031-060話

31-60話
収録タイトル
31、かいば桶の中の犬。
32、狐と山羊。
33、熊と二人の旅人。
34、牡牛と車軸。
35、喉の渇いた鳩。
36、烏と白鳥。
37、山羊と山羊飼い。
38、守銭奴。
39、病気のライオン。
40、馬とベットウ。
41、驢馬と愛玩ケン。
42、牝のライオン。
43、旅先での出来事を、ジマンバナシする、ゴシュキョウギの選手。
44、猫と雄鶏。
45、こ豚と山羊と羊。
46、少年とハシバミの実。
47。恋をしたライオン。
48、人と蛇。
49、羊の皮をかぶった狼。
50、驢馬と騾馬。
51、王様を求める蛙たち。
52、少年たちと蛙たち。
53、病気の鹿。
54、塩商人と驢馬。
55、牡牛たちと肉屋。
56、ライオンと、鼠と狐。
57、虚飾で彩られた烏。
58、山羊飼いと、野生の山羊。
59、人を噛む犬。
60、尻尾をなくした狐。
タウンゼント版イソップ寓話集
hanama(ハナマタカシ) 訳



略記号:
Pe=ペリー版 Cha=シャンブリ版 H=ハルム版 Ph=パエドルス版 Ba=バブリオス版
Cax=キャクストン版 イソポ=天草版「イソポのハブラス」 伊曽保=仮名草子「伊曽保物語」
Hou(Joseph Jacobs?)=ヒューストン編  Charles=チャールス版 Laf=ラ・フォンテーヌ寓話
Kur=クルイロフ寓話 Panca=パンチャタントラ
J.index=日本昔話通観28昔話タイプ・インデックス TMI=トムスン・モチーフインデックス
<>=cf ( )=系統 Aesop=ペリー 1~273に属する寓話




31、かいば桶の中の犬。

 ある犬が、かいば桶の中に入り、吠えたり唸ったりして、牛たちが、干し草を食べるのを邪魔していた。すると、一匹の牛が仲間に言った。
「奴は、干し草など食わぬくせに、それを食べる我々に、譲ろうとはしない。」

ペリー702 、キャクストン5.11 、ジェイコブス40 、チャーリス39 、トムスンモチーフインデックスW156、この話の系統は、シュタインハウエル。


32、狐と山羊。
 ある日のこと、一匹の狐が、深い井戸に落ちて、出られなくなってしまった。そこへ、山羊が通りかかった。山羊は喉が渇いていたので、狐を見ると、その水は美味しいかと尋ねた。
狐は、自分の窮状を隠し、この水は、とても美味しいと褒めちぎり、おりてくるようにと促した。
 山羊は、渇きを癒すコトバカリニ、キヲトラレ、深く考えもせずに深い井戸へと飛び降りた。山羊が水をノミハジメルト、狐は、自分たちの窮状を、山羊に打ち明け、そして、二人して抜け出す方策を、語って聞かせた。
「イイカイ、君が、前足を壁に掛けて、ツノでしっかりと支えてくれたら、僕は、君の背中を駆け上って、ここから抜け出すから、そしたら、君を助けてあげるよ。」
 こうして、狐は、山羊の背中を跳躍し、井戸から抜け出した。しかし狐は、そのまま井戸を後にした。
 山羊が、それでは約束が違うと叫んだ。すると狐は振り向いてこう言った。
「山羊さん、あんたは、老いぼれて、耄碌したようだね。もしあんたの頭に、その、あごひげ程の脳味噌が、詰まっていたなら、抜け出せるか、どうかも確かめずに、おりては行かなかっただろうがね。」

教訓。飛ぶ前に見よ! 転ばぬ先の杖。

ペリー9 、シャンブリ40 、パエドルス4.9 、キャクストン6.3 、エソポ2.30 、イソホ3.14 、ジェイコブス82 、チャーリス33 、ラ・フォンテーヌ3.5、ニホンムカシバナシツウカン・タイプインデックス581、582 、トムスンモチーフインデックスK652、この話の系統は、イソップの原典。


33、熊と二人の旅人。

 二人の男が、一緒に旅をしていた。すると、二人は、ばったりと、熊に出くわした。一人は、すぐさま木に登り、ハカゲに身を隠した。もう一人は、熊にやられてしまうと思い、地面に横たわった。すると、熊がやってきて、鼻先で、探りを入れながら、全身をくまなく嗅ぎ回った。
 彼は、息を止め、死んだ振りをした。熊は、死体には触れないと言われているのだが、その通り、熊はすぐに彼から離れて行った。熊が見えなくなると、木に登っていた男も、おりてきて、「熊は、君に、なんて囁いたのかね。」と、間抜けなことを言い出した。すると相方は、こんなふうに答えた。
「熊はね、僕にこんな忠告をしてくれたよ。危険が迫った時に、知らんぷりするような奴とは、一緒に旅をするな。」

教訓。災難は、友の誠実さを試す。

ペリー65、シャンブリ254、アウィアヌス・9 、キャクストン7.8 、エソポ2.2 、ジェイコブス50 、チャーリス67 、ラ・フォンテーヌ5.20 、トムスンモチーフインデックスJ1488、この話の系統は、イソップの原典。


34、牡牛と車軸。

 重い荷物を積んだ、スウトウダテのギッシャが、田舎ミチを走っていた。すると、車軸が、もの凄い音を立てて、ギジギシとキシンダ。牛たちは振り向くと、車輪に言った。
「なぜ、あんたらわ、そんなに大きな音を立てるんだね、引っ張っているのわ我々だ、泣きたいのわ、こっちのホウダヨ。」

教訓。怠け者は無駄口ばかり叩くが、働き者には、そんな暇わない。

ペリー45 、シャンブリ70 、バブリオス52 、チャーリス117、この話の系統は、イソップの原典。


35、喉の渇いた鳩。

 喉の渇いた鳩が、水差しを見つけた。実はそれは、看板の絵であったのだが、鳩はそれに気付かずに、ばたばたと飛んで行くと、もの凄い音を立てて、激突した。その衝撃で、両方の羽が、ともに砕け、鳩は地面へとおっこちて、見ていた人に捕まった。

教訓。熱中し過ぎて、分別を無くしてはならない。

ペリー201 、シャンブリ301、チャーリス77 、トムスンモチーフインデックスJ1792.1、この話の系統は、イソップの原典。


36、烏と白鳥。

 烏は、白鳥の姿を見て、自分もあんなふうに、美しくなってみたいと思った。烏は、白鳥の羽が白いのは、いつも泳いでいるからダトオモイ、自分も湖に住もうと、エサバとしている近くの祭壇を後にした。しかし、いくら洗っても、羽は白くならなかった。それどころか、餌が不足して、彼はとうとう死んでしまった。

教訓。習慣を変えても、本質は変わらない。

ペリー398 、チャーリス45 、トムスンモチーフインデックスW181.3、この話の系統は、アプトニオス。


37、山羊と山羊飼い。

山羊飼いは、群からはぐれた、山羊を連れ戻そうと、やっきになっていた。彼は、口笛を吹いたり、角笛を吹き鳴らしたりと、おおわらわだったが、当の山羊は、全く意に介さぬようだった。
とうとう、山羊飼いは、山羊に向かって、石をナゲツケタ。すると、石が、山羊のツノに当たって、ツノが折れてしまった。
 山羊飼いは、どうか、このことは主人には内緒にしてくれと、山羊に頼んだ。すると、山羊はこう答えた。
「あなたは、どうかしていますよ、私が黙っていようとも、このツノが、黙ってイマセンヨ」

教訓。ヒトメで分かるようなものを、隠そうとしても無駄である。

ペリー280 、シャンブリ15、パエドルス6.24 、バブリオス3 、トムスンモチーフインデックスJ1082.1 、この話の系統は、バブリオス。


38、守銭奴。

 金にうるさい男が、全財産を売り飛ばし、それを金塊に変えた。彼は、金塊をフルベイの脇の畑に埋めると、毎日ミニイッタ。
 しかし、彼がしょっちゅうそこへ行くのを、使用人の一人が不審に思い、何をしているのか、探りを入れた。使用人は、すぐに、宝が隠してあるのを、嗅ぎ当てると、そこを掘り返し、金塊を盗んでしまった。
 守銭奴は、金塊が盗まれたことに気付くと、髪の毛を掻きむしり、大声で泣きわめいた。隣に住む人が、泣きわめく彼を見て、事の次第を見て取ると、こんなふうに言った。
「お前さん、そんなに悲しむことはありませんよ。何処かで石でも拾ってらっしゃい。そして、それを金塊だと思って、お埋めなさい。どのみち、お前さんにとっては、オナジコトですからね」

教訓。使わなければ、持ってないのも同じ。

ペリー225 、シャンブリ344、エソポ2.11 、ジェイコブス63 、チャーリス78 、ラ・フォンテーヌ4.20 、トムスンモチーフインデックスJ1061.4 、この話の系統は、イソップの原典。


39、病気のライオン。
 寄る年波には勝てずに衰えて、力では、エモノヲトレナクナッタ、ライオンが、策略によって、獲物を獲ることにした。彼は洞穴に横たわって、病気の振りをした。そして、自分が病気であることが、世間に、知れ渡るようにと画策した。
 獣たちは、悲しみを伝えようと、一匹づつ、洞穴へとやって来た。すると、ライオンは、やって来た獣たちを、片っ端からむさぼり食った。こうして、多くの獣たちが姿を消した。
 狐は、このカラクリに気付き、ライオンのところへやって来ると、洞穴の外に立ち、うやうやしく、ライオンの加減を尋ねた。
「どうもよくないのだ。」
 ライオンはこう答えると、更にこう言った。
「ところで、なぜ、お前は、そんな所に立っているのだ。 話が聞こえるように、中に入ってこい」
 すると狐がこう答えた。
「だって、洞窟の中へ、入って行く足跡は、たくさんあるのに、出てくる足跡が、ヒトツモミアタラナイノデスモノ」

教訓。他人の災難は、人を賢くする。

ペリー142 、シャンブリ196 、バブリオス103 、キャクストン4.12 、エソポ2.45 、ジェイコブス73 、ラ・フォンテーヌ6.14、パンチャタントラ3.4, 5.10 、トムスンモチーフインデックスJ644.1、この話の系統は、イソップの原典。


40、馬とベットウ。

 ベットウは、日がな一日、馬を櫛ですいてやったり、こすってやったりしていた。しかし、同時に、餌の大麦を盗んでは、売り飛ばし、自分の懐を肥やしていた。
 馬は、このことに気付いて、こう言った。
「もし、私に元気でいてもらいたいなら、手入れは程々でよいですから、もっと食糧を下さい」

ペリー319 、シャンブリ140、バブリオス83 、トムスンモチーフインデックスJ1914、この話の系統は、バブリオス。


41、驢馬と愛玩ケン。

 ある男が、マルタ種のこ犬と、驢馬を飼っていた。
 こ犬は、芸が、たくさん出来たので、主人に大変可愛がられた。いっぽう、驢馬は、ほかの仲間と同じように、大麦や干し草を、じゅうぶんに与えられてはいたが、臼をひいたり、森から木を運んだり、農場から荷物を運んだりと、大変こき使われていた。驢馬は、こ犬の、優雅で安逸な、暮らしぶりをウラヤミ、自分の境遇を嘆いてばかりいた。
 ある日のこと、ついに、驢馬は、手綱や、はづなを引き裂いて、ギャロップしながら、主人の家へと向かった。そして、加減も知らずに、蹄で戸を、蹴破ると、家の中に入り込み、めいいっぱい、はしゃいだ。そして、犬の真似をして、主人の周りを跳ね回った。すると、その勢いで、テーブルは壊れ、皿は、こっぱ微塵に砕け散った。そして、お次は主人をなめ回し、背中にじゃれて跳び乗った。
 使用人たちは、この騒動を聞きつけて、主人の一大事と、飛んで来ると、驢馬を蹴飛ばし、棒で叩き、平手打ちを喰らわせて、厩舎へ、たたき込んだ。
 自分のバボウに戻され、死ぬほど、打ち据えられた驢馬は、こんなふうに嘆いた。
「ああ、なんてことだ、これも皆、自業自得だ。おいらは、なぜ、仲間と一緒に、仕事に精を出さなかったんだろう。 あの役立たずの、こ犬のように、一日中、安逸をむさぼろうなど、土台無理な話だったのだ。」

ペリー91 、シャンブリ275 、バブリオス129 、キャクストン1.17 、エソポ1.9 、イソホ2.22 、ジェイコブス10 、チャーリス53 、ラ・フォンテーヌ4.5 、狐ラインケ3.9 、トムスンモチーフインデックスJ2413.1 、この話の系統は、バブリオス。


42、牝のライオン。

 子供を、一番多く、産むことのできるのは誰か。と、いうような論争が、野に棲む獣たちの間に、持ち上がった。
 獣たちは、論争に、決着をつけてもらおうと、牝のライオンのところへ、がやがやと押し掛けて行った。
「ライオンさんは、一度に、何人の子供を、お産みになりますか。」
 獣たちが、牝のライオンに尋ねた。すると彼女は、笑いながらこう答えた。
「なぜ、そんなことを気にするのです。 私は、たった一匹しか産みませんよ。でも、その子は、間違いなく、ライオンの子です」

教訓。量より質。

ペリー257 、シャンブリ194、トムスンモチーフインデックスJ281.1、この話の系統は、イソップの原典。


43、旅先での出来事を、ジマンバナシする、ゴシュキョウギの選手。

 よその国々を旅してきた、ゴシュキョウギの選手が、故郷に帰って来て、かの国々でおこなった、数々の英雄的な、偉業について、いたく自慢した。とりわけ、ロードス島では、大変なジャンプを行い、その距離は、かつて、些かでも、その近くまで跳躍した者がいないという程の大ジャンプで、ロードス島には、その偉業を見届け、証人となってくれる者も大勢いる。と、彼は語った。すると、そばで聞いていた一人の男が、彼の話を遮って、こんなことを言った。
「よし分かった、英雄サンヨ、もし、その話が本当なら、証人などいらない。さあ、ここがロードスだ。ここで跳べ。」

ペリー33 、シャンブリ51、トムスンモチーフインデックスJ1477 、この話の系統は、イソップの原典。


44、猫と雄鶏。

 猫が、雄鶏を捕まえた。そして、このニワトリを食べるのに、なにかもっともらしい理由はないかと考えた。そこで、猫は、雄鶏に、お前は、夜、うるさく鳴いて、人の眠りを妨げる。と、イチャモンヲツケタ。
 すると、雄鶏は、自分が鳴くのは、人が仕事に遅れぬように、起こすためで、人の役に立っているのだ。と、弁解した。
 すると、猫はこう言った。
「もっともらしい言い訳は、いくらでも出てくるだろうが、だが、俺様は、夕食抜きで、いるつもりはないのだ。」

猫はそう言うと、夕食に取りかかった。

ペリー16 、シャンブリ12、キャクストン6.4 、チャーリス20 、トムスンモチーフインデックスU31.1、 U33 、この話の系統は、イソップの原典。


45、こ豚と山羊と羊。

 こ豚が、山羊と羊と共に、柵の中に閉じこめられた。ある時、羊飼いが、こ豚を捕まえようと、おさえつけた。すると、こ豚は、ブヒブヒ喚き散らし、激しく抵抗した。羊と山羊は、その喚きゴエにうんざりして、文句を言った。
「我々もしょっちゅう、彼に捕まえられるけど、そんなに泣き喚いたりしないよ。」
 すると、こ豚が言った。
「あんたらと、僕とでは、事情が違うよ。彼があんたらを捕まえるのは、毛やお乳をとるためだけど、僕をおさえつけるのは、肉をとるためなんだから。」

ペリー85 、シャンブリ94 、ラ・フォンテーヌ8.12 、トムスンモチーフインデックスJ1733、イソップの伝記48、この話の系統は、イソップの原典。


46、少年とハシバミの実。

 少年は、ハシバミの実が、たくさん入った壷に、手を突っ込み、つかめるだけつかんだ。しかし、壷から手を抜こうとして、途中で手が引っかかり、抜けなくなってしまった。それでも、少年は、ハシバミの実を、諦めようとはせずに、渋っていたので、依然手は抜けぬまま、少年は、涙を流して、身の不幸を嘆いた。
 すると、そばにいた人が、こう言った。
「半分で我慢しなさい。そうすれば、すぐに抜けるよ。」

教訓。一度に、欲張るな。

チャーリス92、日本昔話つうかん866、この話は、元々は、イソップ寓話ではない。


47。恋をしたライオン。

 ライオンが、樵の娘に恋をして、結婚を申し込んだ。父親は、ライオンになど、娘をやりたくなかったのだが、怖くて、断れなかった。
 と、彼は、ふと、名案が浮かんだ。彼はライオンに、娘が恐がるといけないので、牙を抜き、爪を切るようにと言ったのだ。ライオンは、二つ返事で承知した。
 ライオンが、牙を抜き、爪を切って戻って来た時、樵は、もうライオンを、恐れなかった。彼は、コンボウをふるって、ライオンを森へと追いやった。

ペリー140 、シャンブリ198 、バブリオス98 、ジェイコブス71 、ラ・フォンテーヌ4.1 、トムスンモチーフインデックスJ642.1 、この話の系統は、イソップの原典。


48、人と蛇。

 ある家の庭先に、蛇の穴があった。その蛇は、その家の子供を噛んで、殺してしまった。父親は、子供の死を悲しみ、蛇への復讐を誓った。
 翌日、蛇が餌を獲りに、穴から這い出して来ると、彼は斧を握りしめ、蛇めがけて、振り下ろした。しかし、慌てていたため、ねらいが外れ、しっぽを切っただけで、頭を真っ二つにすることは、出来なかった。
 そのご、しばらくして、男は、自分もまた、蛇に噛まれてしまうのではないかと恐れ、蛇の穴に、パンと塩を置いて、仲直りをしようとした。蛇は、シュルシュルと舌を鳴らして、こんなことを言った。
「我々は、仲直りなどできない。私は、あなたを見れば、尻尾を無くしたことを、思い出すだろうし、あなただって、私を見れば、子供の死を、思い出すだろうからね。」

教訓。傷を負わされた者は、決して、その痛みを忘れない。特に、そのかたきが、目の前にいる時には。

ペリー51 、シャンブリ81、ジェイコブス6 、トムスンモチーフインデックスJ15 、この話の系統は、イソップの原典。


49、羊の皮をかぶった狼。
 昔、ある狼は、餌を楽して獲ろうと、羊の皮をかぶって、変装した。そして、羊飼いの目をすり抜けて、牧場の中へと潜り込んだ。
 夕方、羊飼いは、狼に、気付くことなく、牧場の扉をしっかりと閉ざして、帰って行った。
 狼は、ほくそ笑んだ。ところが、その夜の内に、羊飼いが、翌日の食糧を確保しようと戻ってきた。そして、狼は、羊と間違えられて殺された。

教訓。悪の栄えたためしなし。

ペリー451、ジェイコブス39 、チャーリス91 、トムスンモチーフインデックスK828.1。この話は、ニケポロス・バシラキスの、弁論術の準備よりとられた話。


50、驢馬と騾馬。

 ある馬方が、驢馬と騾馬に、たくさんの荷を積んで、運んでいた。
 驢馬は、平らな道では、苦もなく運んだが、山にさしかかり、急な坂道を登り始めると、重荷に耐えられなくなった。そこで、驢馬は、相方の騾馬に、少しでよいから、荷物を肩代わりしてくれるようにと頼んだ。しかし騾馬は、取り合おうともしなかった。
 そのごすぐに、驢馬は、地面に崩れ落ち、荷物の下で息絶えた。山奥のことなので、馬方は、ほかにしようがなく、騾馬の荷物に、今まで驢馬が運んでいた荷物を載せ、さらに、驢馬の皮を剥ぐと、それを、一番うえに積んだ。
 騾馬は、重い荷物に喘いで、一人ごちた。
「これも、自業自得というものだ。もし、あの時、驢馬のちょっとした願いを、聞いてやっていたなら、こんなことにはならなかったのに。それにしても、まさか、奴のことまで、背負う羽目になるとはな。」

ペリー181 、シャンブリ141、バブリオス7 、エソポ2.13 、ラ・フォンテーヌ6.16 、トムスンモチーフインデックスW155.1、この話の系統は、イソップの原典。

51、王様を求める蛙たち。
 蛙たちは、自分たちに、支配者がいないのを悲しんで、ジュピターに使者を送り、王様を賜りたいとお願いした。ジュピターは、蛙たちが馬鹿なのを知っていたので、太い丸太を池に落としてやった。蛙たちは、その水しぶきにびっくりして、池の深みに隠れた。しかし、彼らは、丸太が動かないことに気付くと、水面に出てきて、今まで怯えていたのも忘れて、丸太の王様に上がり、馬鹿にして座り込んだ。
 しばらくすると、蛙たちは、こんな、動かない王様を戴いているのは、こけんに関わると思い、ジュピターに、二番目の使者を送って、別な王様を戴きたいとお願いした。そこでジュピターは、支配者として、ウナギを使わした。しかし、蛙たちは、ウナギの御しやすい性質を見て取ると、三度目の使節を送って、またしても、別な王様を与えてくれるようにとお願いした。ジュピターは、蛙の度重なる申し立てに、腹を立て、今度は、鷺を送り込んだ。
 鷺は、来る日も来る日も蛙を捕らえて食べたので、池には、クレロ・クレロと鳴いて不平を言う者は、一匹もいなくなった。

ペリー44 、シャンブリ66、パエドルス1.2 、キャクストン2.1 、エソポ1.12 、イソホ2.25 、ジェイコブス13 、チャーリス15 、ラ・フォンテーヌ3.4、クルイロフ2.1、狐ラインケ1.24 、トムスンモチーフインデックスJ643.1、この話の系統は、イソップの原典。

52、少年たちと蛙たち。
 男の子たちは、池の近くで遊んでいたのだが、池に、蛙の群を見つけると、石を投げつけて、なんびきか殺した。
 すると、一匹の蛙が水の中から顔を出して叫んだ。
「子供たちよ、やめるのだ。君たちが、戯れでやっていることは、我々の命に関わることなのだ。」

チャーリス42、この話の系統は、不明。


53、病気の鹿。

 病気の鹿が、静かな草原の片隅で、横になっていた。そこへ、病気の見舞いと称して、仲間が大挙して押し掛け、蓄えておいた、食糧を、食い荒らした。
 それからまもなくして、シカは死んだ。死因は、餓死だった。

教訓。悪い仲間は、利益よりも被害をもたらす。

ペリー305 、バブリオス46 、チャーリス105 、ラ・フォンテーヌ12.6 、トムスンモチーフインデックスW151.2.1、この話の系統は、バブリオス。


54、塩商人と驢馬。

 ある行商人が、塩の買い付けをするために、驢馬を連れて、海岸へと向かった。
 商いも無事終わり、商人は宿へ帰ろうと、とある小川にさしかかった。と、その時、驢馬が、何かに躓いて、川へおっこちた。驢馬が起きあがった時、塩は水に溶け、荷物は、軽くなっていた。
商人は引き返し、まえよりも、たくさんの塩を、袋に詰め込んだ。
 それから、また、先ほどの小川までやって来た。すると、今度は、驢馬はわざと倒れた。そして、荷物が軽くなるのを見計らって起きあがり、してやったりと嘶いた。
 商人は、驢馬の計略を見て取ると、またもや、海岸へと引き返し、今度は、塩の代わりに、海綿を買い付けた。
 驢馬は、流れにさしかかると、今度もわざと倒れた。しかし、海綿は、水を吸って膨らみ、今度は、倍の重さの荷を、背負う羽目になった。

ペリー180 、シャンブリ265、バブリオス111 、ラ・フォンテーヌ2.10 、トムスンモチーフインデックスJ1612 、この話の系統は、バブリオス。


55、牡牛たちと肉屋。

 むかしのこと、牡牛たちは、肉屋が、この世からいなくなればよいと考えた。と言うのも、肉屋は、牛たちを殺戮することを、なりわいとしているからだ。
 牡牛たちは、日時を示し合わせて、終結スルト、戦を前に、ツノの手入れに余念がなかった。しかし、彼らの中に、大変年老いた牛がいた。彼は、長年、畑を耕してきたのだが、そんな彼がこんなことを言った。
「肉屋が、我々を殺すのは紛れもない事実だ。しかし、彼らは手慣れている。もし、彼らを抹殺してしまったら、我々は、未熟な者の手に落ち、倍の苦しみを味わいながら死ぬことになるだろう。肉屋がいなくなっても、人間は牛肉を食べるのを、やめぬだろうからな。」

教訓。悪をトリノゾコウトシテ、別な悪を招来しては、何にもならない。物事は、深く考えてから、行え。

ペリー290 、バブリオス21 、トムスンモチーフインデックス215.2、この話の系統は、バブリオス。

56、ライオンと、鼠と狐。

 夏のある日、ライオンは、暑さにやられて、穴蔵で、眠りほうけていた。すると、一匹の鼠が、たてがみや、耳を駆けのぼり、彼の眠りを妨げた。ライオンは、起きあがると、いかりで身を震わせ、そして、鼠を見つけようと、穴の隅々を探しまわった。
 それを見ていた狐が、こう言った。
「あなたのような、立派なかたが、鼠一匹を、恐れるとは。」
 するとライオンがこう答えた。
「私は、鼠を恐れたのではない。奴の、不作法な振る舞に、腹が立ったのだ。」

教訓。ちょっとした不作法が、相手には、大変な不快と感じられることがある。

ペリー146 、シャンブリ213 、バブリオス82 、トムスンモチーフインデックスJ411.8、この話の系統は、イソップの原典。

注意:原典などでは、ライオンは鼠の振る舞いに腹を立てたのではなく、ライオンの上を駆け抜ける度胸のある者に、驚いた。という話になっている。


57、虚飾で彩られた烏。
 ある、言い伝えによると、ジュピターは、鳥たちの王様を、決めようとしたことが、あったそうだ。ジュピターは、鳥たちの集まる日時を決め、その中で一番美しい者を、王様にするというお触れを出した。
 烏は、自分が醜いことを知っていたので、美しく装うために、野や森を見てまわり、他の鳥たちが落とした、羽を拾い集め、からだじゅうに、貼りつけた。
 約束の日、鳥たちは、ジュピターの前に集まった。そして、色とりどりの羽で、着飾った烏も姿を見せた。ジュピターは、烏の羽が美しいので、彼を、王様にしようとした。 
 すると、鳥たちは、憤然と異議を申し立て、それぞれ自分の羽を烏から引き抜いた。

 結局、烏に残されたのは、自分自身の羽だけだった。

ペリー101 、シャンブリ162、バブリオス72 、チャーリス51 、トムスンモチーフインデックスJ951.2、この話の系統は、イソップの原典。


58、山羊飼いと、野生の山羊。

 夕暮れどき、山羊飼いが、山羊の群を放牧地から移動させていると、群の中に、野生の山羊が混ざっていることに気が付いた。そこで、彼は、野生の山羊たちを、自分の群と一緒に、囲いの中に、入れておくことにした。
 翌日、雪が激しく降り、山羊飼いは、山羊たちを、いつもの牧草地へ、連れて行く事ができずに、やむなく、群を囲いの中に留めておいた。そして、彼は、自分の山羊には、飢え死にしない程度にしか、餌を与えなかったが、新参者たちには、たくさん餌を与えた。と、いうのも、こうすれば、彼らを、うまく手なずけられるのではないかと、考えたからだった。
 翌日、雪が溶けはじめると、山羊飼いは、山羊たちを牧草地へと連れて行った。ところが、野生の山羊たちは、一目散に山の奥へと逃げて行った。彼は、逃げて行く山羊たちに向かって、吹雪の時に、自分の山羊に倍して、あんなに世話をしてやったのに、逃げて行くとは、なんと恩知らずなんだ。と叫んだ。すると、一匹がくるりと振り向いて、こんな事を言った。
「我々が、こんなに用心するのは、そこなんですよ。あなたは、長年慣れ親しんだ山羊たちよりも、我々を大切にした。と、いうことは、もし、我々の後に、また、別の者がやってきたら、あなたは、同じように、新しい方を、大切にするでしょうからね。」

教訓。新しい友人のために、古くからの友人を、裏切る者は、その報いを必ず受ける。

ペリー6 、シャンブリ17、バブリオス45、クルイロフ7.13 、トムスンモチーフインデックスJ345.1 、この話の系統は、イソップの原典。


59、人を噛む犬。

 その犬は、人を見ると、気付かれぬように、そおっと駆け寄り、背後から踵を、ガブリと噛んだ。
 こんなことをしょっちゅうしたもので、飼い主は、犬の首に鈴をつけた。犬は、この鈴を、栄誉の印だと思い、誇らし気に、市場を、リンリン鳴らして練り歩いた。
 すると、年老いた犬が、彼に言った。
「お前は、なぜ、そんな恥さらしな真似をしているんだね。いいかね、お前のつけているその鈴は、何の価値もないんだよ。それどころか、噛む癖のある奴が来るのを、知らせるための不名誉のしるしさ。」

教訓。悪名は、しばしば名声と勘違いされる。

ペリー332 、シャンブリ186 、バブリオス104、アウィアヌス・7 、キャクストン7.6 、チャーリス69 、トムスンモチーフインデックスJ953.1 、この話の系統は、バブリオス。


60、尻尾をなくした狐。

 ある狐が、罠に掛かり、なんとか、逃げおおすことは出来たのだが、その時に尻尾を失った。
 それ以来、狐は、嘲笑と、恥辱にまみれて、苦しんだ。
 そこで、彼は、尻尾のないことを、なんとか繕うために、一計を巡らせた。狐は、仲間を集めると、役に立たない尻尾など、ない方が見栄えが善いし、それに、身軽になれると言って、皆も、尻尾を切るようにと勧めた。
 すると、一匹の狐がこう言った。
「君も、尻尾を失うようなことがなかったら、我々を、説得しようなどとは、考えなかっただろうにね。」

ペリー17 、シャンブリ41、ジェイコブス65 、チャーリス90 、ラ・フォンテーヌ5.5 、トムスンモチーフインデックスJ758.1 、この話の系統は、イソップの原典。


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底本にしたのは、
Project Gutenberg aesop11.txt
Aesop's Fables Translated by George Fyler Townsend
訳に際して、意味の分かりにくい部分には筆を加えました。

主な参考文献:
イソップ寓話集 中務哲郎訳 岩波文庫
イソップ寓話集 山本光雄訳 岩波文庫
新訳イソップ寓話集 塚崎幹夫訳 中公文庫 
イソップ寓話集 伊藤正義訳 岩波ブックセンター 
叢書アレクサンドリア図書館10 イソップ風寓話集 パエドルス/バブリオス 岩谷智・西村賀子訳 国文社 
吉利支丹文学全集2(イソポのハブラス) 新村出 柊源一 平凡社 
古活字版 伊曽保物語 飯野純英校訂 小堀桂一郎解説 勉誠社 
寓話 ラ・フォンテーヌ 今野一雄訳 岩波文庫
寓話 ラ・フォンテーヌ 市原豊太訳 白水社
クルイロフ寓話集 内海周平訳 岩波文庫
アジアの民話12 パンチャタントラ 田中於莵弥・上村勝彦訳 大日本絵画
カリーラとディムナ 菊池淑子訳 平凡社
日本昔話通観 28 昔話タイプインデックス 稲田浩二 同朋舎
狐ラインケ 藤代幸一訳 法政大学出版局
知恵の教え ペトルス・アルフォンシ 西村正身訳 渓水社


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