241-270 話

241-270 話
収録タイトル
241、狐とライオン。
242、フクロウと鳥たち。
243、捕らえられたラッパ兵。
244、ライオンの皮をかぶった驢馬。
245、雀と兎。
246、ノミと牡牛。
247、善い者と悪い者たち。
248、鳩と烏。
249、マーキュリーと樵。
250、鷲と烏。
251、狐と鶴。
252、ジュピターとネプチューンとミネルヴァとモーモス。
253、鷲と狐。
254、人とサテュロ。
255、驢馬と買い手。
256、二つの袋。
257、泉の鹿。
258、烏と狐。
259、父親を埋葬するヒバリ。
260、蚊と牡牛。
261、母犬とその子。
262、犬と皮。
263、羊飼いと羊。
264、セミとフクロウ。
265、猿とラクダ。
266、農夫とリンゴの木。
267、二人の兵士と泥棒。
268、ご神木。
269、母親と狼。
270、驢馬と馬。
タウンゼント版イソップ寓話集
hanama(ハナマタカシ) 訳



略記号:
Pe=ペリー版 Cha=シャンブリ版 H=ハルム版 Ph=パエドルス版 Ba=バブリオス版
Cax=キャクストン版 イソポ=天草版「イソポのハブラス」 伊曽保=仮名草子「伊曽保物語」
Hou(Joseph Jacobs?)=ヒューストン編  Charles=チャールス版 Laf=ラ・フォンテーヌ寓話
Kur=クルイロフ寓話 Panca=パンチャタントラ
J.index=日本昔話通観28昔話タイプ・インデックス TMI=トムスン・モチーフインデックス
<>=cf ( )=系統 Aesop=ペリー 1~273に属する寓話



241、狐とライオン。

 狐は、檻に閉じこめられているライオンを見て、近くへ行くと、口を極めて罵った。するとライオンは狐にこう言った。
「俺を罵っているのは、お前ではない。俺に降りかかった災難が、お前に言わせておるのだ。」

ペリー409 、トムスンモチーフインデックスW121.2.2 、この話の系統は、Syntipas。


242、フクロウと鳥たち。

 物知りのフクロウは、ドングリが芽生えると、これが大きくなる前に、全部地面から引き抜くようにと、鳥たちに忠告した。なぜなら、ドングリが成長すると、やがてヤドリギを寄生させ、そのヤドリギからは、災厄をもたらす薬、トリモチが抽出され、それで皆捕まえられてしまうと言うのだった。
 次にフクロウは、人間がまいた麻の種は、鳥たちに、災いをもたらす、予兆となる植物なので、取り除くようにと忠告した。
 そして、最後に、狩人がやって来るのを見て、この人間は歩いているが、彼は、我々よりも速く飛ぶことのできる、矢を射ようとしているのだ。と予言した。ところが、鳥たちは、フクロウの予言を信用せず、それどころか、彼女のことを、心配症の気鬱だと罵った。
 しかしその後、鳥たちは彼女の言葉が正しかったことを思い知った。鳥たちは、彼女の知識に驚嘆した。
 その後、彼女が現れると、鳥たちは、あらゆることを知っている、彼女の知恵にあやかろうと、集まってくるのだが、彼女はもはや忠告を与えず、かつての鳥たちの愚鈍な行いを、一人嘆くだけだった。

ペリー437、39、シャンブリ349、キャクストン1.2、エソポ1.11、イソホ2.24、ジェイコブス12、チャーリス41、ラ・フォンテーヌ1.8 、トムスンモチーフインデックスJ621.1 、ディオン・クリュソストモス「弁論」12.7。


243、捕らえられたラッパ兵。

 勇ましく兵士たちを先導していたラッパ兵が、敵に捕まってしまった。彼は、捕縛者にこう叫んだ。
「俺は、あんたたちを、誰一人殺していない。俺は武器を、なに一つ持っていないのだ。俺が持っているのは、真鍮のトランペット、ただ一つなんだよ。」
 すると、敵の兵隊たちはこう言った。
「それが、お前の処刑される理由だ、お前は自分では戦わぬが、ラッパで、兵士たちを鼓舞するのだからな。」

ペリー370 、シャンブリ325、アウィアヌス・39 、エソポ2.7 、ジェイコブス79 、トムスンモチーフインデックスJ1465 、この話の系統は、バブリオス。


244、ライオンの皮をかぶった驢馬。

 驢馬がライオンの皮をかぶって、森を歩き回った。道すがら、出合う動物たちが、慌てふためくのを見て、驢馬は、すっかり気をよくした。
 そうこうしているうちに、狐に出会った。驢馬は、狐もおどかしてやろうと思った。
しかし、狐は、驢馬の声を聞くが早いか、こう言った。
「もし、君の声を聞かなかったなら、僕も、恐れおののいたかもしれないけどね。」

ペリー188、358 、シャンブリ267、279、バブリオス139、アウィアヌス・5、キャクストン7.4 、エソポ2.12 、ジェイコブス49 、チャーリス16 、パンチャタントラ4.5 、トムスンモチーフインデックスJ951.1 、この話の系統は、イソップの原典。


245、雀と兎。

 鷲に捕まえられた兎が、子供のようにむせび泣いた。雀がそれを見ると、揶揄してこう言った。
「君のその素早い足はどうしたの? 君はどうしてそんなにのろまなんだ。」
 雀がこのように罵声を浴びせかけていると、突然鷹が、雀をひっつかみ、彼を殺してしまった。
 兎は心安らかに死に臨みこう言った。
「お前さんは、自分が安全だと思って、私の災難を喜んでいたのだろうが、早早に、同じ不幸を嘆く羽目になろうとはね。」

ペリー473 、パエドルス1.9 、ラ・フォンテーヌ5.17 、トムスンモチーフインデックスJ885.1、この話の系統は、パエドルス。


246、ノミと牡牛。

 ノミが牡牛に尋ねた。
「あんたは、そんなに大きくて強いのに、人間たちのひどい扱いにも反抗せず、来る日も来る日も、彼らのために働くのは、何故ですか? 私などは、こんなに小さいのに、人間たちの肉をかじり、そして思う存分、血を吸うんですよ。」
 すると牡牛はこう答えた。
「人間たちは、私を愛してくれているし、よく世話してくれるんだよ。彼らはね、しょっちゅう、頭や肩をトントン、叩いてくれるんだよ。」
 するとノミが言った。
「なんてこった。 あんたの好きな、トントンで、私は、間違いなく、あの世行きだよ。」

ペリー273 、シャンブリ358 、トムスンモチーフインデックスU142 、この話の系統は、イソップの原典。


247、善い者と悪い者たち。

 昔、善い者たちと悪い者たちは、共に、人間の面倒をみていたのだが、或日、悪い者たちによって、善い者たちは追い出された。というのも、地上では悪い者たちの数が、まさっていたからである。
 善い者たちは、天国へと昇って行くと、自分たちを迫害した者たちに対し、公正な処置がとられるようにとジュピターにお願いした。彼らの主張はこうだ。自分たちは、悪い者たちと共通点が全くないので、一緒に暮らすことは出来ない、それどころか、悪い者たちの間では、争いが絶えないので、もう彼らと関わるのさえ嫌だと言うのだ。そして、絶対的な法により、自分たちを永遠にお救い下さいと訴えた。
 ジュピターは、彼らの訴えを聞き入れて、これからは悪い者たちは、集団で地上へ行き、善い者たちは、一人一人ばらばらに、人間の住まいへ入るようにと定めた。
 それ故、悪い者が大勢いるのは、彼らが集団でやって来て、決して一人一人ばらばらにはやってこないからである。一方、善い者たちは、一人一人やって来て、決して集団で来ることはない。そして、善良な人を見つけると、順番に彼らの許に入って行くのである。

ペリー274 、シャンブリ1 、この話の系統は、バブリオス。


248、鳩と烏。

 篭の中の鳩が、子沢山を自慢した。烏がそれを聞いて、こう言った。
「ねえ、鳩さんや、そんな場違いな自慢はおよしなさいよ。こんな牢獄の中では、家族が増えれば増えるだけ、悲しみも増すものですよ。」

ペリー202 、シャンブリ302 、トムスンモチーフインデックスU81.1、この話の系統は、イソップの原典。


249、マーキュリーと樵。

 川のそばで木を切り倒していた樵が、ひょんなことから、斧を川の深い淀みに落としてしまった。樵は生活の糧とする、斧を失ってしまい、土手に座り込んで、この不運を嘆き悲しんだ。すると、マーキュリーが現れて、「なぜ泣いているのか」と尋ねた。樵がマーキュリーに自分の不運を語ると、マーキュリーは、流れの中へ消えて行き、黄金の斧を持ってきて、彼がなくしたのはこの斧かと尋ねた。樵が違うと答えると、マーキュリーは、再び水の中へ消え、そして銀の斧を手に戻ってきた。そして、これが樵の斧かと尋ねた。樵はそれも違うと答えると、マーキュリーは、三度川の淀みに沈んで、樵がなくした斧を持ってきた。樵は、これこそ自分の斧だと言って、神に感謝した。すると、マーキュリーは、樵が正直なことを喜んで、彼自身の斧に加えて、黄金の斧も銀の斧も樵に与えた。
 樵は家に帰ると、その出来事を仲間に話して聞かせた。すると、その中の一人が、自分も同じような良い目を見ようと考えた。男は川へ走って行くと、川の淀みにわざと斧を投げ込んだ。そして、土手に座ってしくしく泣いた。すると、彼が思った通りにマーキュリーが現れて、男が嘆いている理由を知ると、流れの中に消えて行き、黄金の斧を持ってきて、彼がなくしたのはこの斧かと尋ねた。欲に駆られた樵は、黄金の斧をしっかりと抱えると、これこそ間違いなく自分がなくした斧だと言った。
 マーキュリーは、男の不正直に腹を立て、黄金の斧を、取り上げた、だけでなく、彼が投げ込んだ斧も、持ってきてやらなかった。

ペリー173 、シャンブリ253、キャクストン6.13 、チャーリス124 、ラ・フォンテーヌ5.1 、日本昔話つうかん52 、トムスンモチーフインデックスQ3.1、この話の系統は、イソップの原典。


250、鷲と烏。

 鷲が高いそらから岩の上へと、舞いおりた。そして、鉤爪で子羊を捕まえると、そらえと運んでいった。烏はそれを目の当たりにして、妬ましく思い、鷲の飛ぶ力や強さと、張り合ってみたくなった。
 烏は羽を大きくバタつかせながら飛び回ると、大きな羊に止まって、そいつを、運び去ろうとした。しかし、彼の爪は羊の毛に絡まって、いくらバタついても、抜け出すことができなくなってしまった。事の次第を見ていた羊飼いは、烏を捕まえると、すぐに羽を刈り込んだ。羊飼いは、夜、家に帰ると、その烏を子供たちに与えた。
 すると子供たちが言った。
「お父さん、これは何ていう鳥ですか。」
 そこで彼はこう答えた。
「どう見ても烏だが、自分では、鷲と思われたいようだ。」

ペリー2 、シャンブリ5、バブリオス137 、キャクストン6.1 、エソポ2.29 、イソホ3.12 、ラ・フォンテーヌ2.16、クルイロフ2.21 、トムスンモチーフインデックスJ2413.3 、この話の系統は、イソップの原典。


251、狐と鶴。

 狐が鶴を夕食に招待した。これといって何もなかったが、美味そうなスープに鶴は心躍った。しかし、スープは平らな石の皿に注がれ、鶴が、飲もうとするたびに、スープは長い嘴からこぼれてしまう。狐は、スープが飲めないでいらだっている鶴が、おかしくて仕方がなかった。
 今度は鶴の番である。鶴は、一緒にスープを飲もうと、狐を誘い、狐の前に首の細長いつぼをおいた。そして、自分はつぼのなかに嘴を突っ込むと、ゆうゆうとスープを味わった。味見すらできない狐は、自分が鶴にした相応の持てなしを受けたのであった。

ペリー426、パエドルス1.26 、キャクストン2.13 、イソホ3.32 、ジェイコブス19 、チャーリス34 、ラ・フォンテーヌ1.18、日本昔話つうかん576 、トムスンモチーフインデックスJ1565.1、プルタルコス「食卓歓談集」614e。


252、ジュピターとネプチューンとミネルヴァとモーモス。

 遠い伝説によると、最初の人間を造ったのはジュピターで、最初の牛を造ったのはネプチューンで、最初の家を造ったのは女神ミネルヴァだったそうだ。
 神々が仕事を終えたとき、一番完璧な仕事をしたのは誰か。ということで言い争いになった。そこで神々は、酷評家のモーモスに判定を委ねた。
 ところが、モーモスは、彼らの仕事がとても妬ましく、皆のあら探しをはじめた。最初にネプチューンの仕事を非難して言うには、突く所が、よく見えるように、牛のツノは目の下につけるべきだった。次にジュピターの仕事を非難して言うには、悪意ある者を警戒できるように、人間の心は外側につけるべきだった。そして最後に、女神ミネルヴァを罵倒して言うには、隣人が嫌な奴だと分かった時に、容易に移動できるように、家の土台には鉄の車輪をつけるべきだった。
 ジュピターは、モーモスの露骨なあら探しに、腹を立て、裁定者としての権能を剥奪し、オリンポスの神殿から追い出した。

ペリー100 、シャンブリ124 、バブリオス59 、チャーリス125、クルイロフ4.9、この話の系統は、イソップの原典。


253、鷲と狐。

 鷲と狐が友情を誓い合いそれぞれ近くに住むことにした。鷲は高い木の枝に巣を作り、狐は藪の中で子どもを生んだ。しかし、この同盟が結ばれて、いくらもたたないうちに、鷲は、自分の子どもたちにやる餌が必要になると、狐が出掛けている隙に、狐の子どもに襲いかかり、一匹捕まえて雛と一緒に食べてしまった。狐は帰ってきて、事の次第を悟ったが、狐は、子どもを失ったこと以上に、彼らに復讐できないことを悲しんだ。ところが、それからまもなく、鷲に天罰が下った。鷲は神殿の近くを舞っていたのだが、そこでは、村人たちが山羊を生贄に捧げていた。と、鷲は、肉片と一緒に燃えさしをも、ひっつかんで巣へと運んで行った。一陣の風が吹くと、瞬く間に炎が燃え上がった。まだ飛ぶことも何も出来ない鷲の雛たちは、巣の中で燻されて、木の根元へ、どさっと落ちた。狐は、鷲の見ている前で、雛たちをがつがつ食らった。

ペリー1 、シャンブリ3 、パエドルス1.28 、バブリオスP186 、キャクストン1.13 、イソホ2.19 、チャーリス59 、トムスンモチーフインデックスK2295,L315.3 、この話の系統は、イソップの原典。


254、人とサテュロ。

 昔、人とサテュロが、互いの同盟の固めにと、共に祝杯を上げた。会談の日は、とても寒かったので、人は、手に息を吹きかけた。サテュロがなぜそんなことをするのかと尋ねると、人は、指がとても冷たいので暖めているのだと答えた。その後、食事をすることになり、用意されていた食べ物が温められた。人は、皿をすこし持ち上げると、息を吹きかけた。すると、サテュロがまた、なぜそんなことをするのかと尋ねた。人は、食べ物がとても熱いので、冷ましているのだと答えた。
 すると、サテュロがこう言った。
「金輪際、君と友達でいるのは御免だ。 君は、同じ息で、あついのやら、冷たいのやらを吐くのだからね。」

ペリー35 、シャンブリ60 、アウィアヌス・29 、キャクストン7.22 、イソホ3.24 、ジェイコブス56 、チャーリス112 、ラ・フォンテーヌ5.7、この話の系統は、イソップの原典。


255、驢馬と買い手。

 ある男が、驢馬を一匹買いたいと思っていた。そこで、驢馬を買う前に、その驢馬を調べてみるということで、売り手と話が纏まった。男は驢馬を家に連れて行くと、他の驢馬たちと一緒に麦の置かれた囲いの中に入れてみた。するとこの驢馬は、他の驢馬たちには目もくれず、一番怠け者で、一番おおぐらいの驢馬と仲間になった。男はこのようすを見ると、この驢馬を売り手の所へ返しに行った。「こんなに短い時間で、どうやって驢馬を調べたのですか?」と、売り手に問われると、男はこう答えた。
「簡単ですよ。こいつが選んだ仲間を見れば、こいつのことも分かりますからね。」

教訓、その友をみれば、その人がわかる。

ペリー237 、シャンブリ263、トムスンモチーフインデックスJ451.1、この話の系統は、イソップの原典。


256、二つの袋。

 昔からの言い伝えによると、人は皆、この世に生まれるとき、首に二つの袋を、ぶら下げているそうだ。前についている袋は、隣人の誤りがいっぱい詰まっており、後ろの大きな袋には、自分の誤りが詰まっている。それゆえ、人は、他人の誤りにはすぐに気づくが、自分自身の誤りにはなかなか気付かないのだ。

ペリー266 、シャンブリ303 、パエドルス4.10 、バブリオス66 、チャーリス107 、ラ・フォンテーヌ1.7 、この話の系統は、イソップの原典。


257、泉の鹿。

 暑さに参った鹿が、水を飲もうと泉へとやって来た。鹿は、水に映る自分の影を見て、枝わかれした大きなつのが誇らしかった。しかし、ほっそりとした貧弱な脚には、腹が立った。このように鹿が、自分の姿を眺めていると、ライオンが泉にやってきて、鹿に、飛びかかろうと、身を屈めた。鹿はすぐさま逃げ出した。広々とした草原では、全力疾走ができたので、ライオンとの距離を容易に引き離すことができた。しかし、森に入ると、つのが絡まってしまい、ライオンはすぐさま鹿に追いつき、捕まえてしまった。今となっては、後の祭りなのだが、鹿はこう言って自分を責めた。
「私は、なんという勘違いをしていたのだろう。 自分を助けてくれる脚を軽蔑し、自分を破滅に追い込んだつのを尊んでいたとは。」

教訓、価値のあるものが、過小評価されることがよくある。

ペリー74 、シャンブリ102 、パエドルス1.12 、バブリオス43 、キャクストン3.7 、エソポ1.20 、イソホ2.34 、ジェイコブス25 、チャーリス21 、ラ・フォンテーヌ6.9
、トムスンモチーフインデックスL461、この話の系統は、イソップの原典。


258、烏と狐。

 腹をすかせて、餓死しそうな烏が、全くの季節外れだというのに、いくつか実をつけたイチジクの木にとまり、実が熟すだろうと期待して待っていた。
 狐がそれを見てこう言った。
「あなたときたら、自分自身を欺いて、希望の虜になっていますが、そんな希望は、偽りであって、決して実を結ぶことなどありませんよ。」

ペリー126 、シャンブリ160、トムスンモチーフインデックスJ2066.2、この話の系統は、イソップの原典。


259、父親を埋葬するヒバリ。

 古い伝説によると、ヒバリは、大地よりも先に創られた。それで、彼女の父親が死んだ時、埋葬する場所が見つからなかった。彼女は、亡骸を五日間、埋葬せずに横たえておいた。そして、六日目に、他に場所がなかったので、自分の頭に父親を埋葬した。こうして、ヒバリは「カンモウ」を手に入れた。これは、父親の墳墓なのだと言われている。

教訓、子供の第一の務めは、親を敬うことである。

ペリー447、この話の系統は、アリストパネス「鳥」471。


260、蚊と牡牛。

 蚊が牡牛のつのにとまり、そこに長いこと居座っていたのだが、飛び去ろうと、羽音を立てると、「重いだろうから、どいてやるよ。」と言った。
 すると牡牛がこう答えた。
「君が来たのも、分からなかったのだから、君が行ってしまっても、別段なんとも思わないがね。」

教訓、人からはそれほどとは、思われていないのに、自分では大人物だと思っている者がいる。

ペリー137 、シャンブリ189、バブリオス84 、キャクストン4.16 、チャーリス25、パンチャタントラ1.123 、トムスンモチーフインデックスJ953.10、この話の系統は、イソップの原典。


261、母犬とその子。

 出産間近の牝犬が、羊飼いに、子供を産む場所を貸してくれるようにとお願いした。牝犬は、その願いが叶えられると、今度は、そこで子供たちを育てたいと言った。羊飼いはその願いも叶えてやった。
 しかし、こ犬たちが成長して、母犬を守ることができるようになると、母犬は、その場を占領してしまい、羊飼いが近づくのさえ許さなかった。

ペリー480 、パエドルス1.19 、キャクストン1.9 、チャーリス66 、ラ・フォンテーヌ2.7 、トムスンモチーフインデックスW156 、この話の系統は、パエドルス。


262、犬と皮。

 飢えた犬たちが、川に、牛の皮が浸っているのを見つけた。犬たちは、そこへ行くことが出来なかったので、川の水を飲み干すことにした。しかし、犬たちは、皮に到達する前に、水を飲み過ぎて破裂してしまった。

教訓、出来ぬことはするな。

ペリー135、669 、シャンブリ176、パエドルス1.20 、チャーリス72 、ラ・フォンテーヌ8.25 、トムスンモチーフインデックスJ1791.3.2 、この話の系統は、イソップの原典。


263、羊飼いと羊。

 羊飼いが、羊たちを森へと導いていると、とても大きな樫の木を見つけた。樫の木には、ドングリがたわわに実っていたので、羊飼いは枝の下にマントを広げると、木に登り枝を揺すった。
 すると、ドングリを食べていた羊たちは、いつの間にか、マントをボロボロに引き裂いてしまった。羊飼いは木からおりてきて、事の次第を知るとこう言った。
「ああ、お前たちは、なんて恩知らずなんだ。 仕立てやには、自分の毛をくれてやるくせに、食わせてやっている私の服は、台無しにする。」

ペリー208 、シャンブリ316、この話の系統は、イソップの原典。


264、セミとフクロウ。

 フクロウは、夜食べて昼間は寝ているという習性なのだが、セミの騒音に大変悩まされ、どうか鳴くのをやめてくれるようにと懇願した。しかしセミはその願いを拒絶し、それどころか、より一層大声で鳴いた。フクロウは、願いが聞き入れられず、馬鹿にされたことを知ると、謀をもって当たろうと、うるさいセミにこんなことを言った。
「アポロンの竪琴のような、あなたの甘い歌声を聞いていると、私は、寝ることができません。そこで、近頃女神パレスに頂いた、甘露を飲もうと思うのですが、もし、お嫌じゃなかったら、私の所に来て一緒に飲みませんか。」
 喉の渇いていたセミは、フクロウのお世辞に気をよくして、勇んで飛んで行った。するとフクロウは、洞から身を乗り出すと、セミを捕まえて殺した。

ペリー507 、パエドルス3.16 、チャーリス103 、トムスンモチーフインデックスK815.5 、この話の系統は、パエドルス。


265、猿とラクダ。

 森の動物たちが大きな宴会を催した時、猿が立ち上がって踊った。その踊りはとても素晴らしかったので、猿は中央に座ると、皆からヤンヤの喝采を浴びた。ラクダは猿が妬ましく、自分も皆の称賛を、勝ち得たいと思い、「次は自分が踊って皆を楽しませよう」と申し出た。しかし、ラクダはひどく不格好に動き回ったので、皆は激怒して、ラクダを棍棒で叩いた。

教訓、猿真似ほど間抜けなものはない。

ペリー83 、シャンブリ306 、トムスンモチーフインデックスJ512.3 、この話の系統は、イソップの原典。


266、農夫とリンゴの木。

 農夫の庭には一本のリンゴの木があった。しかし、その木は、スズメやセミの憩いの場となるだけで、実を全くつけなかった。農夫は、この木を切り倒してしまおうと、斧を手に持つと、根元に豪快に、振り下ろした。セミとスズメは、この木は自分たちの避難場所なので、切り倒さないで欲しいと懇願した。そして、もしこの木を切らずにいてくれたならば、自分たちは農夫のために歌を歌って、労働の慰めとなると言った。
 しかし、農夫は彼らの願いに耳を貸そうとはせずに、二度、三度と斧を打ち込んだ。すると、斧が木の洞に到達し、蜜のいっぱいつまったハチの巣が見つかった。農夫はハチ蜜を味わうと、斧を放り出した。そしてご神木でも扱うかのように、かいがいしく世話をした。

教訓、世の中には、利益のためにしか行動しない人がいる。

ペリー299 、シャンブリ85、バブリオスP187 、チャーリス93 、トムスンモチーフインデックスJ241.2、この話の系統は、バブリオス。


267、二人の兵士と泥棒。

 二人の兵士が一緒に旅をしていると、追剥に襲われた。一人は逃げ去り、もう一人はそこにとどまって、剛腕を奮って身を守った。追剥が倒されると、臆病者の仲間が急いでやってきて剣を抜き、マントを放り投げるとこう言った。
「さあ、私が相手だ。誰を相手にしているのか思い知らせてやるぞ!」
 すると、追剥と闘った当の本人がこう答えた。
「たとえ、言葉だけでも、今のように、助けてくれていたら、もっと心強かっただろうに、だがもう、その剣は鞘に収め、その役立たずの舌もとっておくことだ。知らぬ者をだませるようにな!」

ペリー524 、パエドルス5.2 、トムスンモチーフインデックスW121.2.5、この話の系統は、パエドルス。


268、ご神木。

 古い伝説によると、神々は、ご自分の庇護する木を特別に選んだそうです。ジュピターは樫の木、女神ヴィーナスはギンバイカ、アポロは月桂樹、キュベレは松の木、そしてヘラクレスはポプラの木。……という具合に。
 すると女神ミネルヴァは、皆がなぜ実のならぬ木を好むのか不思議に思い、選んだ理由をお尋ねになりました。すると、ジュピターはこのようにお答えになりました。
「それはだな、実を得るために、庇護していると思われるのを避けるためだ。」
 すると女神ミネルヴァは、こう仰ったそうです。
「誰が何と言おうと、私には、実のなるオリーブの方が好ましいですわ!」
 すると、ジュピターはこうお答えになったそうです。
「我が娘よ。お前が聡明だと言われるのはまことのことであるな。どんなに立派なことであっても、それが実を結ばぬことならば、その栄光は虚栄と言うほかあるまいな。」

ペリー508 、パエドルス3.17 、トムスンモチーフインデックスJ241.1 、この話の系統は、パエドルス。


269、母親と狼。

 ある朝の事、腹を空かせた狼が、餌を求めてうろつき回っていた。狼が、森の小さな家の前を通りかかると、母親が子供にこんなことを言っているのが聞こえてきた。
「静かにしなさい。さもないと窓から放り投げて、狼に食わせてしまうよ。」
 それを聞いた狼は、一日中家の前に座って待っていた。ところが夕方になると、母親が子供をなでながら、こんな事を言っているのが聞こえてきた。
「おとなしくて良い子だね。狼がやって来たら、奴を殺してやるからね。」
 狼はこれらの言葉を聞くと、飢えと寒さに、うちひしがれて家に帰って行った。巣穴に戻ると狼の妻が、どうして、何も獲らずに帰って来たのかと訊ねた。 
 すると彼はこんなふうに答えた。
「女の言葉を信用して、無駄な時間を費やすとは、とんだ間抜けだったよ。」

ペリー158 、シャンブリ223、バブリオス16、アウィアヌス・1 、キャクストン7.1 、エソポ2.40 、ジェイコブス46 、チャーリス94 、ラ・フォンテーヌ4.16 、トムスンモチーフインデックスJ2066.5 、この話の系統は、バブリオス。


270、驢馬と馬。

 驢馬が馬に、ほんの少しでよいから食べ物を分けてくれるようにとお願いした。
 すると馬がこう答えた。
「分かりましたよ、今、食べているものが残ったら、全てあなたにあげましょう、私の高貴な性質がそうせずにはいられないのです。夕方、私が厩舎へ戻ったら、いらっしゃいな、そうしたら大麦のいっぱい詰まった袋をあげますよ」
 すると、驢馬がこう言った。
「ありがとうございます。でも、今、少しも分けてくれないのに、あとでたくさん分けてもらえるとは思えないのですよ。」

ペリー571、トムスンモチーフインデックスW152.8、この話の系統は、パエドルス。

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底本にしたのは、
Project Gutenberg aesop11.txt
Aesop's Fables Translated by George Fyler Townsend
訳に際して、意味の分かりにくい部分には筆を加えました。

主な参考文献:
イソップ寓話集 中務哲郎訳 岩波文庫
イソップ寓話集 山本光雄訳 岩波文庫
新訳イソップ寓話集 塚崎幹夫訳 中公文庫 
イソップ寓話集 伊藤正義訳 岩波ブックセンター 
叢書アレクサンドリア図書館10 イソップ風寓話集 パエドルス/バブリオス 岩谷智・西村賀子訳 国文社 
吉利支丹文学全集2(イソポのハブラス) 新村出 柊源一 平凡社 
古活字版 伊曽保物語 飯野純英校訂 小堀桂一郎解説 勉誠社 
寓話 ラ・フォンテーヌ 今野一雄訳 岩波文庫
寓話 ラ・フォンテーヌ 市原豊太訳 白水社
クルイロフ寓話集 内海周平訳 岩波文庫
アジアの民話12 パンチャタントラ 田中於莵弥・上村勝彦訳 大日本絵画
カリーラとディムナ 菊池淑子訳 平凡社
日本昔話通観 28 昔話タイプインデックス 稲田浩二 同朋舎
狐ラインケ 藤代幸一訳 法政大学出版局
知恵の教え ペトルス・アルフォンシ 西村正身訳 渓水社


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