211-240 話

211-240 話
30編を収録。
211、鷹とナイチンゲール。
212、犬と鶏と狐。
213、狼と山羊。
214、ライオンと牡牛。
215、山羊と驢馬。
216、町の鼠と田舎の鼠。
217、狼と狐と猿。
218、アブと二輪戦車をひく驢馬。
219、漁師たち。
220、ライオンと三頭の牡牛。
221、鳥刺しと、蝮。
222、馬と驢馬。
223、狐とお面。
224、鵞鳥と鶴。
225、盲人と狼の子。
226、犬どもと狐。
227、医者になった靴屋。
228、狼と馬。
229、兄と妹。
230、雀蜂と山鶉と農夫。
231、烏とマーキュリー。
232、北風と太陽。
233、敵同士。
234、軍鶏と山鶉。
235、蛙のお医者様。
236、ライオンと狼と狐。
237、犬の家。
238、狼とライオン。
239、鳥と獣と蝙蝠。
240、放蕩ものと燕。
タウンゼント版イソップ寓話集
hanama(ハナマタカシ) 訳



略記号:
Pe=ペリー版 Cha=シャンブリ版 H=ハルム版 Ph=パエドルス版 Ba=バブリオス版
Cax=キャクストン版 イソポ=天草版「イソポのハブラス」 伊曽保=仮名草子「伊曽保物語」
Hou(Joseph Jacobs?)=ヒューストン編  Charles=チャールス版 Laf=ラ・フォンテーヌ寓話
Kur=クルイロフ寓話 Panca=パンチャタントラ
J.index=日本昔話通観28昔話タイプ・インデックス TMI=トムスン・モチーフインデックス
<>=cf ( )=系統 Aesop=ペリー 1~273に属する寓話



211、鷹とナイチンゲール。

 ナイチンゲールが、いつものように、高い樫の木の枝にとまって、歌を歌っていると、腹を空かせた鷹に襲われて、捕まってしまった。死の迫ったナイチンゲールは、自分は、鷹の空腹を満たすには小さすぎるので、どうか逃がしてくれるようにと懇願した。
 すると、鷹は、ナイチンゲールの言葉を遮ってこう言った。
「まだ見ぬ獲物を求めて、手の内にある獲物を逃がすなど、愚の骨頂だ。」

ペリー4 、シャンブリ8 、チャーリス19 、ラ・フォンテーヌ9.18 、トムスンモチーフインデックスJ321.1 、この話の系統は、イソップの原典。


212、犬と鶏と狐。

 犬と鶏が大の仲良しになって、一緒に旅に出ることにした。
 夕方になると、二匹は、太い木を宿に決め、鶏は枝に飛び乗り、犬は木の根元の洞を寝床にした。明け方、鶏がいつものように、大きな声で鳴いた。すると、狐がその声を聞きつけて、やって来た。そして内心を隠して、こんなことを言った。
「僕は、君のような、素晴らしい声の持ち主と、知り合いになりたかったんだよ。」
 鶏は狐の言葉を訝って、こう言った。
「それは光栄です。それでは、下に洞がありますから、そこへ行って、私の召使を起こして下さいませんか。そうすれば、彼が扉を開けて、あなたを中へ入れてくれますから。」
 狐は洞へと近づいて行った。すると、犬が跳びかかり、狐をズタズタに引き裂いた。

ペリー252 、シャンブリ180、エソポ2.9 、チャーリス35 、トムスンモチーフインデックスK579.8 、この話の系統は、イソップの原典。


213、狼と山羊。

 狼は、山羊が、険しい崖の上で、草を食べているのを見つけた。しかし狼は、そこへ行くことが出来なかったので、「そんな崖にいるのは危ないから、おりてくるように」と呼びかけた。そして更に、ここには、とても柔らかな牧草が生い茂っていると付け加えた。
 すると山羊はこう答えた。
「狼さん、ご遠慮申し上げます。あなたが私をご招待下さるのは、私を満腹にさせるためではなく、ご自分の腹を満たすためなのでしょう。」

ペリー157 、シャンブリ220、アウィアヌス・26 、キャクストン7.19 、チャーリス6 、トムスンモチーフインデックスK2061.4 、この話の系統は、イソップの原典。


214、ライオンと牡牛。

 ライオンは、牡牛が食いたくて仕方なかった。しかし、襲いかかって倒すには、牡牛は大きすぎた。そこで、ライオンは計略を巡らすことにした。
「やあ、牛くん。実は旨そうな羊が手に入ったのだけど、僕の家へ来て、味見をしてみないか? 君の来るのを楽しみに待っているから。」
 ライオンは、牡牛が御馳走につられて、隙ができたところを襲い掛かり、餌食にしてしまおうと思ったのだ。
 牡牛は、ライオンの家へとやって来た。しかし、巨大な串や鍋はあるのに、羊が見当たらない。そこで牡牛は、何も言わずにくるりと背を向けた。
 するとライオンは、自分に何か落ち度があるわけでもないのに、どうして、一言の挨拶もなしに、帰ってしまうのかと言った。
 すると牡牛はこう答えた。
「理由は、じゅうぶんすぎる程あります。羊が見あたらないと言うのに、料理の準備は万端で、あとは食材の、牡牛を待つばかり。」

ペリー143 、シャンブリ221 、バブリオス97 、この話の系統は、イソップの原典。


215、山羊と驢馬。

 昔ある男が、山羊と驢馬を飼っていた。山羊は、驢馬にたくさんの餌が、与えられるのを羨んで、こんなことを言った。
「ねえ驢馬くん、君は粉を挽いたり、重い荷物を運ばされたりと、本当に大変だね。」
 山羊は更にこう言った。
「気を失った振りをして、溝におっこち、休養でもしたらいいよ。」
 山羊の言葉を、まに受けた驢馬は、溝の中へ落ちて、ひどい怪我をしてしまった。飼い主は、医者を呼び、どうすればよいかと訊ねた。すると医者は、「山羊の肺を、傷口に塗るように」と言った。
 そこで飼い主は、山羊を殺して、驢馬を治療した。

ペリー279 、シャンブリ16、トムスンモチーフインデックスQ581、この話の系統は、バブリオス。


216、町の鼠と田舎の鼠。

 田舎の鼠が、御馳走を振る舞おうと、仲の良い、町の鼠を招待した。二匹は、土くれだった畑へ行き、麦の茎や、大根を引っこ抜いて食べていたのだが、町の鼠がこう言った。
「君の暮らしは、まるで蟻のようだ。それに引き換え僕の家は、豊饒で溢れているよ。あらゆる贅沢に、囲まれているんだよ。ねえ、僕のところへ来ないかい。そうすれば珍しいものが腹一杯食べられるよ。」
 田舎の鼠は、二つ返事で承知すると、友と連れだって町へと向かった。家に着くと、町の鼠は、パンに大麦、豆に乾燥イチジク、蜂蜜、レーズン、そして極めつけに、篭から上質のチーズを取り出して、田舎の鼠の前に置いた。
 めくるめく御馳走を前に、田舎の鼠は、心のこもった言葉で、お礼を述べた。そして、自分の暮らしが、如何に惨めであるかを嘆いた。
 しかし、彼らが御馳走を食べようとした、その時、何者かが扉を開けた。鼠たちは「チュー。」と鳴きながら、なんとか二匹が潜りこめる、狭い穴をみつけると、一目散に逃げ込んだ。
 彼らが再び、御馳走を前にすると、また、別な誰かが入って来た。腹が減ってたまらなくなった田舎の鼠は、ついに友達にこう言った。
「こんなに素晴らしい御馳走を、用意してもらったけど、これは、どうぞあなた一人でお召し上がり下さい。こんなに危険が多くては、とても楽しめません。私は、土くれだった畑で、大根でも食べている方が、合っているのです。あそこならば、安全で、怖いこともなく暮らせますからね。」

ペリー352 、シャンブリ243 、バブリオス108、キャクストン1.12 、エソポ1.6 、イソホ2.18 、ジェイコブス7 、チャーリス48 、ラ・フォンテーヌ1.9 、日本昔話つうかん566 、トムスンモチーフインデックスJ211.2 、この話の系統は、バブリオス。


217、狼と狐と猿。

 狼が狐を盗の罪で告訴した。しかし、狐は全く身に覚えがないと、その罪を否認した。そこで猿が、この訴訟を請け負うことになった。狼と狐が互いに自分の立場を主張すると、猿は次のような判決をくだした。
「狼くん、本官には、君が、何か取られたとは思えない。そして、狐くん、君がどんなに否定しようとも、それを盗んだに違いない。」

教訓、嘘つきは、たとえ本当のことを言っても信用されない。

ペリー474 、パエドルス1.10 、キャクストン2.18 、チャーリス120 、ラ・フォンテーヌ2.3 、トムスンモチーフインデックスB270 、この話の系統は、パエドルス。


218、アブと二輪戦車をひく驢馬。

 驢馬が二輪戦車をひいて走っていると、一匹のアブが車軸に止まってこう言った。
「なんて遅いんだ。どうしてもっと速く走らないんだ。僕の針で首を刺されたいのかい。」
 すると、驢馬はこう言った。
「僕は、お前など何とも思ってやしない。僕が言うことを聞くのは、鞭ふるって僕を速めたり、手綱で制御したりするかただよ。だから、下らぬことを言ってないで、とっとと、いっちまいな。速くしなければならぬ時も、遅くしなければならぬ時も、僕はよく心得ているのだからね。」

ペリー498 、ペリー724 、パエドルス3.6 、キャクストン2.16 、ラ・フォンテーヌ7.8、クルイロフ3.17、この話の系統は、パエドルス。


219、漁師たち。

 網をひきあげていた漁師たちは、それがとても重かったので、大漁だと思い、喜び勇んで踊りまわった。ところが、網を浜辺までひきあげてみると、魚はほとんどかかっておらず、砂や石だらけだった。猟師たちは思わぬことに、落胆して、意気消沈した。
 すると年老いた漁師がこう言った。
「おい、みんな、もう嘆くのは、やめにしよう。悲しみは喜びの、双子の姉妹なんだよ。あれだけ喜んだのだから、あとは悲しみを待つばかりだったのだよ。」

ペリー13 、シャンブリ23、エソポ2.26 、トムスンモチーフインデックスJ866.1 、この話の系統は、イソップの原典。


220、ライオンと三頭の牡牛。

 三頭の牡牛が、牧草地で仲良く暮らしていた。
 ライオンは、牡牛たちを餌食にしようと待ちかまえていたが、三頭一緒では、さすがのライオンも、二の足を踏んだ。そこで、ライオンは狡猾な言を労して、ついに三頭を引き離すことに成功した。ライオンは、牡牛が、一頭ずつばらばらに草を食べているところを、苦もなく襲いかかった。そして、自分の好きな時に、一頭ずつ食った。

教訓、団結は力なり。

ペリー372 、シャンブリ71 、バブリオス44、アウィアヌス・18 、キャクストン7.14 、ジェイコブス52 、トムスンモチーフインデックスJ1022、この話の系統は、バブリオス。


221、鳥刺しと、蝮。

 鳥刺しが、鳥もちと竿を持って、鳥を捕まえに出掛けた。彼は、鶫が木にとまっているのを見つけると、竿を適当な長さに調節して、じいっと見つめた。こうして、彼は木の上を見ていたので、すぐ足下で寝ていた蝮に気づかずに、踏みつけてしまった。蝮は向き直ると、彼に噛み付いた。
 彼は息絶えようとする時に、こう言った。
「ああ、なんてことだ。 獲物を捕ろうとして、自分がシニガミに捕まるとは。」

ペリー115 、シャンブリ137、日本昔話つうかん316 、トムスンモチーフインデックスN335.1 、この話の系統は、イソップの原典。


222、馬と驢馬。

 自分の素敵な馬具を鼻にかけていた馬が、馬車みちで、驢馬に出合った。驢馬は重荷を積んでいたので、よけるのがのろかった。
 すると馬がこう言った。
「本当なら貴様を、蹴飛ばしてやるところだがな。」
 驢馬は黙したまま、神の公正な審判が下されることを、只々祈った。
 それからすぐに、馬は肺を患い、農場へと送られた。そして、肥桶を引かされることになった。
 驢馬はその姿を見て、こんなふうに嘲った。
「ああ、これはこれは、いつぞやの、高慢チキ様ではありませんか。あのときの派手な衣装は、どうなさいました。それにしても、侮蔑されるほどに身を落とすとは。」

ペリー565 、キャクストン3.3 、エソポ1.18 、イソホ2.32 、チャーリス63 、トムスンモチーフインデックスL452.1 、この話の系統は、パエドルス。


223、狐とお面。

 狐が役者の家へ入り込んで、役者の持ち物を片っ端から、ひっかき回していると、人間の顔を見事に模造したお面があった。狐はそのお面を手に取るとこう言った。
「なんて素晴らしい顔なんだろう。でも、これには何の価値もない。だって、脳味噌が入ってないのだからね。」

ペリー27 、シャンブリ43 、パエドルス1.7 、キャクストン2.14 、ジェイコブス20 、ラ・フォンテーヌ4.14 、トムスンモチーフインデックスJ1793 、この話の系統は、イソップの原典。


224、鵞鳥と鶴。

 鵞鳥と鶴たちが、同じ草原で、餌をついばんでいた。すると、人間が、鳥たちを、網で捕まえようとやってきた。鶴たちは人間が近づいてくると、素早く飛んで逃げたが、鵞鳥は飛ぶのがのろく、体も重かったので、捕らえられてしまった。

教訓、危険が迫った時、貧乏人は身軽に逃げられるが、金持ちは逃げ遅れて身を滅ぼす。

ペリー228 、シャンブリ353 、トムスンモチーフインデックスJ689 、この話の系統は、イソップの原典。


225、盲人と狼の子。

 その盲人は、動物を手で触れただけで、見分けることができた。ある時、狼の子が手渡され、それが何か答えるようにと言われた。
 彼は、それに触れると、首を傾げながらこう言った。
「狐の子か、狼の子かは断定できないが。まあ、確実なことは、これを、羊の群に入れるのは、よくないということだね。」

教訓、悪い性分は、小さな頃から顕れる。

ペリー37 、シャンブリ54 、チャーリス121 、トムスンモチーフインデックスJ33 、この話の系統は、イソップの原典。


226、犬どもと狐。

 幾匹かの犬が、ライオンの皮を見つけて、チリヂリに裂いていた。狐がそれを見てこう言った。
「彼が生きていたなら、お前たちの歯なぞより、彼の爪の方が強いということを、瞬時に、思い知らされるだろうがな。」

教訓、倒れている者を蹴飛ばすのはたやすい。

ペリー406 、トムスンモチーフインデックスW121.24 、この話の系統は、Syntipas。


227、医者になった靴屋。

 仕事がうまくゆかずに、暮らしが、立ち行かなくなった靴屋が、貧乏に窮して、知らない町で医者を始めた。そして、「あらゆる毒に有効な解毒剤だ」と称して薬を売った。長広舌と巧みな宣伝のために、彼は有名になった。
 ある時、この靴屋が重い病気に罹り、これを不審に思った町の長が、彼の腕を試してみようと、彼を呼び出し、彼の作った解毒剤に、毒を混ぜるふりをした。そして、褒美をやるから、それを飲み干すようにと命じた。
 靴屋は、死ぬのを恐れて、自分は本当は薬の知識など持ち合わせておらず、蒙昧な民衆の評判で、有名になったに過ぎないことを白状した。すると町の長は、会議を召集して、市民にこんなことを言った。
「君たちは、なんと馬鹿な過ちを犯していたことか。足に履く靴さえも注文しなかった男に、命を委ねたのだからな。」

ペリー475 、パエドルス1.14 、トムスンモチーフインデックスK1955.7 、この話の系統は、パエドルス。


228、狼と馬。

 麦畑をうろついていた狼が、畑から出て来ると、馬に出合った。そこで、狼はこんなことを言った。
「いいことを教えて上げるよ、畑の中へ行ってごらん、美味そうなオート麦がどっさりあるよ。僕は手を着けずに君のために残しておいたんだよ。だって、君は僕の友達だろう。僕は友達が、食べ物を歯で噛み砕いている音を聞くのが大好きなんだよ。」
 すると、馬はこう答えた。
「もし、狼の餌がオート麦だったなら、胃袋を満たさずに耳で我慢するなんてことは、なかっただろうよ。」

教訓、悪評のある人は、善行をしても、悪評のために信用されない。

ペリー154 、シャンブリ225、この話の系統は、イソップの原典。


229、兄と妹。

 その男には、息子と娘の、二人の子供がいた。息子の方は、みめ麗しかったが、娘の方はこの上なく醜かった。ある日のこと、二人がままごと遊びをしていると、母親の椅子の上にあった、鏡を見つけ、それを二人して覗いてみた。男の子は、自分が美しいので喜んだが、女の子は、兄の自慢が我慢ならず、また、兄が、自分の姿を、とやかく言うのも、我慢ならなかった。
 彼女は父親の所へ駆けて行くと、兄にひどい仕打ちを受けたと言い募り、男のくせに、美しさを自慢するなんて、女の子のようだと、口を極めて責め立てた。
 父親は、二人を抱き寄せると、同じ愛情でもって、二人にキスをしてこう言った。
「お父さんはお前たち二人に、毎日、鏡を覗いてもらいたいね。息子よ。お前は、悪い行いで、その美しさが損なわれないようにしなさい。娘よ、お前は自分の美徳で、外面を補うようにしなさい。」

ペリー449 、パエドルス3.8 、トムスンモチーフインデックスJ244.1、この話の系統は、パエドルス。


230、雀蜂と山鶉と農夫。

 喉の渇いた雀蜂と山鶉が、農夫のところへやって来て、お礼をするから水をもらいたいと懇願した。鶉たちは、葡萄の木の周りを掘り返して、葡萄を見事に実らせると言い、蜂たちは、見張をして、泥棒たちを針で追い払うと言った。
 しかし農夫は、それらを遮ってこう言った。
「俺は二頭の牡牛を持っている。しかし、奴らは、約束などせずに、仕事をやってくれる。お前たちに水をやるならば、牛たちに水をやる方が、よいに決まっている。」

ペリー215 、シャンブリ330、この話の系統は、イソップの原典。


231、烏とマーキュリー。

 罠に掛かった烏が、アポロンに、祭壇に香をお供えするので、どうか逃がしてくれるようにとお祈りした。こうして烏はこの危機から救われたのだが、お供えの約束は忘れてしまった。それからすぐ、またもや、烏は罠に掛かってしまった。烏は今度は、アポロンを差し置いて、マーキュリーにお祈りした。
 すると、マーキュリーはすぐさま現れそしてこう言った。
「これ、卑しい者よ。お前は、以前の主人を裏切って、縁を切った。そんな者を、わしがどうして、信じようか。」

ペリー323 、シャンブリ166、この話の系統は、バブリオス。


232、北風と太陽。

 北風と太陽が、どちらがつよいか、言い争った。そこで、旅人の服を早く脱がすことができた者を勝者とすることにした。
 まず北風が、あらん限りの力で、風を吹きつけた。しかし、激しい突風のために、旅人はよけいマントを体にぴったりと巻き付けた。とうとう、北風は諦めた。
 次に、太陽がやってみることにした。太陽は、俄に輝きだした。旅人はこのぽかぽかの日差しを感じると、一枚一枚服を脱ぎ、とうとう、暑さに耐えかねて、裸になった。

教訓、権力者の争いに巻き込まれた民衆は、結局、身ぐるみはがされてしまうのである。

ペリー46 、シャンブリ73 、バブリオス18、アウィアヌス・4 、ジェイコブス60 、チャーリス64 、ラ・フォンテーヌ6.3 、トムスンモチーフインデックスL351 、この話の系統は、イソップの原典。

注意、勿論このような教訓であるはずがない。


233、敵同士。

 互いに、死を決するほどの敵と思っている二人の男が、同じ船に乗り合わせた。出来うる限り離れていようと、一人は船尾に、一人は船首にそれぞれ陣取った。すると、激しい嵐が吹き荒れて、船には沈没の危機が迫った。船尾の男が、船員に、船尾と船首のどちらが先に沈むかと尋ねた。
船員の答えは、「船首が先だろう」とのことだった。
 すると男はこう言った。
「そうか、それなら死も苦痛ではない。敵の死を見てから、死ねるのだからな。」

ペリー68 、シャンブリ114、この話の系統は、イソップの原典。


234、軍鶏と山鶉。

 その男は、二匹の軍鶏を飼っていた。ある日のこと、男は、飼い慣らされた山鶉が、売りに出されているのを見つけ、それを買った。
 山鶉が鳥小屋に入れられると、二匹の軍鶏は、彼を蹴飛ばし、しつこく追い回した。山鶉は、自分がよそ者だから、こんなひどい仕打ちを受けるのだと思い、陰鬱に沈んだ。
 しかしその後すぐ、軍鶏たちが共に戦い、片方が一方を打ちのめすまで、執拗に追いかけるのを見て、山鶉は独りつぶやいた。
「もう、彼らにぶたれても、悲しむことはない。だって、彼らは仲間同士でも、喧嘩せずにはいられないのだから。」

ペリー23 、シャンブリ21 、ラ・フォンテーヌ10.7 、トムスンモチーフインデックスJ1025 、この話の系統は、イソップの原典。


235、蛙のお医者様。

 昔々の話だが、沼の家から出てきた蛙、動物みんなに言ったとさ。
 我こそは偉い医者なるぞ。あらゆる薬に通じたれば、どんな病気も治して見せよう。
 それを聞いた狐が言うには、「人に薬を出す前に、お前自身のチンバを治せ、皮もシワシワしているぞ。」

ペリー289 、シャンブリ69 、バブリオス120、アウィアヌス・6 、キャクストン7.05 、チャーリス116 J1062.1、この話の系統は、バブリオス。


236、ライオンと狼と狐。

 年老いたライオンが、病気になって、巣穴で横たわっていた。動物たちはみな、王であるライオンを見舞ったが、狐だけは見舞いにこなかった。すると狼は、願ってもない機会とばかりに、「狐の奴は、支配者であらせられるあなた様を蔑ろにして、見舞いにも、やってきません。」と讒言した。と、まさにその時、狐がやって来て、その言葉を耳にした。
ライオンは、狐に腹を立て、うなりごえを轟かせた。狐はなんとか身を守ろうと、機会を窺ってこう言った。
「あなたをお見舞いした者たちの中に、私のように役立つ者はいたでしょうか。 実は私は、あなたを治す手だてを教えてもらおうと、あらゆる地方をくまなく旅して探し回ったのです。」
 ライオンはすぐに、その治療法を教えるようにと命じた。そこで狐はこう答えた。
「活きのよい、狼の毛皮を剥いで、その皮で身をくるんで暖めるのです。」
 狼は、すぐに捕まえられて皮を剥がれた。そこで狐は、狼に向かってにこやかに言った。
「主人を、悪ではなく、善きほうに導くが肝要である。」

ペリー258、585、シャンブリ205、キャクストン5.9 、エソポ1.24 、イソホ3.6 、ラ・フォンテーヌ8.3 、キツネライネケ3.12、トムスンモチーフインデックスK961 、この話の系統は、イソップの原典。


237、犬の家。

 冬のこと、犬は、寒さのために、できるだけ体を小さく縮めて丸くなると、家を作ろうと決意した。ところが、夏がやってきて、体をめいいっぱい伸ばして横になって寝ると、犬は自分がとても大きくなったように思われた。そして、自分に合う家を作るのは、容易なことではないし、必要もないと考えた。

ペリー449、トムスンモチーフインデックスJ2171.2.1、 (プルタルコス「七賢人の饗宴」157b)


238、狼とライオン。

 夕暮れどきに、山の麓を徘徊していた狼は、とても長く、大きくなった自分の影を見て、こうつぶやいた。
「俺様は巨大だ! 1エーカー近くはあるぞ。ライオンなどものの数ではない。俺様こそが、百獣の王として、君臨すべきではないのか?」
 狼が、このように高慢な思いに浸っていると、ライオンが狼に襲い掛かった。
 狼は、こう叫んだのだが後の祭りだった。
「ああ、惨めだ。うぬぼれで、身を滅ぼすとは。」

ペリー260 、シャンブリ219 、トムスンモチーフインデックスJ411.5 、この話の系統は、イソップの原典。


239、鳥と獣と蝙蝠。

 鳥と獣たちが戦争をしていたのだが、両陣営は、ともに、勝ち負けを繰り返していた。蝙蝠は、先の見えない戦いに不安を感じ、いつも、優勢な陣営について、戦った。しかし、平和の宣言がなされた時、蝙蝠の卑怯な行状が、両軍に知れ渡ることとなった。その裏切り行為は、両陣営から糾弾され、蝙蝠は、白日のもとから追放されてしまった。
 それからというもの、蝙蝠は、暗い隠れ家に身を隠し、夜、独りっきりで飛ぶようになった。

ペリー566 、キャクストン3.4 、エソポ1.19 、イソホ2.33 、ジェイコブス24 、チャーリス46 、日本昔話つうかん484 、トムスンモチーフインデックスB261.1 、この話の系統は、パエドルス。


240、放蕩ものと燕。

 放蕩の限りを尽くした若者は、全財産を使い果たし、残っているものといえば、上等なマント、一着きりという有様だった。
 ある日のこと、彼はたまたま、燕を見掛けた。実はまだ季節前に燕はやってきたのだが、池を掠めて飛んで、陽気に囀った。若者は、夏が来たのだと思い、マントを売ってしまった。
 それから幾日もたたないうちに、寒が戻り、辺り一面霜で被われた。彼は、燕が地面に落ちて死んでいるのを見つけて、こう言った。
「不幸な鳥よ。 お前はなんてことをしてくれたんだ。春が来る前におまえが現れたせいで、おまえばかりではなく、私をも破滅させるのだ。」

ペリー169 、シャンブリ248、バブリオス131 、チャーリス122、クルイロフ7.4 、トムスンモチーフインデックスJ731.1 、この話の系統は、イソップの原典。

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底本にしたのは、
Project Gutenberg aesop11.txt
Aesop's Fables Translated by George Fyler Townsend
訳に際して、意味の分かりにくい部分には筆を加えました。

主な参考文献:
イソップ寓話集 中務哲郎訳 岩波文庫
イソップ寓話集 山本光雄訳 岩波文庫
新訳イソップ寓話集 塚崎幹夫訳 中公文庫 
イソップ寓話集 伊藤正義訳 岩波ブックセンター 
叢書アレクサンドリア図書館10 イソップ風寓話集 パエドルス/バブリオス 岩谷智・西村賀子訳 国文社 
吉利支丹文学全集2(イソポのハブラス) 新村出 柊源一 平凡社 
古活字版 伊曽保物語 飯野純英校訂 小堀桂一郎解説 勉誠社 
寓話 ラ・フォンテーヌ 今野一雄訳 岩波文庫
寓話 ラ・フォンテーヌ 市原豊太訳 白水社
クルイロフ寓話集 内海周平訳 岩波文庫
アジアの民話12 パンチャタントラ 田中於莵弥・上村勝彦訳 大日本絵画
カリーラとディムナ 菊池淑子訳 平凡社
日本昔話通観 28 昔話タイプインデックス 稲田浩二 同朋舎
狐ラインケ 藤代幸一訳 法政大学出版局
知恵の教え ペトルス・アルフォンシ 西村正身訳 渓水社


著作権はhanamaにありますが、制限は致しませんので、ご自由にお使い下さい。
(誤字脱字がありましたらお教え下さい) aesopius@yahoo.co.jp
「イソップ」の世界http://aesopus.web.fc2.com/
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