ボクヨウケンたちに、こんなふうに話しかけた。
「君たちは、我々とそっくりなのに、どうして、気心を通わそうとしないのだ。 兄弟のように仲良く暮らすべきじゃないのかね。 君たちと我々の違いは一つだけだ。我々は自由に生き、君たちは、人間にへりくだって仕えている。その見返りと言えば、鞭で打たれて、首輪をはめられるという始末。それに、人間たちは、君たちに羊の番をさせているくせに、自分たちは羊の肉を食べ、君たちには骨を投げてやるのが関の山だ。どうだね、我々の話に嘘はないだろう。
 そこで相談なんだが、どうだろう、我々に羊を与えてくれないかい。 そして、一緒に、げっぷが出るまで、食い尽くそうじゃないか。」
 犬たちは、狼どもの話に、涎を垂らすと、狼の棲む洞穴へと、入って行った。そして、ばらばらに引き裂かれてしまった。

ペリー342 、シャンブリ216 、トムスンモチーフインデックスK815.3 、この話の系統は、バブリオス。

172、野兎と狐たち。

 野兎と鷲が戦争をした。そして、野兎たちは、狐に援軍を求めた。すると、狐たちはこう応えた。
「君たちが何者で、誰と闘っているのかを、知らなければ、喜んで助けに行くだろうがね。」

教訓、態度を明らかにする前に、あらゆる事情を思量せよ。

ペリー256 、シャンブリ190 H236 、チャーリス123 、トムスンモチーフインデックスJ682.1、この話の系統は、イソップの原典。


173、狩人とライオン。

 弓の名人が、獲物を求めて山へと入って行った。森の動物たちは、彼が近づくと、皆、逃げてしまうのだが、ただ、ライオンだけが、男に戦いを挑んだ。男は、すぐさま、一本の矢を打ち込むと、ライオンに言った。
「さあ、我が使者を送ったぞ、お前は、その使者から学んだことであろう。わたし自身が、お前を責めたら、どうなるかをな。」
 傷ついたライオンは、恐怖に駆られて、急いで逃げた。すると、事の次第をつぶさに見ていた狐がこう言った。
「あなたはとびきりの勇者なのですから、一度の攻撃ぐらいで、逃げたりしないで下さい。」
 するとライオンはこう答えた。
「お前の助言など聞く耳持たぬ。あ奴はあんなに恐ろしい使者を、送ってよこしたのだ。本人の攻撃に、堪えられるはずがない。」

教訓、離れた所から、攻撃する術を心得た敵には、用心せよ。

ペリー340 、シャンブリ338、バブリオス1、アウィアヌス17 、キャクストン7.13 、トムスンモチーフインデックスJ32 、この話の系統は、バブリオス。


174、駱駝。

 人が初めて駱駝を見た時、その余りの大きさに、肝を冷やし、逃げて行った。その後、その動物が、気性は穏やかで、従順であることに気付くと、彼は、勇気を奮い起こして、その生き物に近づいた。その後すぐに、その動物が全くの馬鹿であることに気付くと、彼は、その動物に轡をつけ、そして、ついには子供に引かせた。

教訓、恐怖を払拭するには、慣れるのが一番。

ペリー195 、シャンブリ148 、チャーリス56 、ラ・フォンテーヌ4.10 、トムスンモチーフインデックスU131.2 、この話の系統は、イソップの原典。


175、雀蜂と蛇。

 雀蜂が、蛇の頭にとまって、死ぬほど刺した。蛇は、激痛に苦しんだが、蜂を追い払うすべがなかった。そこへ、材木を満載した荷車が、やって来た。蛇は、自らその車輪に、頭を突っ込んでこう言った。
「どうせ死ぬなら、お前も道連れだ!」

ペリー216 、シャンブリ331、トムスンモチーフインデックスJ2102.2、この話の系統は、イソップの原典。


176、犬と兎。

 猟犬が、兎を追いかけていた。そしてすぐに追いつくと、一度は死ぬほどかみついた。しかし、次には、ほかの犬と、戯れるかのように、じゃれついた。
 すると、兎がこう言った。
「いいですか、もっと素直になって、本心を見つめて下さい。友達ならば、そんなに強く噛むのはおかしいし、敵ならば、じゃれついたりはしないでしょう。」

教訓、一体何を考えているか、分からないような人は、友達ではありません。

ペリー136 、シャンブリ182、バブリオス87 、チャーリス60 、トムスンモチーフインデックスK2031、この話の系統は、バブリオス。


177、牡牛と子牛。

 牡牛が、牛小屋に続く狭い通路を通り抜けようと、全身の力を振り絞って、体を割り込ませようとしていた。そこへ子牛がやって来て、先に行って、通りかたを教えて上げる。と、しゃしゃり出た。
 すると牡牛が答えた。
「それには及ばぬよ。そんなことは、お前さんの生まれる前から知っている。」

ペリー531 、パエドルス5.9 、チャーリス75 、この話の系統は、パエドルス。


178、鹿と狼と羊。

 鹿が羊に、狼を保証人に立てるから、小麦を貸してくれと頼んだ。
 すると羊はこう答えた。
「狼さんは、自分の欲しいものと見れば、襲いかかって、とんずらするのが、いつもの手だし、あなただって、足が速いので、私などあっという間に、置いてけぼり。支払いびになって、あなたがたを、どうやって、見つければよいのですか?」

悪人二人が力を合わせて、善いことなどするはずがない。

ペリー477 、パエドルス1.16 、キャクストン2.11 、トムスンモチーフインデックスJ1383 、この話の系統は、パエドルス。


179、孔雀と鶴。

 孔雀は鶴に出合うと、きらびやかな尾を広げてこう言った。
「私は王様のように、金色や、高貴な紫、そして虹の色を全て彩った衣裳を、身に着けています。それにひきかえ、あなたの羽ときたら、薄汚れた灰色だらけだ!」
 すると鶴がこう言い返した。
「確かに、その通りかもしれません。でも、私は、天高く、それこそ天国まで飛翔することができるのです。そして、星の彼方まで、声をとどろかせることができるのです。それにひきかえ、あなたときたら、あの、下劣な鶏のように、這いつくばって、いるだけではないですか。」

馬子にも衣装というけれど、いくら着飾っても馬子は馬子。

ペリー294 、シャンブリ333 、バブリオス65、アウィアヌス15 、キャクストン7.12 、イソホ3.20 、トムスンモチーフインデックスJ242.5、この話の系統は、バブリオス。


180、狐と針鼠。

 川を泳いで渡っていた狐が、急流にさらわれ、深い谷底へと押し流されてしまった。狐は傷ついてそこに横たわり、長いこと身動きできないでいた。すると、血の臭いを嗅ぎつけた、虻の大群がわんさか押し寄せ、狐に取り憑いた。
 そこへ、針鼠が通りかかった。針鼠は、狐の悲惨な姿を見ると、「その虻どもを、追い払ってやろうか?」と言った。すると狐はこう答えた。
「どうか、その者どもに、害を加えないでくれ。」
「どういうことなんだ? 君はこいつらを、取り除いてもらいたくないのか?」ハリ鼠が訝しげに聞き返した。
「もちろんだとも。」狐はそう答えると、こう続けた。「だってね、この虻どもは、血をたらふく食らっているから、もうほとんど刺さないが、君が、この満腹している奴らを、追い払ったりしたら、腹を空かせた奴らが、やって来て、残りの血まで全部吸われちまうよ。」

ペリー427 、ジェイコブス64 、ラ・フォンテーヌ12.13 、トムスンモチーフインデックスJ215.1 、この話の系統は、アリストテレス「弁論術」1393b22。

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底本にしたのは、
Project Gutenberg aesop11.txt
Aesop's Fables Translated by George Fyler Townsend
訳に際して、意味の分かりにくい部分には筆を加えました。

主な参考文献:
イソップ寓話集 中務哲郎訳 岩波文庫
イソップ寓話集 山本光雄訳 岩波文庫
新訳イソップ寓話集 塚崎幹夫訳 中公文庫 
イソップ寓話集 伊藤正義訳 岩波ブックセンター 
叢書アレクサンドリア図書館10 イソップ風寓話集 パエドルス/バブリオス 岩谷智・西村賀子訳 国文社 
吉利支丹文学全集2(イソポのハブラス) 新村出 柊源一 平凡社 
古活字版 伊曽保物語 飯野純英校訂 小堀桂一郎解説 勉誠社 
寓話 ラ・フォンテーヌ 今野一雄訳 岩波文庫
寓話 ラ・フォンテーヌ 市原豊太訳 白水社
クルイロフ寓話集 内海周平訳 岩波文庫
アジアの民話12 パンチャタントラ 田中於莵弥・上村勝彦訳 大日本絵画
カリーラとディムナ 菊池淑子訳 平凡社
日本昔話通観 28 昔話タイプインデックス 稲田浩二 同朋舎
狐ラインケ 藤代幸一訳 法政大学出版局
知恵の教え ペトルス・アルフォンシ 西村正身訳 渓水社


著作権はhanamaにありますが、制限は致しませんので、ご自由にお使い下さい。
(誤字脱字がありましたらお教え下さい) aesopius@yahoo.co.jp
「イソップ」の世界http://aesopus.web.fc2.com/
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